森の中のダンジョン
奈落の底に落ちていく二人、暗闇でセージが目覚めると
暗闇の中セージは目を覚ました。
目を開けても周りは暗く何も見えない、セージは思考を巡らせた。
――あれからどれ位経った?――ここは何処だ?――
置かれた状態を確認する。
――今、横になって寝ているのは分かった――背中には冷たい感触……石の床だろう――頭は、何か柔らかい……暖かい物の上に乗っている――
ようやく暗闇に目が慣れてくると、目の前の大きな胸の上にリーゼの顔があった。どうやらまたリーゼに膝枕されていたらしい。
「よかった~~」
セージの安否を確認するとリーゼはホッとした声で言った。
「大丈夫ですか?体は何ともありませんか?骨、折れたんですよ、あばらとか足とか」
セージは起き上がると体の節々を触って怪我の有無を確認した。
何処も痛くない。たぶんリーゼが治してくれたんだろう。そしてようやく暗闇に慣れた目で周囲を確認すると、今居るのは四角い石の部屋の様だった。前後に入り口が有る。が、片方は土砂で潰れていた。多分あそこから押し出されてきたのだろう、運が悪ければ土の中だっただろう……。
「よし、身体は何ともない。どうやら助けられたみたいだな」
「助けられたのはこっちですよ、セージさんが抱えてくれたおかげで私、無傷だったんですから」
セージはもう一度周囲を確認する。多分ここが探していたダンジョンなのだろう。となれば外に出て皆と合流すべきだろう。
「よし、ひとまず出口を探すぞ」
セージはリーゼを起こそうと手を差し出したが、リーゼはどういう訳かその手を取らずに床に腰を落としたままじっとしていた。
「……?どうした?」
「え……と、ですね……」
数分後、ダンジョンの中をセージはリーゼを背負い歩いていた。リーゼの魔法の明かりを頼りに暗く狭い回廊を進む、
「暗い所が駄目ならそう言えよ」
「あははは……ちょっとタイミングが合わなくて」
リーゼは以外にも暗所閉所恐怖症だった。
「オリエンスのダンジョンは平気そうに見えたが?」
「あそこはいいですねぇ、広いし明るいし……」
「なるほど」
「これでも初めの頃は大変だったんですよ、入り口で何度吐いた事か、」
「頼むから俺の背中には吐くなよ」
・ ・ ・
「まぁ……、気持ちはわかるよ、俺もそうだったからな」
「セージさんもですか?」
「昔な、戦争に行った時……、爆弾に吹き飛ばされて、気が付いたら薄暗い洞窟の中だった。右手は無くなってて、ろくな麻酔も無く何日も何日も激痛に苦しみ続け……このまま死んでしまえばどんなに楽かとも思ったよ」
「どうしてそうしなかったんですか?」
「……待ってる人がいたからな」
少し言いよどんでからセージは答えた。それがシズの事だという事はリーゼもだいたい分かった。
「戦争が終わっても、明かりを消すたびにその時のことを思い出してなぁ……。克服するのにはだいぶん苦労したよ」
そう話をしながら歩いていると、セージはゆっくりとリーゼを下ろした。
「セージさん……?」
突然の行動にリーゼは壁にもたれながらセージに尋ねる。
「敵だ。明かりを持って、しばらくそこでじっとしていろ」
リーゼは手にした丸い光球を通路の奥にかざして見るがまだ何も見えない。
「見えるんですか?」
「見えはしないが、気配で分かる。トラウマを克服するために色々やったからな」
やがて、回廊の向こう側に影が浮かび上がる。子供くらいの体格に年寄りの様な猫背、そしてモンスターの特徴である甲殻類の様な外骨格、ゴブリンが現れた。
セージは刀を抜く。が、モンスターを数十体切っても刃こぼれ一つしなかったセージの刀は見事に真っ二つになっていた。
「セージさんそれ!」
「ああ、狭い場所だからな、短くなって丁度いい!」
そう言うとセージはゴブリンに向かって行った。短くなった刀を短剣の様に使いゴブリンを切り裂く。
達人は武器を選ばなかった。同じように次々とゴブリンを駆逐していく。
「きゃぁぁ!」
突然の悲鳴に振り向くと、リーゼが骸骨男に羽交い絞めにされていた。
「お前は!」
「ホ~ホッホ!ヒロインはワタシの物で~ス!!お前はゴブリンと遊んでイレバイイのデ~~す!!」
そう言うとリーゼを抱えたまま床を突き破り下の階層へ消えて行った。
ご丁寧にあけた穴を塞いで。
「しまった!」
慌てて駆けよるが塞いだ穴は固く埋められている。同じ穴からの追跡は無理だろう。
しばし途方に暮れるセージにゴブリンが襲い掛かった。




