勇者
今日のオリエンスの街はいつもより賑やかな感じがした。
「今日は何かのお祭りなのか?」
セージは街を歩きながら先ほど言おうとした質問をした。
いつも賑やかな街だが、今日はいつにも増して屋台の数も多く、街の装飾もいつもより派手に見える。何より今日はおかしな仮装をした子供たちがチラホラとあちらこちらを駆けまわっている。
「ああ、今日は降誕祭です」
セージの問いにリーゼはさらりと答えた。
「降誕…、神様でも生まれたのかい?」
「いえいえ、誕生したのは英雄…、勇者です。今日は勇者が魔王を倒した日です。」
「勇者って…、まあ、お祭り好きなトコだとは思ったが…」
開門祭からまだ一か月足らず、さすがにセージがお祭り好きと思うのも無理はない。リーゼが補足する。
「ああ、違います。開門祭は街のお祭り、降誕祭は国のお祭りなんです。ほら、」
リーゼが広場の一角を指差すと、そこには多くのギャラリーの前で歌う吟遊詩人がいた。
―――それは英雄の歌だった。遠い異世界から来た若者は、とある盛で美しい姫と出会い…、恋をする。やがて二人は、魔王を倒すため旅に出る…。
「まあ、もっぱら若い人たちが好きなのは、お姫様と勇者の恋バナなんですけどね」
そういえば、吟遊詩人の周りにいるのは若い男女が多かった。どうやら詩の内容は勇者とお姫様のロマンスの様だった。
にぎやかな街を歩いていると、今度は勇者がドラゴンを倒す人形劇に子供たちが真剣に見入っていた。
「そういえば…」
セージは先ほどから気になったおかしな仮装をした子供達について聞いた。
竜をかたどったハリボテのお面や、ぐるぐる体に包帯を巻いた者、黒いマントや、とんがり帽子をかぶった子までいる。
「ああ、あれはですね、子供たちがモンスターの仮装をして各家庭を回り、「あばれちゃうぞ~~!」って言うとお菓子をくれるという。」
「そういえば現世でもあったなぁ、そんな風習…、確か…は、は…」
「はろーわーく?」
全然違った。
やがていつもの様に”りんご亭”に着き入り口をくぐると。
「いらっしゃいませ~」
すっかり看板娘となっているシズが、抜群の営業スマイルで出迎えてくれた。
が、
何かいつもと違う。
スカートがいつもより短い!。
胸元の露出が多い!!。
さらにネコミミ・シッポ装着である!!!。
「なんだ……?そのカッコ?」
「おお~~う、おシズちゃん何というエチエチネコミミメイドコスを!」
リーゼはさっそくステータスのカメラ機能で、画像を収める。
「うるさいわねえ、今日はこの格好していると時給が二割増しになるのよ!」
ムスッとしながらも、シズは可憐に回って言った。
「お~~い、アニキ~こっちこっち」
奥の席からすでに先に来ていたディックが手を振っていた。同じ席にはファウナもいた。
「さぁ今日はお祭りだぜ、飲んで食おうぜ~」
セージ達が席に着くと料理が運ばれてきた。ちなみにこの店はアルコール禁止だが、リーゼ以外飲まないので出全然問題なかった。
今日は店の中も大賑わいだった。まぁ、給仕たちの”コス”の効果も有るのだが。
「しかしお祭り好きな世界だよな、勇者とかって何百年も前の話なんだろう?」
「いえ、ほんの二・三十年前の話です 」
リーゼがさらりと答えた。
「意外と最近だな!?」
「ちなみにこの国の王様と王女様です。」




