1.【次元の狭間】
ーなにが起きたんだろう?
ーどうして、僕はここにいるんだろう?
ーここは、どこ?
ー暗い。
ー暗い…暗い…
ーまるで無の中に閉じ込められたように、僕は暗い闇の中で目が覚めた。
「ふむ。どうやら新しい人間が流れ込んできたようじゃのう。
目の前が見えない程暗い闇の中をうっすらと光が照らす。
目の前から、年老いた男性が明かりを灯してやってきたのだ。
「誰!?
僕は声に驚き、反応した。
「そう驚かんでも良い。ここへ来る者は皆同じ反応をする。
しかし…よく見るとまだ子供ではないか。どうしてこんな幼子がこのような所に…
男性は不思議そうに目を丸くして、僕を見る。
「僕をお家に帰してよ!お父さんとお母さんのところへ帰して!!
僕は、暗闇の中と、突然目の前に現れた男性に恐怖を感じながら訴えかけた。
「ことを説明するには、まだ難しい年頃じゃろうて。
しかし、ここへ来てしまった以上、理解してもらわねばなるまい。
この人は何を言っているんだ?
この人が僕をここへ連れてきたんじゃないの?
そんな疑問が脳裏をよぎる。
しかし、その疑問も理解できずとも男性はすぐに答えてくれた。
「よいか。ここは次元の狭間じゃ。
お主は何かの拍子に次元の狭間へと流れ込んできてしまったのじゃ。
なぜ幼いお主がこんなところへ流れてきたのかはわからぬ。
親元へ返してやりたいとは思うが、わしができることはお主と話をすることくらいしかできんのじゃ。
ここへ流れ着いた者の中には、元の世界へ戻っているものもいるかもしれんが、ここで生涯を終えるものもいる。
こればかりはわしには何も答えてやれることはない。すまんな。
「…どういうこと?よく分かんないよ!帰してよ。僕をお家に帰して!!
男性が言っていることは、よく分からない。
次元の狭間って何?元の世界って何?
お家に帰してもらえないの?
僕はただただ家に帰してもらうことだけしか考えられなくなっていた。
「お主、名は何と言う?
「へ?
「名前じゃよ。名前。
「ラン…バート…
「ランバートか、良い名じゃ。
わしの名はコンフィーネ。
いつまでもこんなところで話をしていても仕方がない。
一先ず、わしの家に行こう。付いてきなさい。
「い、嫌だ!お家に帰してくれないんだったら、僕は行かない!
僕は浮かぶ涙をこらえながら反抗的な目で男性を睨んだ。
「そうか、ならば悪いがわしがしてやれることは何もない。
ここに居たければいれば良い。
もしかしたら、無事にお家に帰れるかもしれんしな。
男性は、背を向け去っていこうとする。
その時、再び暗闇に包まれそうになる自分に僕は不安を感じた。
「ま、待って!!分かった、行くよ!だから、一人にしないで!!
僕は、男性の後を追いかけるように付いていった。