骸骨の騎士
一方、冒険者達とモンスターの戦いは続く
ビッグベア、大型のクマ型のモンスターである。
と言ってもカタチがクマに似ているだけで、その皮膚には体毛の一つもなく、代わりに全身を覆う鎧そのものが皮膚であり、腕には普通の熊には無い長いナイフの様な爪が生えている凶暴なモンスターであった。
[はぁぁぁ!!」
セージは真っ直ぐにビッグベアに突っ込むと、その鋭い爪をすり抜けその右腕を一気に切り飛ばした。
「隊長!」
「おうっ!」
今度はギムレットが大剣を構えビッグベアの空いた右側に突っ込んでいく。
「剣よ炎を纏え!」
大剣の柄にはめ込まれた魔石が光を放ち、剣がオレンジ色の光を帯びる。
「はぁあ!」
大剣を振り下ろすとビッグベアの首が吹き飛んだ!
「おおっ、凄いな」
セージはギムレットの剣と魔法の複合技に関しながら言った。辺りを見渡せば大物を倒したことで、ほとんどの魔物は一掃された様だった。
「じゃぁ、俺はリーゼの所に行くから」
「おう、気を付けてな」
大丈夫とは思ったが、まだモンスターが居ないとも限らないのでセージは足早にリーゼの所へ向かった。
そのころ……。
「オウ!ワァタ~ㇱの事を心配してくれるアナタはまさしくワタシのマイヒロイン!。さぁ!愛し合いましょう!!」
リーゼに覆いかぶさりながら骸骨男がハァハァしながら言う。
「強引なのは嫌いじゃないですが!ガイコツはノーサンキューです!」
まるで盛りの付いた野犬に襲われてる気分だったが、状況は悪い。唇の代わりに歯をガチガチさせながら、リーゼにキスを迫ろうとする。必死に抵抗しようとするが、仰向けに倒されて両腕を押さえつけられ身動きが取れない。
「グへへへへへ!」
「うきゃ~!」
ゴスッ!!
突然、側頭部を弾丸の様な物で突き飛ばされ、骸骨男は横に転がって行った。
リーゼは仰向けのまま目を開けると、そこには刀の柄で骸骨男を突き飛ばしたセージが居た。
「セ~ジさぁん」
リーゼは目をウルウルさせながら言った。
「大丈夫か?まだモンスターが居たとはな。で、加藤は?」
「え~と、たぶんあれです」
リーゼは頭を押さえながらゴロゴロのた打ち回っている骸骨男を指差した。
「え!?あれ?」
よく見ると確かに鎧の形とかはそんなんだった気がする。でも骸骨だ。
「い、いめちぇん・とか言うやつか?」
「違うと思います」
その時、骸骨男が飛び起きた。
「よぉ~くもやってくれましたねぇ、このチィート野郎!だぁ~がお前がどんなにチィ~トを駆使しようとも、このワァタㇱの新たなチィ~トの前では、どんなチィ~トも無力!なぜならワァタシはチィ~トの中のチィ~ト!」
骸骨は手足をじたばたしながら語りだした。
「さっきからち~・ち~何を言ってるんだ?」
「”チート”セージさんの世界の言葉で”インチキ”って意味だそうですよ」
リーゼが横から補足するが、セージには初耳だった。
「インチキ……、インチキをを誇っているのか?おまけに自分のインチキは良くて相手はダメって…」
セージは呆れた、完全に思考がおかしい。あの姿になったせいだろうか?
「おいっ自分が今どんな状態かわかっているのか?」
「?何の事でぇすか?」
セージの質問に骸骨男が首をかしげる。
やはりわかっていない様だった。リーゼは手鏡を骸骨の前に放り投げる。骸骨はそれを拾い自分の顔を見る、そこに映ったのは神様からもらったイケメン顔ではなく肉も皮も無いドクロだった。さすがに一瞬”ビクッ”と驚いたようだが、さらにじ~と眺めながら。小刻みに震えだした。
「分かったか?現実が」
と、セージは聞くが帰ってきた答えは予想外の物だった
「かっけ~……」
「へ?」
「骸骨騎士かっけ~」
なんだか鏡をまじまじと見ながら骸骨なのに頬を赤らめ、喜んでいる様だった。
「やっぱり異界人は変!」
「とにかく、そうだな、知り合いに魔法使いがいるから元に戻る方法が無いか聞いてみよう」
「魔法使い……」
骸骨は魔法使いというワードに反応した。そしてまたナナメな答えを返してきた。
「……カワイイ?」
骸骨男は予想外の質問を返してきた。しかも性別など言っていないのに彼の中では女の子で決定している様だった。
骸骨を刺激しないようにセージは少し考えてみる、――客観的に、確かに、言動と行動と格好もおかしい奴だが……、たぶん……
何処かでファウナがくしゃみをした。
「カワイイ……と思うぞ……たぶん」
「な~に言ってるんですか。ファウさんはすごくかわいいですよ。ほらっ」
頼んでもいないのにリーゼが食いついてきた。そして自分の画像データから一枚の写真を手の上で投影して見せる。
その写真には、何故か風呂上りにバスタオルがはだけて慌てているファウナの姿が写っていた。
「おいコラ」
そして骸骨が理不尽な怒りを爆発させた。
「お~のれぇぇぇ~~~!!カワイイ子を二人も囲いやがって~~~!このチィ~ト野郎!!そしてその写真下さ~~~~~~い!!」
骸骨男は鼻血を吹き出しながら言った。
――「うひぃ!」
何処かでファウナは背筋に悪寒を感じた。
もはや言葉の通じない骸骨は、意味不明な言葉を発しながら大剣を抜き襲い掛かった。セージはリーゼを庇いながらそれをかわす。大剣は地面を叩き割る勢いで地に刺さった。
「もう、話し合う気は無いかっ!」
「話すことなどアリマセ~~ん!!悪は滅びなさ~~~い!!」
セージは刀を抜いた。骸骨男は大剣を短剣の様に軽々と振り回し襲ってくる。一撃でも当たればセージの体は真っ二つか吹き飛ばされるか、どちらにしろタダでは済まない。だがセージは刀で大剣の軌道を軽く外し受け流していく、まともに受けたらセージの刀でも折れてしまうだろう、だが攻撃は単調なのでかわしやすい。
「な~~~ぁらば!!」
骸骨男は左手に大剣をもう一本出現させた。大剣二刀流である。
「こぉれで~~二倍強い!ツヨ~~い!!」
意味不明なことを口走りながら、今度は二本の大剣をさらに滅茶苦茶に振り回しながら襲ってくる。単調な攻撃でも数が増えれば凌ぐのも難しくなってくる。と、骸骨男は思っているが、セージにとっては単調になればなるほどどんなに手数が増えようと攻撃は読みやすくなっていった。
一転、セージは攻撃に転じる。骸骨のハリネズミの様な突きに何の迷いもなく飛び込み、切りかかる。反撃など全く考えていなかった骸骨はたちまち怯む。
握力は強いが握りが甘い。セージは骸骨男の大剣をいとも簡単に叩き落とし、刃を裏にして顔面を叩きつけようとする。
その時骸骨の口が開いた!口の中から火炎弾が飛び出る。予想外の所から予想外の攻撃が来たことでセージは一瞬バランスを崩した。骸骨男の手に一瞬にして大剣が戻る。
「もらったぁぁぁぁぁ!!」
骸骨が勢いよく大剣を振り下ろす!セージは咄嗟に刀で受けた。
ガッツ!
セージの刀が二つに折れた。
「くっ!」
「とどめ~~~~!!」
骸骨は二撃目を振り下ろした。この分かりやすい攻撃をセージは大きく後退してかわした。二本の大剣は地面を突き破らんばかりの勢いで大地に叩きつけられた。
途端、突き刺さった大剣を中心に地面に亀裂が走り大地が四方に割れる。亀裂はどんどん大きくなり、やがて所々の地面が崩落し始めた。
「えっ何!?」
リーゼの足元も崩れ始める。
「リーゼ!」
セージは崩れる地面を駆け抜けてリーゼを抱きしめた。
二人はそのまま奈落の底へと落ちて行った。




