接触
セージ達の目の前に現れたそれは、二メートルほどの長い十字架の様なステッキのてっぺんに丸いオブジェが付いた物だった。
「これが!アーティファクト”虚空の杖”じゃ!!」
背景にドーン!!と、擬音が付きそうな勢いで黒龍が言った。
「コレをどうしろと?」
「フム、使えば更なる力を得ることも出来ようが…。」
ドラゴンは一呼吸おいて…
「破壊してほしい」
セージの質問に黒龍はザックリと答えたが、結構難解な内容だった。
「ワシは、杖を守るように命令されておるから自分で破壊する事は出来ない。魔王軍がいないじゃ、急ぐことも無いが、あんたらの手でこいつを壊してほしい」
「は~~い先生、質問で~す」
ディックが挙手をする。
「はい、そこのチビッ子」
ドラゴンが指さす。
「具体的にどんな事が出来るんだ?その杖」
「これはただのカギにすぎん、本体はこの塔自体だ。遥か昔、天高くそびえるこの塔は魔族の物だった。奴らはこれを使い、この世界と自分たちの世界を繋げこの世界のマナを吸い上げようとしていた…」
「別の世界…」
セージは元の世界を想像した。それを察した黒龍は、
「世界は一つでは無い、この世には無数の異世界が存在する。」
「我々は幾たびの戦闘を経てこの塔を奪取、塔は二つに折れ先の方は何処か地面に落下した」
セージ達はパチパチと拍手した。
「それ以後、杖と共にワシがこの塔を守っていたのだが…。魔王復活を知り、悪用される前に破壊しようと思ったのだが…」
「魔王は、もう居ないと…」
ディックが言う。
「そうじゃ、だから急ぐ理由もないが…!!」
黒龍は突然言葉を止め、周囲を見回した。セージ達も周囲の異変に気付き武器に手をかけ警戒する。
―――何かが来る―――。
緊張が走る。肌がざわつく、これは間違いなく敵だ!
何も無い空間に、暗い闇が浮かび上がり徐々に大きくなる。セージはこの現象に見覚えがあった。そうだ、あの黒フードの現れる予兆だ。
セージは刀を構える。だが、現れたのは予想外の物だった。
闇の中から大柄の人影が現れる。いや、人では無い。人の形をした鋼鉄の鎧、だが頭だけは一回り大きいイノシシの頭部を模している。
「突撃!!突撃!!」
鼻息荒く、足で地面を蹴る。
さらに後ろから新たな影が現れる。細めの体に、ひょろりと長めの手足、そして頭部はオオカミを模していた。
「おい!”ボア”勝手に前に出るんじゃねぇ!」
同じく鋼鉄のオオカミ男はイノシシ男に向かってそう言った。
「喋れるのか…?」
先程までデカいドラゴンと話していたセージ達だが、この闇の空間から現れた怪物はそれとは違う別の何かの様な気がした。
「喋れるさ。ダンスだって踊れるぜ~~!そんな自分で魔力も作り出せない半端者と一緒にしないでもらいたいぜ~」
オオカミ男は軽快なステップを踏みながら言った。
「ヴォルフ!おしゃべりが過ぎるぜ!」
さらに闇の中から別の人影が現れた。かなりの大柄でギシギシと歩くたびに金属音がする。その姿は、鋼鉄の鎧を見に纏っているのかヨロイそのものが動いているのかわからない。
その男はまるで人の姿をした金属の塊だった。
男はセージ達を見回すと、フン!と、鼻で笑い。そしてドラゴンの目の前で、空中に浮かんでいる”虚空の杖”を確認すると、ニヤリと笑い。
「フハハハハ、」
ホールの中に男の笑い声が響く。
「来て早々こうも簡単に見つかるとはなぁ、まったく!
俺はツイてる!!」




