29話
「んぐっ!」
ドスン!と少しだけ体に響く痛みに、右手が地面と当たった反動でじんわりと痛い。
「いつつ……」
「んぅ……」
ふんわり、と立ち上がるために両手に力を入れたのが間違いであった。京介の左手は女性の象徴とも言える、素晴らしき双丘の片割れに見事にーーーー
「んげっ!?」
「ひぁ……っ!」
驚きでついついもう一揉み。麗羅から艶やかな声が漏れ、京介の顔がどんどんと赤くなる。
「ご、ごめっーーーうおぁ!?」
勢いよく立ち上がろうとしたが、如何せん体制が悪かった。京介の左膝は、麗羅の足と足の間に膝を着いており、更には麗羅のスカートの布を踏みつけている始末。
当然、脳内がパニックの状態では足を取られるのも当たり前なこと。ズルっ!と思いっきり滑った京介は、今度こそ思いっきり麗羅の上に倒れ込む。
(ま、マズイ……!!)
既に二揉みしているため、マズイもクソもあったものでは無いが、せめてもの二次被害を防ぐために、京介はできる限り体をズラそうとする。
しかし、残り0コンマ何秒でそんな人間離れした動きなんて、中学高時代、帰宅部のエースだった京介がそんなことできるわけが無い。
努力虚しく、京介の顔は麗羅の胸へと吸い込まれてしまった。
「むぎゅ!?」
「むぐっ!」
麗羅は、胸への衝撃に悲鳴をあげて少しむせ、恭介も、少なからず来た衝撃に少し悲鳴を挙げた。
完全に麗羅を押し倒してしまった京介。しかも、顔は麗羅の胸に押し付けている状態。
こんなもの、事情が知らない人が見たら即1発通報である。
(わわわ!ど、どうしよ!少し痛かったけど、これは願ってもいない状態だわ!)
失礼、どうやら被害者な方は少なからず喜んでいたようだ。
何せ、先程まで起こらないかなーと少なからず期待していたラッキースケベ。痛みがあるのは少々予想外で、何やら可愛らしい声が出たような気がするがまぁいい。麗羅的にもモーマンタイである。
京介がゆっくりと、麗羅の胸から顔を上げ、顔を真っ赤にさせた状態で麗羅と目が合う。京介はそのまま立ち上がろうとしたのだが、麗羅止めが会った瞬間にその動きは止まった。
(か、可愛い…………)
倒れたことにより、少しだけ乱れた服、少しだけ息遣いが荒く、真っ赤になっている顔。
なんて言うかーーーものすごくエロかった。
(……これは、あと一歩で堕ちる!)
京介の顔を見て何かを確信した麗羅。心の中で非常にキメ顔で、顎に手を乗せ、京介へと更なる一撃を加えた。
「あ、あの……」
ゴクリ、と京介の喉を唾が通ったのが分かった。
「ゆっくりでいいですので………その、恥ずかしいから……早く……」
「っ!?ご、ごごごごこめん!?」
勝った。京介の慌てようを見て、麗羅は心中でガッツポーズを決めた。




