武装
囚われのリーゼに襲いかかる骸骨騎士、セージは間に合うのか?
暗い暗い闇の中に少女は居た。
一体何時からそこに居るのか、何故そこに居るのか思い出す事も出来ない。ただ少女はその暗闇に何日も何日も閉じ込められ、食べ物も与えられず、存在を忘れたかのようにほったらかしにされ、体はやつれはて、ただそこで死を待つばかりだった……。
突然扉が開き、昼か夜かも忘れた世界に光が差した。
そこに立っていたのは少女だった……、特徴的なとんがり帽子と黒マントを羽織り、杖を持った少女がそこにいた。
「ん?子供か?さらわれて来たのか、おい生きてるか?」
とんがり帽子の少女はさして興味も無さそうに倒れている少女に問うた。
「た……、助けて……」
少女は最後の力を振り絞ってかすれる声を出した。
「そうか、だが私はまだする事があってな、盗賊もまだ残ってるし、出口までの扉は空いている、外まで出れたら助けてやろう」
それがファウナとの出会いだった。
暗い暗い闇の中にリーゼは居た。手足を広げて冷たい石畳に横たわり、朦朧とした意識の中昔、昔の事ばかり考えていた。
――ああ……そういえばファウさんに会ったのもこんな場所だっけ……
周りは暗くおまけに狭い通路だ。体が重く、頭がくらくらする。リーゼにとっては最悪のコンデションだった。
リーゼの上には馬乗りになった骸骨が、盛りの付いた犬の様に一人で腰を振りながら何か言っている。
「これでヒロインはワァタ~しの物です!これからはワァタ~しの言う事だけ!を聞いてワァタ~しの為だけに生きるので~~っス」
やけに興奮した口調で一人でまくしたてる。骸骨顔でもエロイことしか考えていないのはよくわかった。
――セージさん助けに来てくれるかな?……ここは何処だろう……?
そんな事を考えながらそれが難しいことは理解出来た。今、自分が複雑なダンジョンのどこに居るか分からない。あれからセージがすぐに後を追っても早くても数時間、下手をすれば数日かもしれない。
「ウォ~ホッホッツ!これからはボックの言う事だけを聞いていればいいので~~すそして気も心も……ウホッツ」
もはや何を言っているのか分からないが、骸骨男はだらしなく口を開けたままリーゼの太ももに手を這わそうとした。その時、
「光よ!」
その声と共にリーゼたちの周りに、コロンコロンと何か小石が転がる音がした。瞬間!その魔石達が一斉に光りだして辺りを明るく照らした。
「セージさぁん……」
そこには肩で息をしながらセージが立っていた。
「よぉ」
「キィサッマ~~!!どうしてココにぃ~~」
ありえないタイミングでの登場に骸骨男は動揺を隠しきれない。
「ああ、知らなかったのかい?仲間同士はこうやってお互いの位置がわかるんだぜ」
セージはステータスウインドのマップの光る点を二つ指さしながら、昨日おぼえたての知識を披露した。
「んな~~!!」
パーティどころか知り合いも居ない骸骨には酷な話だった。
「さぁ!リーゼを返してもらおうか!」
セージは刀の切っ先を骸骨に向けて言った。だがそれを見た骸骨がニタ~と笑いながら
「なんですかその刀は?そんなもので勝てるとでも思っているのですか?」
セージの刀は先の戦いで真っ二つに折れ、さらにその後の戦いで刃こぼれまでしてボロボロだった。
「ん?ああ……そうだな」
セージはあっけなくそれを認め
「さすがにこれで勝てる気はしないな」
と、刀をあっさりと鞘に納めた。骸骨は嬉しそうに「そうでしょう。そうでしょう」とうなずいている。
だがセージは口元だけクスリと笑うと、「だからさ…」
「使わせてもらう事にしたぜ……」
そう言うとセージは、左手を前に突き出した。
「そ、ソレハ~~!!」
その手にはサークレットデバイスが握られていた。そして右手に持っていたドラゴンドロップを中央にはめる。
セージは、手を高く上げ、何処までが発動のキーになってるか分からなない為、加藤のポーズをそのまま真似てみたのだが、加藤のタコ踊りはキレッキレの変身ポーズへと昇華した。
「武装!!」
その声と共に、セージの周りに金属の鎧が現れ体に装着されていく。だが、加藤と決定的に違うのは鎧の出現と同時に背後にドラゴンが現れたことだ。サイズこそ大分縮んではいるがセージ達が倒した”あの”レッドドラゴンだ。
そのドラゴンは鎧を装着したセージの背にいきなり火を噴いた!炎を受けセージの鎧はみるみる赤く染まる!
そして一吹き終わったドラゴンは、そのまま何事も無い様に体を折りたたむとセージの背後にドッキングした。
シュゥゥゥゥゥゥ……
全身から煙絵を上げ、鎧を着たセージは動かなかった……。
それは鎧と言うには余りにも異質だった。炎で焼かれた鎧は真紅に染まり、形は日本鎧風に変化し各部がナイフの様に突き出している。そして背にはドラゴンが変形したバックパックに蛇腹状のアーマーが左右に突き出たアームに固定され、中央には二本の尻尾状のパーツ垂れ下がっていた。明らかに重量過多である。
「ぷっつ、クククク……、ア~~ハッハッ~~!。一瞬、ちょ~~とカッコイイかも~とか思ってしまいましたが、な~~んですか?その不格好な鎧は~~?。そもそも鎧と言うものは~~……、ゲフッツ!!!」
自分の事を棚上げして、得意顔で鎧うんちくを語り始めた骸骨男の顔面に、突然セージの左拳がめり込んだ!!
「ぐぼ~~~~~!!」
一瞬にして骸骨男はダンジョンの奥へと吹き飛んで行った。目の前で見ていたリーゼにも、一瞬にして骸骨とセージが入れ替わった様にしか見えなかった。
「セージ……さん?」
骸骨がセージに変わったとは思わないが、リーゼは恐る恐る声を掛ける。セージは自分の各部を確かめる様に体を動かし
「なるほどな、確かにこれは調子にも乗るな」
少し間合いを詰めるつもりが、目の前に来てしまったのでどついたら吹き飛んでしまった。想像以上に戦闘力が上がっていた。
「よく頑張ったな」
そう言うとセージは、囚われの姫を助けに来た騎士の様にリーゼを抱きかかえた。
「まずはここを出るぞ」
そしてそのまま来た道を一気に駆け抜ける。
「セ、セージさん?」
暗がりを迷いなく走るセージにリーゼが聞いた。
「俺がどうやってここに来たと思う?」
確かにこのダンジョンの底にセージは来るのは早すぎた。だがその疑問はすぐに溶けた。
突然開けた場所に出た。石の回廊は無くなり大地がむき出しになっている。天井も高く、ずっと上の方に薄っすらと外の明かりも見える。
「たぶん地震か何かで切り開かれたんだろう」
よく見ると絶壁の至る所にダンジョンの通路が突き出している。おそらくセージはこの通路の一つから下に向かって駆け下りてきたのだろう。
「種明かしも終わったし脱出するぞ」
そう言うとセージはリーゼを抱えたままとんだ。
背中のスラスターがそれを補助し一気に十メートルほど飛び上がった。




