10話
「……そうするのも構わんが、俺先に行くぞ?」
美少女同士の触れ合いは、こう……なんだか見ていたかったような気はするが、それはそれ、これはこれ。登校中なので、流石に京介は待ったをかけた。
「ま、待ってください……空さん、離れてください……」
「ちぇ……あと三分だけーーー」
「ダメです!」
ピシャリと断った。
学校へ通る際、住宅街を通らなければいけないので、会社へ出勤しようとする大人の人やら、そこら辺で井戸端会議をするおば様方やらとすれ違う。
その度、京介は男からは嫉妬の視線。女からは興味ありげな視線を注がれ、とてもむず痒い気分になっている。
何故か京介を挟むように登校している彼らの姿に、一般通過者は一体どのような目で三人を見ているのだろうか。
麗羅と空は、京介から見ても、当然周りから見ても美人だ。なので、両手に花状態の京介のことを快く思わない人もいるだろう。
「行ってらっしゃい!みぃくん!」
「うん、行ってきます」
「うわっ……何あの人、すっごい美人さんなんだけど………」
左隣に居た空がとある家を凝視する。釣られるように二人も見ると、京介と同じ制服を来た黒髪の少年が、エプロンを来ている『THE・妻』みたいな銀髪の人から笑顔で見送られている場面に出くわした。
こちらを見ていたことに少年は気づいたが、一瞥するだけでそのままスタスタと学校へ歩いていった。
「……先輩、なのか?」
「……だと思う。あの人、ボタンの色違ったから」
「空さん……あの一瞬であそこまで見てたんですか……?」
空の観察眼がさりげなく発揮された一場面。京介の視線は、表札へとゆっくりと移動した。
そこには、『早川』と表記されていた。
「はやかわ………もしかしてレジェンドメイドの早川先輩!?」
「……なんだ?そのレジェンドメイドって」
突然叫んだ空。その苗字に心当たりがあったのか、顔を驚きの色で染め上げる。
「……ふ、二人は、去年の長月高校の文化祭には行ってないの?」
「うん」
「えぇ」
「あちゃー……それなら知らないでも仕方ないなぁ……」
と、空は説明し始めた。
去年の文化祭にて、長月高校は色々と伝説を作ったらしい。全国のFPSトップランカーが集まったゲーム部の出し物。そして、男なのに長月高校のミスコンに優勝したレジェンドメイド………。
「確か、その人の名字って早川だった気がするの………偉く完成度高かったから覚えているわ………」
「「…………………」」
やけに力強く説明する空に対し、麗羅と京介も自然と何故か冷や汗をかいていた。
「ちなみに、長月高校の今年の入試10倍もあの人の影響よ」
「「えぇ…………」」




