異世界の不思議 1
ダンジョンの街オリエンス。入り組んだ道をディックはセージを連れて歩いていた。
「アニキ~こっちこっち、いいトコ連れってやるからさ~」
半信半疑ながら、セージは迷いなく歩くディックの後をついて行った。
やがて路地裏を抜けると、急ににぎやかな場所に出た。
そこは表の繁華街とは違い、何もかもがごちゃ混ぜになったような不思議な通りだった。
セージは、戦後の闇市を連想した。
「ここは何だ?」
「いいから、いいから」
言われるがまま、雑多な建物の脇に下へと延びる階段を下りて行った。
「あれは?」
突き当りの入り口に、現世では見慣れた、”のれん”の様な物がかかっていた。ディックは迷わず中に入ると、セージもそれに続いた。
「いらっしゃい」
中には白い服を着た渋い板前さんがいた。二人はカウンターに座ると。
「俺はキツネ一つ」
「じゃあ俺も…」
流されるまま同じものを頼むとやがて、目の前に白いどんぶりが置かれた。
琥珀色のスープの中に白くて細い具、そして上に乗っている黄金色の…、
「うどんだ…」
うどんだった、それもきつねうどん。
食べてみると、腰のある麵と、ダシのしみた油揚げ、カツオとはちょっと違うが魚介の出汁のしみたつゆ。
「しょうゆ!?」
「店の裏手にあるのが醤油屋で、二軒隣が豆腐屋だよ」
店主らしい板前さんが説明してくれた。
「え~~!?」
「そう、ここは質を問わなきゃ何でもそろう!この街のディープスポット。異界人街さ!」
異界人といっても、オタクやゲーマーばかりでは無い。
半分ほどは普通の人で、この世界で生前やりたかった事を実現させた者が殆どだった。しかもオタクやゲーマーよりも実行力が有るので、皆、夢をかなえていた。
そんな人達が集まったのが異界人街だった。
「こちらの店主のゲンさんは生前、脱サラしたらうどん屋を開くのが夢だったそうだよ」
「お恥ずかしい」と店主が言う。冒険者稼業でお金をため、うどん打ちの修行をして、数年前にオープンしたそうだ。
「あんた、ネギここに置いとくよ」
厨房の奥から、金髪で耳の長い奇麗なお姉さんが、切ったねぎの入ったざるを置いて行った。
「誰?…」
セージが思わず聞いた。
「あっしの家内でさぁ」
店主が照れながら言った。冒険者時代に知り合って、そのままゴールインしたそうだ。
「異世界、満喫してるね…」




