異世界転生の男たち
喫茶店で楽しくお喋りする二人にナンパの魔の手が…
「…で、あるから”ロリ”とは永遠のロマンであり我々が追い求める永遠のテーマなのでござる」
「左様、我々は誰にも迷惑を掛けずにこの世界で第二の人生を謳歌するいわば”ロンリーナイト”」
テラスの隅の方に陣取りながらメガネとチビはひたすら喋りまくり、デブはひたすら運ばれたスイーツを食べ続け、サイトは”自分は関係ない”と心で唱えながら、中央のテーブルで語らうシズとファウナを眺めていた。
そして、その席を挟んで反対側のテーブルにまた、二人を見つめる一人の男がいた。
見た目17~8歳、切れ長の目に、整った顔立ち、美形だった。
彼の名はサード。
――やれやれ、家に居たはずなのに、気づいたらゲームの様な異世界……。だがいいさ、俺はこの世界で登り続けさ――
彼はRPGが得意だったRPGは彼の得意分野だった。そして今の彼には神様から貰ったこの”美顔”が有る。
まずはRPGらしくパーティの仲間集めだった。
そして自分にふさわしい仲間を探していた彼の目に留まったのが、魔法使いと剣士の格好をした美少女二人だった。
「さて……」
サードはゆっくりと立ち上がる。
手段は単純だった。声を掛ければいい、セリフは簡単だ、
「すいません、俺はこの街に来たばかりなのですが、冒険者ギルドへの場所を教えてくれませんか?」
紳士的に声を掛ければ、少女二人は頬を赤らめながらこう言うだろう。
「私たちもこれからギルドへ向かう所なのでよかったら案内しますわ」
そしてギルドで無事、冒険者登録を終えた所で彼女達からパーティに誘われるはずだ。
そしていざダンジョンに。
突如現れるSランクモンスターになすすべも無く絶望する彼女達!だが豊富なゲーム知識を持つ俺の敵ではない!モンスターをあっさり倒すと、彼女達の信頼度はMAXに!そしていずれは屋敷を買って彼女たちと面白おかしく暮らす。
完璧な人生設計だった。
サードはゆっくりと席を立つと計画を実行すべく彼女達へと近づいた……。
『大丈夫だ……。軽く声を掛けるだけで全て上手く行く……』そう自分に言い聞かせゆっくりと近付く。
鼻息荒く…そしていざ声を掛ける距離まで近づいた時。
「へ~い、お嬢さんたち~、良かったらおいらとお茶しない~?」
そう言って軽い口調で声を掛けたのは、サードの前に突然現れた見た目12~3歳くらいの少年だった。
「見てたぜこの前の開門祭、その年でまるで長年武術を究めた達人みたいだったねぇ、姉さんたちタダ物じゃないだろぅ?」
「そう言う坊やも、タダ物じゃぁ無さそうだな」
ファウナは少年を見上げながらそう返した。異界人は外見と中身は一致しない事が多い、実際、横にいる十六歳の美少女も実年齢九十歳である。
「俺かい?俺はただの美少年だよ」
少年は人懐っこい笑みを浮かべて軽く返した。
三人が談笑する中、一人取り残されたのがセカンドである。声を掛けるタイミングを失いしばらくぼ~っと突っ立って居たが、我を取り戻した。
今の彼は、外界を拒絶し、家でひたすらゲームをしていた引きこもりのかつての自分では無い。
「すまないがちょっといいかい?」
サードは少年を押しのけるとファウナとシズの前に出た。近くで見る二人は間違いなく美少女だった、特にシズの大きな胸と短いスカートから覗く健康的な太ももには年頃の男子ならだれでも目が言った。
この二人がこれから自分の物になるのかと思うと内心、心臓がバクバクしたが、それを抑え、努めて冷静に話しかけた。
「お嬢さん方、すまないがギルドまでの道を教えてくれないかい?」
サードは計画通り出来る限りの決め顔で話しかけた。これで少女達はイチコロのハズだ。
だが、少女二人は何故か怪訝な顔をしていた。
少年が代わりに答える。
「あー……、坊や一つ良い言葉を教えてあげよう。確かに”顔は親から貰うものだが、表情は自分で作る物”だぜ」
「??……」
少年の言葉は、サードにはさっぱり意味が分からなかった。
「つまりだね、せっかくの美男子もそんなスケベ丸出しで鼻の下を伸ばしていちゃ、女の子は逃げていくぜ。後その寝癖も直しな」
サードは慌てて頭を押さえた!元の世界ではずっと引きこもってゲームばかりしていた彼に、身だしなみを整えるという習慣は無かった。
「ギルドに行きたいのなら、ほら、そこにあるぞ」
ファウナはサードの後ろを指差す。ここは街の中央広場、ギルドはすぐ近くにあった。彼の計画は数秒で破綻した。
「良かったな坊や、だがまず身だしなみを整える事をお勧めするぜ。その上で坊やに会った分相応の仲間を見つけるんだな」
「!!、この!」
少年の軽口にサードはカッとなって掴みかかった!生意気な子供一人つまみ出すなど神様強化された彼には造作も無い事だった。……だが
シュッツ!!
少年を掴もうとした手は逆につかまれ、気付く間もなくサードの体は宙を舞っていた。そのまま受け身も取れずに後ろのテーブルに激突した。
一瞬気を失ったサードが気づいた時、彼は大股を開けて倒れたテーブルの前でひっくり返っていた。
何が起きたか理解できなかったが、自分が情けない恰好で注目されている事は即座に理解出来た。
聞こえない筈の声が彼の頭に響く、『何あれカッコ悪い』『見掛け倒し』『カッコいいのは外見だけかよ』
誰もそんな事は言っていないのに彼の中の被害妄想がMAXになる。
「うああああああ!!~~」
サードは勢いよく飛びあがると脱兎のごとくその場から逃げ出していった。
ファウナとシズは黙ってそれを見送った。
「じゃ~なお嬢さんたち、縁があったらまた会おうぜ~」
いつの間にかテラスの外に出ていた少年は手をひらひらと降りながら何処えともなく行ってしまった。ファウナとシズは黙ってそれを見送った。




