見回り
夜、繁華街からちょっと離れた、薄暗い路地裏。
勢いで通り魔探しを買って出たセージ達であったが。
「さて、どうしたもんか…」
ノープランだった…
何も考えていなかった、それはそうだろう、何せ情報何もないのだし。出来るのはせいぜい夜の見回りくらいだろうか。いきなり途方に暮れた。
「ふっふっふ、心配には及びません。ここは働き者の私がちゃんと調べてきました。」
リーゼがいつになくドヤ顔で、ステータスウインドを開くと、資料を出した。
「えーと、ですね、まず最初の被害者と思われる人ですけど…」
思われるというのは、具体的に特定されていないという事だ。それによると、最初の被害者は、ギルドから手配書も出ている、札付きの悪党だったらしい。
次の被害者は手配書は出ていないものの、悪党ではあった。だがその後、徐々に普段から素行の悪い物、殺害される前にケンカをしていた。酒に酔って絡んでいたなど、動機にみるみる計画性が無くなって行った。
「そこで私は、一つの作戦を思いつきました」
「よし聞こう」
「つまり通り魔は手前勝手な正義感で相手を裁く、自称義賊なわけです。なので効果的なのはおとり作戦です」
「なるほど」
そして、リーゼは自信たっぷりに路地裏を指差すと
「あそこに私を連れ込んで、無理やり犯せばいいんですよ!ケダモノのように」
「いやダメだろ!それ!」
セージは慌てて否定した。犯罪者にする気だ。
「だめですか?仕方ありませんねぇそれでは代わりにファウさんを提供しましょう。どうです?私より犯罪率が上がりますよ?」
「上げるなよ!お前は俺をどうやっても犯罪者にする気か?」
「大丈夫ですって、どうせ犯人は素人童貞ですから。きっと、事が終わるまで陰でこそこそ見ているだけで安全すから」
ファウナは身の危険を感じて、壁に張り付いてガタガタ震えていた。
「分かりました。セージさん一人を犯罪者にはさせません!こうなったら私も協力します!二人がかりでファウさんに、あんな事や、こんな事を…」
リーゼの目が座っている。本気でやりそうな目だ。
「だから、そっちから離れろって!見ろ!ファウナが青い顔で首をプルプル降ってるじゃないか!」
「えー、いい考えだと思ったのに~」
「性犯罪はダメ!」
「いい考えだと思ったのに~… じゃあつまんないけど、これでどうですか?」
セージも、さすがに自分に何の案も無いのに、相手の案を否定してばかりではよくない。次は真面目に聞こうと覚悟を決めると
「その辺を歩いている人にてきとーに声を掛け」
「フム」
「路地裏に連れ込み」
「なるほど」
「ぶん殴ります」
「却下!」
「え~~~」
「何やってるのよ…」
セージがリーゼのこめかみをグリグリしていると、突然話しかけてきたのはシズだった。何だかイチャついている様にしか見えないセージ達に少々不機嫌そうだ。
シズはいつもの着物風の衣装で、ベルトで吊るした刀を左肩に、右肩には例の白い子竜を乗せていた。
「静…、肩のトカゲは何だ?」
セージは、ごまかすように数日前からシズの肩にいるドラゴンの子供について聞いた。
「トカゲじゃない、竜よ、名前はシロ」
伝説級のSクラスモンスターは、まるで犬の様に飼われていた。
「大体あなた達はねぇ……」
心配して様子を見に来たシズだったが、説教が始まった。
「きやぁぁぁぁぁ!」
突然シズが悲鳴を上げた!後ろからリーゼが彼女の”ムネ”をもみ出したのである。
「ち、ちょっと放しなさい!」
「へへへへ~、良いではないか!良いではないか!」
必死に放そうとするが、絡みついたリーゼはなかなか離れない。セージとファウナはしばし傍観するしかなかった。
だがその時、
シュッツ!
何処からともなく一本のナイフが飛んできた。
「くっ!」
セージは鞘に収まったままの刀でそれを弾いた。
ナイフが飛んできた方向を見るとそこには、闇の中に黒いフードをかぶった人影が立っていた。
「「「来ちゃった!」」」




