包囲
その、黒フードは静かに闇の中に立っていた。手にした弓から彼が敵意を持って狙撃手を狙った事は明白だろう…。
――先に動いた方が殺られる!―-
狙撃手はそう感じた。何の根拠もなく、…だが、
ダッツ!
黒フードが先に動いた!真っすぐに狙撃手に突っ込んでくる。
――まだ距離がある!――
狙撃手が腰のホルスターに手を伸ばそうとしたとき!
「ぐぁぁぁぁ!」
狙撃手が悲鳴を上げる!銃を抜くより早く黒フードが放った矢が手の甲を貫いたのだ。
「やめときなって、…ったく、せっかくのファンタジー世界だってのに無粋なオモチャを持ち込みやがって…」
黒フードは落ちた銃を拾いながら、意外と軽い声で言った。
何とか立ち上がり、ヨロヨロと間合いを取ろうとすると、そこにセージ達が駆けて来た。
狙撃手の血の気が引く、―-なぜわかった?!―-偶然か?それとも何かの特殊スキルか?脳をフル回転させる。
セージ達は、単純にあの塔の開いていたドアの方向に走ってきただけだった。
だが狙撃手は思う。―-待てよ、今ならこっちの黒フードを犯人に仕立て上げられるのでは?―-どう見たってあっちの方が怪しい、うまく立ち回ればこのピンチを切り抜けられるのでは?などと考えていると…。
「セージさん二人いるけどどっちでしょうか?」
駆けながらリーゼが聞いてくる。
「決まってる!汚い方だ!」
セージは狙撃手を指差し即答した。あのぶっ壊れた塔からうまく逃げ出したとしても爆風で土埃はかぶっているはずだ。
黒フードとセージ達は、狙撃手を挟む形となった。
「さっすが兄さん達、わかってるね~」
黒フードは勢いよくフードを取り払った。
「やっぱりお前かよ…、ディック!」
そこには、昼間会った金髪の少年が悪びれもせず立っていた。
そして狙撃手の正体は、昼間会った銃オタクだった…。
「まぁ…、言いたい事は山ほどあるがまずはこっちだな」
セージは刀を抜くと銃オタの前に立つ。銃オタは追い詰められた。
「な、なんだよ!俺はこの街の悪党を退治していたんだ!悪い事などしていない!」
そう言いつつも壁に追い込まれた銃オタの言っている事は言い訳にしか聞こえない。
「だがそれは、お前の勝手な判断で行う事では無いな!」
セージは、びしっと糾弾する。
「そうだぜ、どんな理由が有ろうとも、遊びで人を殺しちゃあいけない」
ディックが横に並び言う。
銃オタはそっと手を回すと、何もない空間から拳銃が現れ素早くそれをつかむとセージ達に向け…!
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
ディックはそれよりも早く矢を放つと、再び銃オタの手の甲を貫いた。
「やめときなって、知識だけのオタクが実戦で何が出来るんだよ」
「だ、黙れ!俺は銃なら誰にも負けない! 銃さえ有ればこの世界でトップが取れるんだ!」
「オレ、アメコミじゃあホークアイかグリーンアローが好きなんだよね、己の技能だけで戦う。いいよねぇ~。…だから異世界来たらやっぱ、弓でしょう。だめだよ銃なんてズルしちゃあ」
ディックは拾った銃を空中に放り投げると、素早い動作で矢を放ち、銃を空中で破壊した。
セージ達は思わず拍手をした。
「嫌だ!銃は…俺の銃なんだ~!」
銃オタは意味不明なことを言って暴れ出した。




