狩人3
オリエンスの街の大通り。今日はいつもよりにぎやかだと思った。
お祭り好きな街である。いつも賑やかなのだが、セージは街を歩きながら、今日はいつにもまして街中がフワフワしている気がした。
「どうしたんですか?」
今日は隣にいるリーゼが声をかけてくる。
リーゼはなぜかセージの左腕にがっちりと腕を絡め、デカい胸をグイグイ押し付けてきていた。普通の健全な男子ならドキドキする展開なのだが、残念ながらセージはその辺、冷めていた。
「そっちこそ何なんだ?」
「いえ、セージさんには、かたーい男性の体より、女の子の体の方が柔らかくて気持ちイイという事を知っていただこうかと」
「お前はまた他人が聞いたら誤解されそうな事を…、あれ…」
セージは大通りの中に人だかりを見つけた。一瞬また死体かと思ったが、それとは違い歓声が上がっていた。
人だかりの中を覗いてみると、そこには鎧を着た二人が戦っていた。
いや、赤くトゲトゲした鎧を着た方が、地味な鎧の方を一方的になぶっているだけだった。
武装したオネエ紳士はトゲが付いている上にメラメラ燃えているウィップを自在に操り、男をシバきまくっていた。
一方的な蹂躙だが、見た目が派手なアクションなので遠巻きに眺めている野次馬たちは歓声を上げていた。
「あれは?」
「ああ、あれは”異界人狩り”ですよ」
「異界人狩り…」
聞き捨てならないワードに、セージは若干警戒しながら聞き返した。それを察したリーゼは
「ああ、違います。セージさんは関係ありませんよ。ええっと…、つまりですねえ…」
リーゼが言うには、異界人というのは冒険者よりも立場が難しいそうだ。
つまり、体一つ、何も持たずに大いなる夢だけを胸にこの街にやってくる冒険者志願の若者達も、この世界に帰る故郷もあれば家族も知人もいる。
だが異界人は違う。突然この世界に現れ、故郷も家族も知人さえいない。自分を知る者が誰一人いない世界…。
そう、何もしなければ存在していないのと同じなのだ。
この世界に来た異界人は大きく分けて二つになる。
一つは、神様からもらった力を過信して自滅するタイプ。
もう一つは、何もせずに宿屋に引きこもるタイプ。基本的には無害だが、引きこもられる宿屋はいい迷惑だ。だがお金を払っている内はまだいい。
この世界の現世よりも発達した技術、その一つが”電子マネー”だ。
宿屋でチェックインすると、一泊ごとに宿泊費が所持金から自動的に引き落とされていく。大変便利なシステムだが、神様からもらったお小遣いも無限ではない。
そしてこの世界には、後払いやローンも無い。
引き落とされる所持金がゼロになった瞬間、宿屋は異界人狩りに連絡、”御用!”となるのだ。
大通りの戦闘は大詰めに入った。
「さあフィナーレよ!」
派手なアクションでオネエ紳士はウィップを男の体に巻き付けると、引き寄せるように一気に引っ張た!。
「ぶぉぉぉぉぉぉ!!」
男は空中をコマのように回転しながらオネエ紳士の元へ引き寄せられる。
紳士は腕のデバイスを押し込む
『フルチャージ』
パワーが右足に集中する。
「バーニングクラッシュ」
ガァン!!
優雅にそして強力な回し蹴りが、男を鎧ごと打ち砕く!。
「ベヘッ!」
男はボロボロになって地面に転がった。
オネエ紳士は両手を上げて勝利ポーズをする。
「おおおおおおおお!!」
周りから歓声が上がり、ショーの終わりを告げた。




