8話
その後は、別に大したトラブルもなく買い物を終えることが出来た二人。移動する際も、買い物の際も常に離れないように警戒し、万が一トイレに行きたくなっても、麗羅はトイレに避難することによって男たちを回避。
三時間もそれをしてたおかげが、男たちも潔く諦めた模様。それに二人はとりあえず胸をなで下ろした。
「今日はありがとうございました、高木さん」
「本当に気にしなくても大丈夫だよ。琴吹さんの役に立てたなら俺も嬉しいし」
京介がしたことと言えば、護衛と荷物持ちと、どっちの服がいいかということを聞かれた時に真剣悩んだだけ。本人は本当にお礼を言われる筋合いはないと思っている。
「それでも、私はお礼を言いたいんです。私一人だけだったら、もっと時間がかかってたと思いますし……」
と、麗羅は苦笑いをして、そこからどれだけ撒くのが大変だったのか想像する京介。
マンションに二人で入り、今度は同じエレベーターに乗り移動。そして、お互いの部屋の前へ着いた。
「それでは高木さん。今日はありがとうございました。楽しかったです」
「俺も楽しかった。それと、男避けの際は遠慮なく頼って欲しい」
柄でもないなぁと思いながら麗羅に言葉を投げる。それを聞いた麗羅は満面の笑みになってーーー
「はい。またよろしくお願いします」
と言って、部屋へ消えていった。
一目見た時は、きっと関わることなんてなかったと、そう思っていたが……。
(奇妙な縁ができたな…人生、何が起きるか分からんね)
と、京介もまた、部屋に消えていった。
一方その頃、一足先に部屋へ入った麗羅だがーーーー
(……うー……うー!?私、大丈夫だったよね!?顔最後まで赤くなかったよね!?)
ガンッ!と背中を壁にぶつけ、ズルズルと滑り落ちていく麗羅。その顔はどこを見ても赤いままだ。
(急に手を握ってくるとか……あとあと!笑顔とか!反則だよあれ……)
「……うぅ……きょーくん……」
赤くなっている顔を両手で隠しながら、呟く麗羅。
果たして、きょーくんとは一体誰なのか。なせわ、そんなにも顔を赤くしているのか。
その答えは、麗羅のみ知る………。
「………やっぱ琴吹さんの作ったカレーうめぇ……」
引っ越して二日目の夜ご飯。麗羅が作ってくれたどことなく親が作ったカレーに舌鼓を打っているとこ、ピロリンと端に置いていたスマホが振動する。
行儀悪いと思いながらも、スマホの電源を入れて見ると、麗羅からのメッセージが一件。
麗羅『カレー……どうでしたか?』
「…………マジで聞いてきたな。とりあえず、めちゃくちゃ美味しい……と」
京介『めちゃくちゃ美味しい。文句なしの1品だ』
麗羅『はい!ありがとうございます!』