馬車の中
何もする事が無い馬車の中、二人はとんでもない事を始める
カタカタと馬車が揺れる。
目的地の東の森まで約半日、取り立ててする事も無く、となれば、することは一つしか無い。
「―――ほら……、そこです……」
馬車の中に艶めかしい声が響く……
「あっだめ、そんなとこクリクリしちゃ!あっ!あっ!」
「おい」
「あっ、セージさんそんなとこ強くつまんじゃだめ……、あっあっ!そんな、はげしっ!!」
「おい!!」
「なんですか?セージさん♪」
リーゼはケロリと言う。
「変な声出すな!周りが微妙な空気になっているだろうが!」
揺れる馬車の中、セージはステータスウィンドゥの使い方をリーゼに習っていた。
現在、馬車の中はセージ達の他、七名ほどの冒険者が乗っていたが、全員気まずそうな顔をしてこっちを見ていた。
「この方が萌えるでしょ♪」
「燃えるか!」訳が分からなかった……。
「ではおさらいで~す。」
リーゼはセージの隣にぴったり寄り添って、何事も無く続けた。
「で、ここをこうすると地図が現れます。中央の丸い球がセージさん、隣が私です登録してあるパーティの仲間がどこにいるのか確認できま~す」
「んで、こう指でくぱ~と広げると地図を広げられます」
「くぱ~じゃない」
「ほら、二つ点から遠ざかっているのがファウさんですね」
「ファウナか……、そう言えばお前らって不思議な関係だよな」
セージはふと思った疑問を口にした。
「私とファウさんですか?」
「姉妹とも幼馴染とも違う気がする。一体いつからの付き合いなんだ?」
「そうですねぇ……、だいたい十年くらいでしょうか」
「十年!?」セージの頭の中には赤ん坊のファウナを抱いているリーゼの姿が思い浮かんだ。
「私、十年以前の記憶が無いんですよ。まぁ、物心つく前だから覚えて無くても当たり前なんですが……、親の顔とか住んでいた所とか」
リーゼは話を続ける。
「あの時私は、盗賊に捕まっていて暗い部屋に閉じ込められ、何日も食べ物も与えられず死にかけていました……。で、その時助けてくれたのがファウさんというわけです」
「重い話を軽々と……、つまり、その、なんだ」
「はい、そうなんです」
――「ファウさん、あれから一ミリも身長伸びていないんです」――
「ふぇっくしょん!!」
オリエンスの街でファウナのくしゃみが響いた。
「風邪?」
隣にいたメイド服姿のシズが聞いてきた。
ここは”りんご亭”シズの働いている店である。
「きっとリーゼだな」
「今日は一緒じゃないんですね」
「あの二人は初心者用のクェストに出かけたよ。たまには子守りから解放されて、おとなな私は一人でお茶なのだ」
リーゼは椅子に腰かけたまま足をプラプラさせながら言った。いつものマントととんがり帽子は前の椅子に掛けているので、白いブラウスとギャザーのスカートを身に着けたファウナは見た目通りの少女にしか見えなかった。
「お待たせしました。パンケーキセット生クリームのせです」
別のウェイトレスが豪華なパンケーキをテーブルに置いた。
「おお~ぅ!♪」
フォークとナイフを持ったファウナは今日一番の笑顔で出迎えた。
「大人……ねぇ」




