22話
「おはようさん」
「おはよう、高木くん」
「おはようございます、高木さん」
次の日。いつの間にか集合場所になっていたマンションのエントランスにて、麗羅達と合流を果たした京介。
「今日から花果も来るんだっけ?」
「そうだね。一人は寂しい!って言われちゃったからね」
これを知った昨日の花果。「何っ!君たち毎日いつも一緒に来てたのは一緒に登校していたからか!?羨ましい!私も行く!」と空あてにメールが届いたので、こうして、花果を待つことに。
「あ、高木さんこれどうぞ」
「ん?あぁ、サンキュ」
「………へ!?」
ごくごく自然な流れで、麗羅が昨日京介のために作ってきた弁当を手渡し、ごくごく自然な流れで、それを受け取った京介。
そして、当然のごとく声を上げた空。
「………?どうした?赤井さん」
「い、いや……だってーーーというか麗羅ちゃんも高木くんと自然と弁当箱渡してたけど………え?何?そういう打ち合わせでもしてたの……?」
「……………………あ」
言われて気づく、弁当かな。あまりにも違和感なく、脳がそれを理解する前に京介の体が反応し、気づけば受け取っていた。
「え!?弁当箱!?あれ、俺いつの間に受け取って!?」
(やりました……っ!)
もちろん、麗羅は心の中でガッツポーズ。無事、弁当で胃袋を掴む作戦は、滞りなく進んでいる。
「と、とりあえずこれ……俺どうすれば」
「ふふっ……いいんです高木さん。受け取ってください。また高木さんがコンビニ行くのだと考えてたら、体が勝手に準備してまして」
と、当然のごとく嘘をでっちあげる。本当は、ウキウキルンルンで準備していた。
「そうだ、高木さんが良ければ、これからも私がお料理をお作りしましょうか?お弁当も、夜ご飯の方も」
「え!?」
空があまりにも攻めすぎた発言に声を出す。
(す、すごい!麗羅ちゃん見かけによらず結構グイグイ行くのね!)
キャー!と心の中で顔を真っ赤に染めて、手で顔を隠すが、指の間からはバッチリと瞳が覗いている。
そんな提案に、京介は思わず頷ーーーー
「……っぶねぇ!なんかめちゃくち頷きそうになってたぞ俺!?」
ほとんど、本能からの頷きだったのだが、流石にまずいと思った京介は顔を両手で掴んだ。
「いや!流石に、これ以上琴吹さんに甘えるわけにはーーーー」
「大丈夫です!お隣とはそういうものですから!」
「……そ、そうか……?」
「はい!だから、高木さんは遠慮なく私に甘えていいんですよ?」
と、見れば誰しもが赤くなるであろう美少女スマイルを京介に見せつける麗羅。
(……ふふっ、計算通り)
しかし、その笑顔の中の本心は、肉食動物が草食動物をロックオンしたかのように獰猛だが。
(絶対ない。お隣同士でもそんなことは絶対にない………けど、なんか楽しそうだから黙っとこ!)
空は、ツッコミどころ満載のこの会話、傍観者でいることを決めた。




