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3.ちょっと待って、この展開ってどうよ

第3話目まで更新します


『悪役令嬢でも自力で幸せになります』は、私が受験勉強の合間に気分転換に読んできた今流行りの異世界ライトノベル小説だ。こういう小説は他にも似たようなものがいろいろあって、大体内容やあらすじが同じようなものだ。それでもイケメン好きな私は、今度はどんなイケメンが出てきてどんな展開でごちゃごちゃ絡まっていくのかが楽しみでハマって読んでしまう。


 この本も表紙のイラスト背景の完成度や各々のキャラクターの美しさに惹かれて、自分の状況が小説を読んでいる場合ではないのに参考書を購入しに行った書店で購入してしまったやつだ。少し前の話だと物語の主人公に転生してしまう内容がブームで、その後は脇役に転生したり、そして今は悪役令嬢シリーズが主になっていた。


 この『悪役令嬢でも自力で幸せになります』はその今流行りのお話しで、乙女アプリゲームの王太子の婚約者である悪役令嬢 セレナ・ブラント(ブラント公爵令嬢)に主人公が転生してしまうという内容だ。半年前に親に隠れて買ったこれをこっそり読んでいたら、それがバレてあともう少しで読み終わるっていう最終章の数ページを残したところで取り上げられてしまった。そんなことしている暇があれば勉強しなさいって怒られて。まあ、内容はほとんど読み終わっていたからだいたいは覚えている。


たしか・・・


 主人公セレナは幼いある日、流行り風邪に罹り高熱に数日うなされる。その当時は致死率50%の流行り風邪だったが、大司教 シュー・ボルツマン 大魔導士 ユーリ・エッケナーという2大重鎮のお陰で命を取り止める。元々公爵令嬢としてちやほやされて我儘に育てられたセレナは、死にかけて目覚めた後別人格になっていて大人しくなる。それは、自分が昔の記憶を持つ転生者だと気付き、日本人 一色玲奈という女子高生だったことを思い出したから。そして、今いる世界が乙女ゲームの『時空を超えた月影の聖女』で、それも自分が悪役令嬢であると分かってしまうという内容だ。


 乙女ゲーム万歳で、このゲームも逆ハーレム設定だ。ゲームの設定はある日眩い光と共に神のお告げとされている聖女が現われ、自分の婚約者である王太子や騎士・宰相補佐官・神官・魔導士と様々なイベントが発生してそれぞれが聖女のことを好きになって取り合う。そして、王太子の婚約者となっていた悪役令嬢セレナがちやほやされる聖女が気に入らなくていじめて端から邪魔をしまくる。このゲームの中の設定では聖女が誰を選んでも、セレナは国外追放や投獄・幽閉・死刑などすべてバッドエンドになるというヤバいものだ。だから、セレナになった玲奈ちゃんは必死におとなしく目立たないように生きて、攻略対象の男性陣を避けて聖女をバックアップしようと努力する。小説のストーリーはそんな流れで展開していた。

 

読んだのは半年も前だから設定のくわしい内容まではもう忘れてしまっている。受験勉強が終わったら初めから読み直そうと思っていたけど、こんなことならエンディングはどうなったのかチラッと見ておけばよかった。それでも私は必死に記憶に残っているストーリーを夜に思い出してみた。


たしか小説はセレナが幼い頃から始まっている。聖女が現れるのは小説を半分くらい読み終えたところだったから、そう考えると現在はストーリーもかなり進んでいるはずだ。それで、その現れた聖女っていうのが私ということだから・・・。今は、悪役令嬢のセレナが主人公で私はサブキャラの立ち位置だ。


「 ややこしいわ 」


つい、口から思ったことが出てしまう。


「 聖女様 ? 」


思考考察タイム終了。腰かけている私の前に律儀に立って話をするコルネールは、協働不信の言動を繰り返す私を虫けらのような目で見ている。(そんな風に思える)


この人は確か、攻略対象№3 冷静沈着で頭脳明晰な氷の貴公子・・・ 宰相であるキルヒマン公爵の息子様だ。宰相といえば、玉座にいた群衆の先頭に立っていた怖い顔したオジサンのことをじゃないかな?あの顔、そういえば彼によく似ているかも。こうして眉間に皺が寄るところも。遺伝子は偉大だ。


「 すみません。取り乱してしまって 」


 ここは冷静になるしかない。西洋風もどきの異世界で日本人が生き残るのに大切なのは情報だ。


「 私はこれからどうすればいいのですか? 元の所・・世界に帰ることは・・ 」

「 帰れないでしょう 」


 笑みも気遣いも何もない。容赦のないコルネールに、言葉が詰まる。


「 ・・・・ 」


 性格悪いよ、あんた。 おかしいよ。これは一応聖女と宰相補佐官の出会いイベントの筈じゃないの? 聖女に対しての興味や好感度がもう少しあってもいいんじゃないかな。


「 聖女様はこの世を救っていただくために、ルシャーナ王国に降り立たれたのですから私どもが助言する立場ではございません 」


あ、そうですか。自分で考えろってことですね。こんなキャラだから、No.3なんだよ。ツンデレのツンだけじゃ主人公には選ばれないよ。


「 じゃあ、この国のことを少し教えていただけないですか? 帰れないのならここで生きて行かなくてはいけなし、国を救うって言われても困りますし 」


 売り言葉に買い言葉じゃ問題解決はしない。心の中で自分に言い聞かせているけど、こんな仕打ち・こんな展開・・・『どうなのよ!コレ!』って思いっきり叫びたいわ。




お楽しみいただければ幸いです

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