カトゥー戦記
これは一人の若者の物語
森の奥、木々の陰でカトゥーは顔を抑え呻いていた。
顔の血が止まらない、こんなはずではなかった……。
……彼は入社したての平凡なサラリーマンだった。
ある日、不幸にも階段を踏み外し帰らぬ人となった。
……決してソシャゲに気を取られていたからでは無い。
……心残りは十連ガチャの結果だけだった……。
その後、神様の計らいで異世界に転生する際、ついでに姿を変えてもらった。
そして、転生した後は、身体強化を迷わず受け、スキップしながらオリエンスの街へとやって来た。
街に入ると、路地裏から何か言い争うような声が聞こえた。
見ると少女二人が街のゴロツキに絡まれている様だった。放っておけず助けに入る、殴りかかる野党の拳も強化された彼にはスロウモーションだった。
あっさり退けた彼に、少女二人が駆け寄る。二人は魔法使いの冒険者だった。
「あなた強いのねぇ」
「良ければ私たちとパーティを組みませんか?」
「そうだなよろしく頼むよ」
それを聞くと二人は嬉しそうにカトゥーの両腕に抱き付いてきた。大きな胸が腕に当たる・
「お、おい」
「さぁ、まだ登録がまだでしょう?」
「ギルドへ行きましょう」
どうやらさっそく旅の仲間が出来たようだった。
・ ・ ・
なんて事を期待したわけではないが、しばらく路地裏を中心に街を散策してみたが三日たっても何も無かった……。
次の日、何か街の様子がおかしかった。街の人達が皆何処かへ向かっている気がする。
―― 何かある!――彼の冒険者としての感がそう伝えた。
人の流れに乗って、街の人達の後に付いて行くと、そこは歓声の上がる闘技場だった。
そう、その日は”開門祭”の日だったのだ。
だが彼は闘技場にはいなかった。そう、街の人の後に付いて行った彼は客席に居たのであった。
やがてモンスターと冒険者達とのバトルが始まった。闘技場が歓声に包まれる、彼は客席でそれを見ていた。
だが、冒険者達はゴブリンにさえ手こずっていて今一つ頼りない。彼は飛び出したい気持ちを抑えながらそれを見ていた。
闘技場がざわめく、ドラゴンが現れたのだ!
少女剣士が弾き飛ばされた!壁に叩きつけられ、地面に転がる。ドラゴンがゆっくりと近付く。
少女が危ない!次の瞬間、彼は駆け出していた。
ガッツ!!
突然ドラゴンが真っ二つになる。
死を覚悟していた少女剣士は何が起きたかわからず突然目の前に現れた大剣を持つ剣士を見つめた。
「突然乱入して悪いが、血がたぎってしまってねぇ……参戦させてもらうぜ!!」
新たな伝説が始まった。
・ ・ ・
夕方……、カトゥーは客がひき始めた客席に居た。結局飛び出せないまま開門祭は無事に終わった。
余談ではあるが闘技場と客席の間には客の安全と魔獣を外に逃がさないためにドーム型の強力な魔法の結界が張られており、もし飛び出していたのならその結界に激突し、無様な姿をさらしていたであろう。
次の日、初心に帰り冒険者になる事を決めた彼は、冒険者ギルドを探す事にした。
数日探し回って、街の正門から入ってすぐの広場の脇に見つけた。
意外に近くだった。
翌日、ギルドの入り口で半日ウロウロして、受付前で1時間ウロウロして、ようやく受付に入った。
「はい、書類は問題ありません。では、最後に魔力を図りますのでこの水晶に手をかざしてください」
受付嬢にいわれるまま水晶に手をかざすと水晶は眩いばかりの光を放った。
「す、すごい!Sクラス?いいえSSクラス以上の魔力量だわ!」
ギルドに歓声が上がった。
・ ・ ・
「はいこれがギルドの認識証になります。初めは全て黒曜からのスタートとなります頑張ってください」
何も起こらず、登録は滞りなく終わった。
認識証を受け取り、外に出ようとすると。
「おい、兄ちゃん」
目の前に、髭面の大男が立っていた。
「見た所、この街に着いたばかりのペーペーの素人みたいだな……」
そう言いながら彼の周りを数人の男達が取り囲んでいく、全員下卑た笑みを浮かべている。
「ここは素人が来る所じゃねぇんだ痛い目を見ないうちに帰るんだな」
「いやだと言ったら?」
「じゃぁ仕方がないな」
男たちは一斉に襲い掛かった。やれやれどうやらすぐに実力を見せなければならない様だ。
・ ・ ・
「なら、まずはこのクエストを受けてみる事だな」
彼の目の前に、立体映像で新人研修用のクエストの申込書が現れる。
「新人に必要なのは仲間と、経験だ。これなら両方手に入るかもしれないぜ、考えてみな、じゃぁな」
ギムレットはそう言うと手を振りながら去って行った。
意外に良い人だった事に呆気にとられながら見送ったが、彼の心の中ではすでに参加するつもりだった。
さて、丁度同じ頃ギルドに、セージとリーゼも来ていた。
受付横の掲示板にセージの持っている黒曜のタグをかざすと彼の冒険者レベルで受けられるクエストの一覧が立体映像で映し出された。
「本当に受けるんですか?黒曜のレベルで受けられるクエストなんてドブ浚いとか地味なのばっかですよ」
「規約に月に最低一つクエストを受ける様にってあったろ」
「それは、魔石を規定数集められない人用の救済処置みたいなもので……」
「おっこれいいな」
セージはリーゼの話を軽く聞き流しクエストの一つを選んだ。特に理由は無いが場所がこの街の外というのが大きな理由だった。
「なんだ新人研修用のクエストじゃないですか」
「いいだろ、俺、新人なんだし」
そんな話をしながら、リーゼはクエストの内容を眺め見た後、ポンと自分も参加に丸をした。
「おい、これは新人用だろ!」
確かリーゼの冒険者レベルはセージよりも幾つか上のハズでこのクエストには参加できない筈だが、リーゼは募集要項のある一転を指さした。そこには”ヒーラー若干名募集”と書いてあった。
「アタシ、ヒーラー、トテモユウシュウ」
リーゼは自分を指差しかわいく笑って言った。
かくして二人の参加も決まった。




