狩人1
それから数日経った頃、宿屋の一室でそれは起こった。
――――― ケース 1 ―――――
オリエンスの街の、どこにでもある宿屋の一室、
ドンドン、
戸を叩く音がする。
「うるさいなぁ~、食事は入り口の前に置いておけって言ってあるだろう」
ここに泊まっている部屋の住人が、薄暗い部屋の中で面倒くさそうに言う。
ドンドンドン!
尚も戸を叩く音がする。
「うるさいって言ってるだろう!!」
バン!
中の住人が声を荒げたその時、ドアが勢い良く開かれた。
そこにいたのは、キチンとした身なりに、手にステッキを持った紳士風の男だった。
「あら、ごめんなさい」
男はオネエ言葉だった。ドアをあけ放つと遠慮なく中に入ってきた。
「な、なんだよ!勝手に入ってくるなよ!」
「残念ねえ~、ここはもうあなたの部屋じゃ無いのよ。宿泊費滞納で退去勧告が出ているわ」
「な、なんでだ何でそうなる!」
「ここはねえ、あなたのいた世界と違って、何もしなくても食事が出て、寝る所にも困らないほど甘い世界じゃないのよ。さあ、あなたの新しい居場所に案内してあげるわ」
オネエ紳士が手を差し出す。その手からは逆らえば容赦しないというオーラがにじみ出ていた。
「な、なんだよう!金が有ればいいんだろう!俺はこれから冒険してリッチになるんだ!」
「あら、ちょっと決断が遅かったわねえ。一か月ダラダラ飲み食いしてぷっくり太ったその体で言われても手遅れよ」
「う!うるさい!俺がこの一か月何もしてなかったと思うなよ。いつでも冒険に出られるように毎日素振り三百回を遣って鍛えていたのだ!」
男は剣を出して構えると飛び掛かった。
「残念ねえ、それと一日三百回だなんて…神様強化をしたのにその程度…」
オネエ紳士は杖を振り上げた。いや、杖と思われていた物は先に丸い鉄球がついた武器、モーニングスターだった。
「準備運動にすらなっていないのよ!」
ゴンッ!!
男の脳天にモーニングスターを振り下ろすと、 鈍い音とともにあっさりと男はこん倒した。
「はい、一人目」
―――――― ケース 2 ――――――
キーンキンキンキン!ガキーン!キーン!キーーーーン!
ザコ騎士A「くそ!なぜだ俺はレベル19なんだぞ!」
アキヨシ「ふっ、何がレベル19だ、俺はレベル99だぜ!」
ガキーン!ガキーン!ザシュー!ズバーーーーーッ!
ザコ騎士A「ぐわーーー!!」
アキヨシ「ふっ、他愛のない」
エミー「ありがとうアキヨシ!…あたし実は前からあなたの事が…」
アキヨシ「フッ」
ズチューーーー!ブチュ ブチュ ブチュ チューーーーー!グチョ レロ レロ レロ チューーーーー
「へ…へへ…」
「まぁ、言いたい事は想像できるけど擬音の使い過ぎねぇ、表現も何もあったもんじゃないわ~」
「な!なんだお前は!?」
突然横合いから、ステータスの中のメモ機能を利用して書いていた”なろう小説の”の感想を言われ男は慌てて飛び退いた。
ここはオリエンスの街の一角にある宿屋の一室、男はここで日がな一日、妄想小説の執筆にいそしんでいた。
「残念、妄想じゃなくてリアルな冒険に出ればよかったのに…。タイムリミットよ、あなたの新しい場所に案内してあげるわ」
オネエ紳士は手を差し出すが、男の反応は決まって同じ。
「い、行くわけ無いだろ俺はこれから冒険に出て英雄になるんだから」
男は両手を広げ呪文を唱えた。すると右掌に炎の塊、左掌に渦巻く風の塊が現れた。
「ふははは!見たか!俺だって遊んでいたわけじゃ無いぞ!こうやって冒険に出るために魔法の腕を磨いていたんだ!これは俺のオリジナルの魔法で異なる属性の魔法を組み合わせることによって通常の何倍にも………!」
「エア・インパクト」
オネエ紳士はさらりと、空気の塊を打ち出す魔法を男の右手に向かって放った。
ドォォォォォン!!
たちまち、右手に持っていた炎が誘爆し、男の右手首を吹き飛ばした!
「ぎゃゃゃゃゃあ!!腕がぁ!腕がぁ!」
ゴロゴロとのたうち回る男にオネエ紳士が近づいていく。
「バカねえ…、その程度の事、魔法覚えたての子供だって思いつくわよ」
オネエ紳士はゆっくりとモーニングスターを振り下ろした。




