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5話

 歩くこと7分。程度、時々地図に目を落としながら進んだので、歩みは遅かったが、無事にその雑貨屋に着くことが出来た。


「……ふーん、個人店舗なんだここ」


 お店の外装を見て、一階部分が店、二階部分が住居となっているようだった。


 一階部分をドアからチラッと覗いたが、まだ客足は少なく、人がチラチラいる程度だった。


「人が少ないですね」


「……まぁ、今日って一応平日だしな」


 忘れてはいけないが、京介達は春休み真っ只中。人が少ないのは当たり前だろう。


「…あ、そう言えばそうでしたね」


 忘れていました、と少しはにかんだ麗羅。美しすぎて注視できないで、そっと視線を逸らした。


「さて、入ってみるか」


「そうですね。いつまでもお店前で……という訳には行きませんから」


 カランコロン、と音がなり、奥からいらっしゃいませー!と元気な女性の声が聞こえた。


 そんなに大きな店舗とかではないが、雰囲気や、所狭しと敷き詰められた売り物の数についつい目が移る。


(…へぇ、これ中々いいデザインだな)


 とか何とか思っているが、京介にデザインの善し悪しなんて分からないし、ただの主観である。


「高木さん、高木さん、これ、いいと思いませんか?」


 右側から、袖をクイクイっと引かれ、ずいっと京介の目の前に差し出されたのは、2つのグラス。


 どうやらペアグラスのようで、二つを合わせると大輪の花になるようなデザインのグラスだ。


「……お、それに目をつけるとは、お客さん中々いい目をしているね」


「キャッ!」


「うおっ!?」


 ぬっ、と二人の間に現れ突然姿を表した店員に、二人してビックリする。その際に、そのグラスを落としそうになり、慌てて二人でそれをキャッチ。


「あら、ごめんなさいね。驚かせてしまって」


 と、少しニヤニヤしているこのお店のエプロンを着ている、どう見ても麗羅達と同い年にしか見えない黒髪の少女。


「……ほんと、店員がそんなことしていいのか?」


「ほんとです……びっくりしました……」


「にゃはは。ごめんねー、そんなにグラスを落としそうになってそのまま手が触れていることに気づかないほどに驚かせちゃって」


「は?手……ってうおっ!?」


「はわわわ!!」


 二人で慌ててグラスを持ったため、当然手が触れていた。慌てて離れようとしたが、グラスがあるため、ゆっくりと京介がグラスから手を離した。


 それを見て更に店員のニヤニヤ度が増していった。


「いやー……初々しいねぇ、まるで付き合いたてのカップルみたいな反応だね」


「つ、つつつ付き合ってねぇし!」


「そ、そうです!高木さんとは昨日知り合いになったばかりですから!」


「え!?昨日知り合ったばかりなのに一緒に出かけてるの!?」


「…………あ」


 完全に墓穴を掘った麗羅。次第に麗羅の顔がどんどん赤くなり、店員のにやにやはさらに加速していった。


「……へぇ~?」


「ち、違いますから!あんまり深い意味はありませんよ!その、高木さんはただの付き添いでーーー」


「うんうん、分かった分かった……一目惚れ、しちゃったんだね?」


「違います!」


 そこまで必死に否定されると、なんだか悲しくなってきた京介。何故だろう。無性に泣きたくなってきた気がする。


(いや、まぁ事実なんだけど……事実なんだけどなぁ……)


 この後、さらに必死に否定している麗羅を見て、悲しくなってきたので、京介はこっそりと別のコーナーに移動した。

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