闇
戦いは終わった。だが、それはまだ始まり、
人通りの少ない薄暗い路地裏の一角で、サードは一人うずくまって震えていた。
その姿にかつてイケメンを気取っていた時の面影は微塵もなく、身体はミイラの様に痩せ細り、しわくちゃの顔にはかつてのイケメンマスクの破片がわずかばかり張り付いていた。
「ちくしょう、ちくしょう」
怨念の様に同じ言葉を繰り返しながら、どうしてこうなったのか考えていた。失敗するはずなど無かった、この世界での人生プランに間違いは無かったはずだ、何処で間違った?そればかりを考える。
「おやおや、ざ~んねん、失敗してしまったようですねぇ」
いつの間に現れたのか、あの鋼鉄のピエロが目の前に立っていた。中の顔は分からないがピエロの仮面は彼をあざ笑う様に笑っていた。
サードの理不尽な怒りの矛先がピエロに向く
「うるさい!お前のせいで、こうなったんだぞ!!使えない物よこしやがって!責任取れ!元に戻せ!今すぐに!」
ありったけの感情をぶちまけて口汚くののしるが、ピエロは聞いているのか、いないのか軽くうなずくと、
「仕方がありません、要らないというのなら……」
サードに一瞬悪寒が走る。
「その魔石、返していただきましょう」
ピエロが彼の額の魔石に手をかざすと、淡い光を放ちだし額から離れようとする。だが、それは頭の中に張り巡らせた根っこを引き抜かれる様な激痛を彼に与えた。
「ぎゅぉおオオ~~!!」
激痛に悲鳴を上げるが、ピエロは涼しい顔で、
「おやおや、要らないのでしょう?」
「た、たすけてぇ~~~」
涙を流しながら懇願するが、聞き届けてくれない。
だがその時、
カッツ!!
ピエロが後ろへ飛び退くと同時に目の前に矢が刺さる。
「何奴!?」
ピエロは狙撃手を探そうと、辺りを見回すが、それよりも早く2撃目がピエロを襲う!
更に矢が放たれる。ピエロは踊る様にかわしていくが、サードとの距離が開いていく、まるで彼から引き離すように……、
逃げるには今しかない!サードはこのチャンスに意を決し、物陰から飛び出した!
だがその瞬間…、
ガッツ!!
放たれた矢により、彼の頭部は魔石ごと砕かれていた。
糸が切れたマリオネットの様に彼の体が崩れ落ちた。
「おのれ、何という事を、せっかくの魔石を~~」
ピエロは物陰に溶け込むように姿を消した。
カーン、カーン……
石畳の上に、乾いた金属音の足音が響く……
大きく張り出した肩、背中の巨大な背負い物、およそ人が使うには異形ともいえるその姿は、新たなるドラグギアの姿だった。




