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14話

 対して記憶のない入学式が終わり、教室に戻ってきて、担任の挨拶が終わり、解散の時間となった。


「ふぅ……終わったぁ」


 ダラーん、と背もたれに背中を思いっきり預け、ほけ~と口を開けた。隣では同じように花果が机に突っ伏していた。


「なぁみんな!」


「あ?」


 クラスの中心から、やけにどデカい声がした。それに少し気になって京介は顔をもどし、声の発生源を見た。


(………うわぁ、典型的だイケメンがおるなぁ)


 髪を金色に染め、やけにキラキラとした笑顔なイケメン。確か、入学式が始まるまでに、複数のお近づきになりたい女子が群がっていたと記憶していた。


「クラスの親睦を深めるために、これから遊びにでも行かないか?」


 と、無駄にイケメンスマイルで、複数の女子が顔を赤くした。


 よく出来た表情である。ゆえに、京介は呟いた。


「「うっわぁ……うさんくせぇ…………ん?」」


 何やら隣からもダブって聞こえたので、目線をちらりとやった。花果と視線があった。


「………理由は?」


「舐めるな。以上」


 と、自身の目を指さしながら言った花果。伊達に木更津家の人間じゃないということか、観察眼ならお手のものである。


 する、と手のひらを返され、「どうぞ」と呟いた花果。


「昔色々あって視線に敏感でな……強い感情なら読み取ることができるんだよ……特によーーー」


 ーーーあの粘ついたの気持ち悪ぃ。


 京介は、クラスの中心にいる人物を睨みつけた。


(名前誰だ……分かんねぇ)


 まぁどうせ関わることは無いからいいやと直ぐに頭の片隅においやった。


「……ふーん、京介、人を見る目はあるのね、将来私の下に就かない?」


「……それは就職先としてということか?」


「えぇ。社長はお姉様がやるから、まぁその下になるのだけど……私の好みは人を見る目がある人……」


 と、花果は立ち上がり、京介に近づくと、顎に人差し指添え、クイッと上げた。


「どう?私の秘書として……右腕として、木更津の糧とならない?」


 普通これするの逆じゃね?と思いつつも、花果のお誘いにはしっかりと答える。


 やんわりと指を掴み、顎から外した。


「それじゃあ、俺が路頭に迷ったら頼むわ」


「えぇ、それならそれまで開けておくわね」


 にこり、と女優顔負けの笑顔を見せられ、プイッ、と顔を逸らした。


 逸らした先には、空と麗羅の姿がーーー


「あ、やっと終わった?」


「お、おう……なんだ、いたのか?」


「えぇ、バッチリ最初から最後まで見てたわ。こう、高木くんが顎クイみたいなのされててーーー」


「そ、空ちゃん、私で試すのはやめて……」


 花果の真似をしようとしたが、やんわりと指を掴まれ、顎に到達する前にペしっ、と叩かれた。


「あ、私赤井空。よろしく」


「琴吹麗羅です。よろしくお願いします」


「木更津花果よ。花果でいいわ。よろしくね」


 と、握手を済ませる三人。


「貴方たちは行かなくていいのかしら?」


 チラリ、と花果は視線をあのイケメンへと向ける。


「へ?嫌よ」


「ですね。上手くやってるようですが、欲望を隠しきれてませんね」


 空は店員としての経験から、麗羅は今までの人生経験から、あっさりとあのイケメンの企みを見抜いていた。


「へぇ……貴方たちも……ねぇ、私の下で将来働かーーーー」


「こらこら、直ぐにスカウトしようとするな」


「あう」


 ペシん、と花果の頭に軽くチョップを入れたプクー、と京介を睨むが、ため息で流された。


「ゲームするんだろ。なら早く帰るぞ」


「そうだったね。それじゃあ帰ろうか」


「あ、私達も一緒していい?というかご近所さんだしね」


「なら四人で帰るか」


 と、鞄を持ち帰る準備は万端。しかし、ここであのイケメンが四人に近づいてきて、四人と視線があったーーーー瞬間、京介は顔には出さなかったが、吐き気を催し、空は営業スマイルを貼り付け、麗羅の笑顔は固まり、花果はそもそも嫌そうな顔を隠そうともしなかった。


「ねぇ、もし良かったら君たちもーーーー」


「ごめん、(生理的に)無理」


「以下同文」


「お店の手伝いが」


「一人暮らしなので」


 と、四人が次々と参加拒否した。


「ーーーえ?」


「悪いなイケメンさん。いつか誘ってくれ」


 と、絶対次誘っても断るパターンの常套句を口にして、京介は教室を出る。それに続いて三人も教室を出た。


「……ごめん、ちょっとトイレ行ってきていい?リバースしそう……」


「よしよし、水を奢ってあげるから却下だ」

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