野営
冒険1日目が終わり、その夜…
日が沈みかけたころ、モンスターもあらかた討伐し、その日はその場所で野営となった。
大きな肉の塊に酢漬けにされた魚や野菜、そして大きな樽に飲み物と、野営にしては豪華な食材にちょっとした宴会の様になっていた。
セージは夕食の足しにと昼に取ったキノコを提供した。
「よお、片手の兄ちゃん飲んでるかい?」
ギムレットは飲み物の入ったジョッキをセージに渡しながら言った。セージはそれを受け取るが疑り深く匂いをかいでみた。セージはあれから、お酒は二十歳になってからと決めていた。
「心配するな、若い奴ばっかだし明日もあるんだ、ジュースだよ」
セージはホッとするとそれを一口飲んだ。
「ご安心ください、アルコールならここに!」
リーゼは自分のアイテムボックスから、お酒の入ったボトルを取り出しながら言った。
「しかし太っ腹だな?」
セージはリーゼから酒のボトルを取り上げると、ギムレットのジョッキにそれを注ぎながら言った。
今回の宴会の食材は全てギムレットのアイテムボックスから出したものだ。つまりギムレットが持ってきたものという事になる。
「ああ、違う違う、こいつはギルドからの差入れだ。このクェストは新入りの親睦も兼ねているからな」
「ギルドからの?」
「そうだ、冒険者ってのは初めどいつもこいつも、だいたい身一つであの街にやってくる。ツテも無く知り合いも居ない、ただ胸に大きな夢と野心を持ってな。だから、まぁこうやって一人でダンジョンに入って死なないように研修を開いて仲間や横の繋がりを作ってやるのさ」
「なるほど……」
セージはそれを聞いて納得した。そしてやる事を思い出した。
あの一人孤立している異界人を何とかしなければならない。
もう一人の異界人、カトゥーは隅の方で一人、ステータスウィンドを眺めながらニヤニヤしていた。
戦闘後、異界人が自分のステータスウィンドを覗いてあれこれしながらニヤニヤするのは、この世界では珍しくない。
「よぉ、あっちで皆と話さないのかい?」
セージはそんなカトゥーに声を掛けた、隣にはリーゼもいる。
カトゥーは一瞬間が開いた後、フッと気取って見せて
「群れるのはどうも苦手でね」
カッコつけてはいるが、耳がぴくぴく動いている、たぶん声を掛けてほしくてうずうずしてたんだろう。セージはもう一押しと思った。
「そう言うなよ、同じ異世界から来た仲だろ」
「仲間…」
彼は、”この世界に来て初めて友達が出来たじぇ~”と言う顔をしている。さらに一押し
「さあ行こうぜ、今日のヒーローがこんな所でくすぶってないでさ」
まぁ、一番倒していたッぽいのであながち間違っていない。
「ヒーロー……」
顔が、わかりやすいくらい喜んでいるのが分かる。このままみんなの所へ引っ張って行こう。と、思った時、
「あのう」後ろから声を掛けられた。
振り向くとそこには、少年剣士と魔導士の少女がいた。少年は背筋を正し
「昼間はありがとうございました。おかげで大切な事を忘れずに済みました」
姿勢を正し、少年はぺこりと頭を下げると去って行った。
今度は入れ違いに剣・槍・弓の三人もやって来るとセージに昼間の礼を言った。
それからも次々と若い冒険者達がやって来ては礼を言い、やがてに剣の話などになり、盛り上がっていった。
カトゥーはどんどん隅っこに行って、忘れ去られていった。
そして宴は、隊長のギムレットがお開きにするまで続いた。




