25話
長月高校では、毎年毎年新一年生恒例のレクリエーションキャンプというものが存在し、クラスメイト同士の自己紹介ついでに、もっと仲良くなろーぜ的な行事がある。
教師の一言、それでは四人一組になってくださーいの言葉と同時に、京介は席を立って最近仲良くなった晃の元へ向かおうとしたがーーー
「………?」
立ち上がったまではいいが、袖が引っ張られているようなので、歩くことが出来ない。
「………ちょっと花果さん?この手はなんですか?」
「なに、キミが別のところに行かないようにしっかりとキープしているだけさ」
グイッ!と女子から考えられないくらいの力で引っ張られる京介。
(……力強くね?全く動けないんだけど……)
「それに、どうせ四人なんてすぐ集まるんだから、何もわざわざ探す必要なんてないじゃないか」
は?と思った直ぐに、どん、と軽く京介の肩を叩く音。
「よろしくねー、高木くん」
「よろしくお願いします、高木さん」
「………おいおいおいおい」
女三人に男一人。勿論、嫉妬の視線が突き刺さりである。
視線に物理法則が通用するのなら、きっと京介は五回ほど圧死しているだろう。
(いづれぇなぁ……)
ちくちくちくちく、京介に突き刺さる嫉妬視線。さっきから背中が痒くて仕方がない。
基本、まだ男子も女子の壁が少しある中、基本的に男四人か、女四人で組んでいるところが多い中、異性がいるのは京介達の他に、入学式初日に、四人を遊びに誘ってきたイケメンくんの所が男一、女三の割合なのだが、まぁあちらはイケメンなので仕方ないと諦めている。
しかし、京介はそこそこかっこいいものの、長月三大美女と呼ばれている人達を独り占めは許さねぇ!という嫉妬の視線が話し合いそっちのけで京介に送られている。
当然、その中には晃の視線もあった。
(……俺は空気、俺は空気、俺は空気………)
京介は目を閉じて、女子三人の話し合いを聞いているだけの役に徹している。
「高木さん、ここどう思います?」
「あぁ、いいんじゃないか?」
「高木くん、バスの席順どうする?」
「あぁ、いいんじゃないか?」
「…………京介。高校卒業したら、ぜひ私の右腕として木更津の糧となれ」
「あぁ、いいんじゃーーーーーいや、それは良くねぇわ。うん、全然良くねぇわ」
「ちっ、もう少しで言質取れるところだったのに……」
「花果さん?俺の進路勝手に決めるようにするのやめてもらいます?」
「ならば、きちんと私たちの会話の輪に入れ。さっきから適当に相槌しおって」
この、と言われて軽く足をつつかれる京介。ごめん、と一言謝ってから三人に何の話をしているかを聞いてみる。
「それで、今は何を話してるんだ?」
「勿論、誰が高木くんの隣に座るかどうかを決めてるんだよ!」
「一人で」
当然、そんな余裕は無いため全員に却下された。




