4.【小さな太陽】
ー僕が次元の狭間にきて、どれくらい経ったのだろう?
ーお父さんやお母さんは元気でいるんだろうか?
ー心配して泣いていたりしないだろうか?
コンフィーネさんは、大体半年くらいは経ったといっていたけど、正直、暗闇の中での生活は全然時間の感覚がわからない。
だけど、少しだけ僕も魔術が使えるようになってきた。それが、成長として時が経っているという気持ちにさせてくれている。
魔術というものは、とある事象を発生させることにより物事を生み出す術式が必要で、それは、仕組みが理解できないとその事象を発生させることすらできない難しいものだった。
当然、七才だった僕には、そんな物事を理解したり考えたりすることはできず、未だにランプだって点けられない。
ーだけど…
「ランバート、この小屋にはその火の玉を入れんでくれんかの?
困ったようにコンフィーネさんが、お願いしてくる。
「だって、定期的に火を追加してあげないとこの子消えちゃうもん。
「いや、しかしのぅ…
(小屋が燃えたら生活できんじゃないか)
コンフィーネさんは、何やらぶつぶつと呟いていた。
「いくら、火を起こすには酸化させる熱と酸素、そして燃える何かが必要っていっても、飲み込みが早すぎだと思う。
適度に熱を加え、燃やしている何かを移動させながら生み出し続けることでゆっくりと火を動かしている。器用すぎる…。
子供だから単純思考でこんなことができるのか?
つか、ランプ要らなくね?
「どうしたの?コンフィーネさん。
「いや、何でもない。
ーわけがあるか!
長年、こんな暗闇の中で生きてきてこんな発想したことがない。
この子の発想は…危険すぎる。早く元の世界に返してあげなければ…
今までに感じたことのない恐怖に駆られるコンフィーネ。
しかし、ランバートの可能性にも正直驚かされ、この先を見てみたいと思っているのも事実だった。
「ランバート、お主はこの火の玉をずっと生み出すつもりなのか?
「その先に何があるんだ?
「え?太陽だよ。
「はぁ!?
何となくだが、予想は的中した。
ずっと火の玉を生み出すことで常に明るい環境が出来ていたが、寝る頃には必ず火の玉を消す。
そもそも寝てしまえば魔力も使わないわけだから、自然に消えてしまうのだが…しかし…
「太陽を作ってどうするというのだ?
次元の狭間という暗闇の世界は、太陽が照らしたところで何も見えない。違う世界から流れてきたものを見つけることは用意になったが、それ以外に何もメリットなどないのじゃぞ。
コンフィーネが険しい表情で、ランバートを諭そうとしたが、彼の表情には一点の曇りもなく明るいままだった。
「そうかもしれない。
でも、もし僕が太陽を作ることができたら、今度はここに一つの世界を作りたい。
いつか僕がこの世界を去ることになっても、ここに世界が生まれて、たくさんの人が住むようになったらおじいさんも寂しくないでしょ?
ーランバート、お主というものは…
険しい表情だったコンフィーネの表情に穏やかさとそれをより緩めるように薄く涙が浮かんだ。
ーお主がいなくなれば、その世界も消えてしまうのだがな。だが、それを言う必要はあるまい。
「ランバートや。ありがとう…
ーその気持ちだけで嬉しかった。
火の玉は、より大きく形を広げて火の塊のようになり、それがまるで小さな太陽のように明るく周囲を照らしていた。