2話
「よし、感謝も告げたし、まずは適当に部屋の整理でもしとくか」
今回、京介が親と色々と相談しながら決めたマンションは、1LKの一人で暮らすにはそこそこ広いマンションだ。
しかも、家賃もまぁそれなりにするため、流石に申し訳ないとは思ったのだが、両親が心配するな(ドヤァ)と言っていたため、ありがたく頭を地面に付けたのであった。その日は、京介が趣味で個人的な活動で得たお金で焼肉に行った。
そんな過去を思い出しながら、京介はダンボールを開いた。
「ふぅ、ざっとこんなもんかな……」
片付けをしてから三時間。少し窓から見える外の景色が赤く染まり始めたところで、整理が終わった。
自宅から持ってきた本棚をもう一度組み立て直したり、その本棚に入れる本の整理とかで時間を沢山取られたが、京介的にも充実した時間となった。
「ふぅ、もう時間だしな……少し早いが、飯にでもするか」
と、京介は鼻歌を歌いながら、お手軽にできるインスタントラーメンであるペ〇ングを取り出した。
一人暮らしをすると決めた、半月前から、京介は母親に軽く料理を習っており、簡単に自炊は出来るのだが、今日は流石に少し疲れたので、自炊をするつもりは無いし、何よりまだ食材も買ってないし、調理器具もまだ出していないのだ。
さて、それでは開けよう!とした所で。
ーーーーピンポーン。
「……ん?」
と、インターホンがなる音が聞こえた。その音を聞いて、京介は眉をひそめた。
(………誰だ?)
勿論、京介はここに今日越してきたので、インターホンを鳴らす知り合いなどいない。知り合いと呼べるのに怪しい挨拶をしたお隣さんならいるのだが、わざわざあんな美少女が、京介の家のインターホンを鳴らすのも訳が分からない。
となると、必然的に怪しい宗教勧誘の線が濃厚か……?と思いながら、京介は軽く舌打ちを打ち、玄関に向かった。
ここで普通ならば、覗き穴から人を見るのだろうが、多少腹が減っていて、至福の時間を邪魔されたのだ。少しイラついており、すぐにでもその宗教勧誘を追い出したかったのだ。
(開けたら直ぐに興味無いことを伝えて、直ぐにドアを閉める。しつこいようなら警察に)
そう心に決めて、ドアをガチャりと開けた。
「すいません。俺、宗教とか興味無ーーーー」
「あの、今、大丈夫でしたか?」
ぱちくり。
京介は、視界に写った綺麗な金髪を見た瞬間、脳の活動が停止した。
(…………え?なんで?)
と、停止した後に稼働して思った一言目。この気持ちが今京介の中でいっぱいになっている。
100人中100人が文句なしの美少女と言うであろう美貌、肩ほどまである見ただけで丁寧に手入れをされている金髪、それを揺らすように京介の顔を覗き込む翡翠色。
そんな少女が持っているのはーーー鍋。
(………え?鍋?)
京介の頭に更にはてなマークが浮かんだ。
「あの……これ、作り過ぎてしまって……もし良ければ、貰ってくれませんか?」
「………は?」
よく、同じようなシーンでお隣さんが作りすぎちゃったんですけどぉとかいうシーンがあるが、実際やられると停止するということが分かった。
クンクン、と無意識のうちに鼻を揺らすと、嗅いだことある匂いが鼻腔をくすぐった。
「……カレー?」
「はい。その……恥ずかしながら、初めての一人暮らしで緊張してしまって……気づいたらいつも家族に作っているのと同じ量を作ってしまいまして……」
「…そ、そうなのか……」
何その理由、可愛いとか思いながら、ゴホンと京介は咳払いした。
「あー……その、琴吹さんは分けても大丈夫なのか……?その、次の日の分に取っておくとか」
「はい、私の分は既に取ってまして……そのあまりです」
「あまり…………」
明らかに、麗羅が持っている鍋は大きい。これがあまりというのなら、いつもどのくらいの量を作っているのだろうか……。
「…そういうことなら、ありがたく貰おうかな。ありがとう、琴吹さん」
「いいえ!その、私が作りすぎたのが行けないですから……せめて、高木さんのお口に合えば幸いです」
と、にっこりと笑う麗羅。
(……天使や、天使がおる)
京介は、その笑顔にひっそりと癒された。
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