19. 何ルートなんだろう?コレ
今回の王宮主催の舞踏会はいわゆる「聖女(睦月姫)の歓迎会」みたいなものだった。
王族と国内の主要な貴族が異世界から来た珍客を観にくる会、なんだろうな・・・て私は勝手に思っている。
純日本人の私が舞踏会なんて漫画やアニメの世界でしか知らないし、普通に生きていれば参加するなんてなかったはずだ。
(どうせなら盆踊り大会が良かった)
えらいやっちゃ えらいやっちゃ よいよいよいよい 踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら踊らにゃそんそん
今、私はグリーンの髪に琥珀の瞳を持つ冷たく利己的で神経質なオーラ漂う、宰相補佐官コルネール・キルヒマンと腕を組みエスコートを受けながら会場入りしたところ。頭の中のBGMは阿波踊り(盆踊りやないやん)が巡っていた。それくらい現実逃避中だから・・・
読心術のあるエドは不参加だし、もう空想・妄想し放題だ。
コルネールの装いは濃紺のフロックコートにクラバットそして、胸元にはセレナの瞳の色を連想させるエメラルドグリーンのハンカチーフを差し色として入れている。
エスコートされる私はというと、王宮から届いた6着のドレスの中から聖女らしい白を基調とした清楚なものを選んだ。(ゲーム要素らしく用意された他のドレスは、金・赤・ブルー・グリーン・紫の男主人公の髪色を連想するものだったから)
この舞踏会イベント、挿絵にもあったが実際に体験するとスケールが半端ない。コンサートホールのような高い天井に煌びやかなシャンデリアがキラキラと輝いてる。西洋中世に習った時代背景だから照明は蝋燭なんだろうけど、異世界のここは魔力でコントロールされる照明(魔道具というやつ)だとエドから聞いた。
そんなことよりも・・・
「どうかされましたか?」(黙り込んでどうしたんだ?)
コルナールが迎えに来て馬車に乗り込み王宮までやっていた私だが、来るまでは散々エドやサラにグズグズ行きたくないと喚いていたから正直もう疲れている。それに彼は心配するというより面倒だと思っているだけだから話をする気にもならない。
「いえ、大丈夫です」
「そうですか?」(緊張しているのか?)
もうほかっといてほしい。どう考えてもあんたのルートでも司教のハノのルートでもないのだから。
ここがセレナ主人公の小説の世界だってことは分かってる。でもさあ、設定としてさあ私は聖女という役なんだから、それなりに最低限の気を使って欲しい。
私を引き摺るようにエスコートするコルナールは、まっすぐ会場の上座に集まる集団の元に歩んでいく。もちろん、そこには王太子と護衛そして、ピンクのふわふわな髪を持つセレナが待っていた。
「聖女様!(姫ちゃん!今日も可愛い)」
設定的には悪役令嬢なのに可愛らしい黄色のドレスに身を包み、この場にいる男主人公達3人(王太子カルロス・護衛騎士チャールズ・コルネール)より誰よりも笑顔でwelcome歓迎してくれた。それを見る男主人公は三者三様で、眉を顰め嫌な顔をするコルネール・王太子の後ろで心配顔で見つめるチャールズ・そして何も考えていないように笑みを浮かべるカルロスがセレナに続いて私のもとに集まってくる。
「王太子殿下にご挨拶申し上げます・・・」
小説や漫画では『王国の太陽』とか『帝国の沈まぬ太陽』とかなんとかいうべきなのかもしれないけど、咄嗟に出てこなくて省略して日本人らしく礼をする。
「そんなに固くなるな、いつものように楽にせよ」
同年代の人なのに上から目線で話をされることがないから、なんだか不思議な感じがするけどその場の慣例に乗っ取り感謝の言葉を述べた後に頭上げる。
ま・まぶしい
王子様そのもの。白を基調にした金銀の凝った刺繍にやっぱりセレナの容姿を連想させるピンクの差し色をこっそりと入れた服装に身を包み、キラキラな金色の髪に透き通る碧眼の瞳のカルロスがセレナに寄り添い立つ。
「聖女様・・・」(呼びにくいわ)
「姫とお呼びください」
「いいのですか?」(姫ちゃんやさしい)
「はい」
私の手を両手で握りブンブンと振りながら、大歓迎のセレナは小説の主人公で描かれていたように素直ないい子らしい。つられて私が笑えば、
(ホントに可愛すぎる!姫ちゃん!!私の推し♡ 笑顔が尊過ぎるわ)
テンション爆上がりのセレナの心が読み取れる。私の場合、読心術じゃない筈なのにセレナの心の中だけはなぜかはっきりと分かってしまう。
「セ・セレナ」(どうしたんだ?)
「セレナ様」(聖女に近すぎます)
「・・・」(大丈夫なのか?セレナ)
これもまた、三者三様で男主人公達はセレナを心配顔で見ていた。
小説では確か・・・
セレナはこの舞踏会で聖女と王太子をくっつけようとしていた。ゲーム内ではここが王太子ルートに入る設定だったからだ。
でも、これは・・・
私、何ルートに入ったんだろう
その後、舞踏会の間中セレナは私と腕を組み離れなかった。結局、ダンスもしなくて済んだからさ、不幸中の幸いだったと思おう。




