19話
昼休み。ようやくシャーペン脇腹つんつん地獄がの終わりのチャイムが鳴り響くと、京介は勢いよく机に突っ伏した。そのせいで、前の席の女子が少しはピクっ!と体を震えさせたが、申し訳ないという気持ちも起きなかった。
(つ、疲れた……っ!!)
想像している10倍、こちらは授業を真面目に受けたいのに、隣にいる花果が脇腹をシャーペンでつんつんしてそれを妨害する。完全な花果の八つ当たりなのだが、そのせいで笑いを堪えるという大苦行を授業二時間分を過ごした京介は、素直に賞賛の拍手を送りたい。
トン、と軽く振動が伝わり、隣を見ると、花果が立ち上がっており、この一週間の昼休みでいつものスタンスで席をくっつけていた。
しかし、その顔は偉くご満悦のようだが。
「愉悦」
「表でろ。俺は女であろうが大企業の娘だろうが知らんが男女平等パンチが唸りをあげるぞこら」
どこぞの愉悦おじさんが脳内に浮かび、青筋を立てる。
「まぁまぁ京介。落ち着きたまえ。ほら、チョコレートあげるから」
「んぐっ」
突っ伏している京介の口に、花果がいつの間にやら出したアル○ォートが口の中に突っ込まれた。
唇を撫でられながらアルフ○ートを押し込まれた京介は、一瞬にして顔が熱くなった。
「お、おま!?なにして!?」
「なに、これでも少しは罪悪感を感じているからな」
と、先程京介の唇をなぞった指をペロリとひと舐め。それを見て京介の顔は更に赤くなった。
関節キス。口の中のア○フォートが更に甘くなったような気がした。
「……ふむ、なかなかこれは……恥ずかしいな」
「じゃあやるんじゃねぇよ………」
少しだけ頬を赤くした花果が、大人しく隣の席に座り、京介は背もたれに思いっきりもたれかかった。
「………君たち、ここ教室内だよ?少しは目線気にしたらどうなの?……まぁ幸い見てたのは私たちしかいなかったけど……」
「…………っ!っ!」
そんな2人に近づく人影ーーー勿論空と麗羅なのだが、空はジト目で京介達を見つめ、麗羅は真っ赤な顔で京介と麗羅の顔を行ったり来たりと視線を動かしていた。
「………な、なに。私の右腕として働かせるためには、こういう少しのリップサービス?的なものも必要なのでな……と、とくに深い意味はーーー」
「顔真っ赤にして反論しても信憑性ないから。はい、目の前失礼」
と、空も自分の席ではない机を借りて、ガッチャンと机をドッキング。麗羅も恐る恐る京介の机とドッキングした。
「それで、花果ちゃん。ホントのとこどうなの?そんなに高木くんのこと気に入った?」
「ば、バカ言うなよ空。確かに京介のことは気に入っている。気遣いもできるし、人を見る目もあるし、ゲームときも相棒としてすごい役に立つがーーーー」
と、何やら花果と空の間で始まり、花果の言い訳が始まったが、あまりにも早口だった。
「………あの、高木さん」
「………どうした?」
京介は、決して炊事ができないという訳では無いが、どうしても昼飯の分まで作る気は起きないので、いつも三人に待ってもらって途中でコンビニで買っている。
今日も手に入れたおにぎり三つをカバンから取り出した京介は、目の前でモジモジしている麗羅を見た。
「……あの、いつもお昼ご飯はコンビニなので……その、今日はお弁当を作ってきたんですが………」
「……………………………………ん?」
京介の思考が止まった。ついでに、花果達の思考も止まった。




