28話
早速、掃除に取り掛かった二人。しかし、特に特出するようなことはなく、淡々と時間はすぎていく。
京介は元々、高校に入ったら一人暮らしをすると決めていたので、家事は一通り出来るように家で特訓をしていたが、やはり麗羅の家事スキルには思わず京介は手を止めてみていた。
(……な、なんというテキパキさ……)
京介が1をやっている間に、麗羅は5を終わらせる。まさにそんな速さで、しかも正確に綺麗になっていくのでさらに驚きを隠せない。
「ふぅ……それでは、次に行きましょうか」
「い、イエッサー………」
そして、いつの間にか上下関係が出来上がっていた。
二時間かけて掃除を終わらせ、麗羅が鼻歌を歌いながら京介のために、今日の夜ご飯を作っているのをボーッと椅子に座りながら眺める。
そして、彼女が作っている料理の匂いもやはり、どこか京介の母親の料理を思い出させる。
そして、最近になって刺激される、京介が事故で記憶を失っても、覚えていた幼なじみの姿。
相変わらず顔は分からないが、麗羅と会ってからはやけに、あの記憶が刺激される。
(………まさか、な)
ふと、京介がまさかと思ったが直ぐに首を横に振る。そんなもの、どのくらいの天文学的確率であるか分からない。
(それこそ、琴吹さんと俺の母さんが結託でもしてない限り……)
当たっていた。ものすごく当たっていた。
(まさか、母さんが琴吹さんの連絡先とか知ってるはずないもんな。10年前だもん、母さんもきっと覚えていない)
覚えていた。なんなら連絡先もゲットしていて外堀をガッツリ埋められている最中である。
(はぁ、結局それらしいイベンド事はなし……ラッキースケベって意外と難しいのね……To○OVEるのようにそんなホイホイとはならないのね……)
一方こちら、料理を作ってるむっつりすけべさん。世界で一番参考にしてはいけないものを見て、現実とは違うのねと一人少しだけ落ち込んでいた。
(……いえ、まだまだ落ち込むのは早いわよ麗羅!こうして二人でいる時が差をつけるチャンスなんだから!)
「よし、後は少し火を通して……」
カチッと火の強さを弱火へしてから、手を洗う。一旦京介のところに行って、椅子に座って休憩でもしようかなと思っていると、ラブコメの神様はここにいたか。先程までなかったような気はするが、いつの間にやらどこからかずり落ちた、先程掃除で使った雑巾が、麗羅の進路方向に落ちていた。
(……ん?あんな所に雑巾なんてあったか?)
ふと、それが目に入った京介。そして、麗羅と雑巾を見比べるとーーー急いで立ち上がった。
「琴吹さん!?」
「えーーーわわっ!?」
そして見事、吉○もびっくりするほどに綺麗にこけ始めた麗羅。
(うそー!!ここでーー!)
と、内心叫んだ麗羅。流石に準備できていなかったのか、痛さの恐怖でギュッと目を瞑る。
しかし、次には麗羅の手をギリギリ掴んだ京介だが、重心が完全に後ろへ行っている麗羅を戻すことは出来ず、仲良く一緒に床へ倒れ込んだ。
「んげ!?」
「わわっ!?」
ドタンドタン!と激しい物音を立てて倒れた二人。麗羅は背中を強くうちつけ「むぎゅ!?」と声が出て、そして京介はーーーーー




