24話
「……んで、勢いでこれ受けたけど俺が一人で行こうか?」
と、先程メリィから受け取った傘を揺らしながら、後ろにいる三人に話しかける京介。
「いや、私も行こう。姉さんの秘書の旦那様なら、私も一言お礼を言った方がいいだろうからな」
「それでは、あんまり大人数で行くのも迷惑だと思うので、私は教室にいますね」
「それじゃ、私は麗羅の護衛ということで」
と、花果だけついて行くことにしたので、玄関で別れることに。
「そういえば、俺あの先輩のクラス知らねぇな」
「聞き込みをしていけばいいだろう。レジェンドメイドでなんか通じそうだ」
と、早速花果がすみませんと、そこにいた女子生徒二人に話を聞きに行った。
(さすがは木更津家のお嬢様だな。年上の人にもあんな簡単に話しかけれるとは)
ほー、と感心した目で花果の背中を見つめ、くるりと振り向いた花果は、成果があったのかパチッとウインクをした。
「成果ありだ。早川先輩は二組だそうだ」
「サンキュー。それじゃ、さっさと済ませて遅刻しないようにしないとな」
と、三年二組の教室にまで歩いていく二人。違う学年が三年の廊下にいるため、少し注目をされているのが心地悪く感じた京介が、少し身動ぎをした。
「どうした?」
「いや、視線がな………」
マイナス方面ではないが、興味という視線がチクチクと京介に刺さる。
何とか視線に耐えて、三年二組の教室前まで移動した京介達。ちょうどよく出てきたそのクラスの人に充を呼ぶように頼んだら、知り合いだったのか、「おーい充。お客さんだぞー」と言って、トイレに向かった。
「はいはー………い」
クラスから現れた充。京介、そして花果を見つめた瞬間、カチーンと止まった。
「……えと、俺に用って何かな?」
しかし、すぐ様動き出した充。笑顔は得意ではないが、なんとかニコッと笑えたような気がする。
「コレを」
スっと京介は傘を充に差し出す。
「えと……?」
「あなたのお嫁さんからです。たまたま同じ生徒の俺たちの目に止まったんで、頼まれました」
「へ?……あぁ、メリィちゃんから……そっか、ありがとう二人とも。実は傘忘れてて少し慌ててたんだよね」
あはは、と少し恥ずかしそうにして笑い、傘を受け取る充。
「………初めまして、早川先輩。いつも姉が先輩のお嫁さんにはお世話になってます」
「…………第一印象でなんとなくそうかなと思ったけど……俺の想像通りってことでいい?」
「えぇ、そうですね。とどめを刺すなら木更津です」
「やっぱり……花奈美さんの妹さんだったんだ。見た瞬間、一瞬間違えたから……えっと、お姉さんにはメリィちゃんがいつもお世話になってます………そして、俺自身も花奈美さんにはめちゃくちゃお世話になりました」
と、ペコペコと充は花果に頭を下げまくった。




