新しい朝2
時間は少し戻り、シズの朝
時間は少し戻る……。
朝、シズは日の出の少し前に静は目を覚ました。
半世紀以上にわたって体に染みついた習慣だった。朝、主人より早く起き掃除、稽古、朝食の支度と朝は戦場だったのだが、今は特にすることがない。
本名、志藤静、享年90歳、生前はセージの奥さんだったが、16歳の姿でこちらの世界に転生してからは別のパーティ、別の宿に泊まっている。
顔を洗い、長い髪を後ろに結って、動きやすい恰好に着替えると静は外に出た。
「さて、行きますか」
朝の空気をいっぱいに吸うと、シズはジョギングを開始した。
軽く20キロほど走った所で、シズは橋の下で素振りをしているセージを見つけた。
セージは同じ長さの鉄の棒2本を交互に素振りしていた。今の彼の課題は、右手を左手同様に使いこなす事である。
半世紀以上、左手一本で生活してきたセージにとって突然戻った右腕にはまだ違和感があった。だから両の腕をまんべんなく鍛えるため、選んだのが二当流である。
「おはよう、精が出るわね」
刀に見立てた二本の棒を交互に振っていると、橋の上から声を掛けられた。振り向くとそこにはジョギング中のシズが欄干の上に肘をつきながらこちらを見ていた。
「いつもここで練習しているの?」
「いや、今日はたまたまここを見つけただけさ」
「どう?久しぶりに、やる?」
”やる”とは真剣の打ち合いの事である。相手が欲しかったセージも「いいぜ」と、うなずいた。
シズは、ふわりと橋の上から河原に飛び降りると。セージの所へ来た。見たところ手ぶらだ。
「どうするこれを使うか?」
セージは持っていた鉄の棒の一本を渡そうとするが、
「大丈夫よ」
と、シズは指で軽く空中を2回タップすると目の前にウィンドゥが現れ、慣れた手つきでアイテム覧から刀をセレクト、すると空中に彼女の愛刀がスッと現れ素早くそれを掴んだ。
「さ、始めましょうか」
刀を構えようとすると、セージはポカーンと目を丸くしていた。
顔には”何それ?すご~いどうやったの?”と、書いてあった。シズは眉間にしわを寄せ
「あなた、ここにきて3~4日は経つのに、まだこれの使い方を知らないの?」
”これ”とはステータスウィンドゥの事である。
この世界の住人は誰もがこの力を使う事が出来る、持ち物を異空間にしまう”アイテムボックス”もその一つである。他にも、通貨のやり取り、魔法など様々なことに使用される。
一体いつから?どんな原理で?など誰も知らないが、使い方がわかっていればそんな事は気にせずに使うのが人間である。
「い、いいだろう。そんなもの使わなくても…、べ、別に不自由しないし…」
目が泳いでいた、明らかに全く使っていない。シズは知っていた、セージは無人島に放り込まれても平気で生きていけるが、都会のジャングルに放り込まれると3日と持たない文明音痴だという事を…。
「便利なんだから使いなさい!」
「必要になったら使うよ。…だいたい何でお前そんなに順応性高いんだよ?」
「こんなの普通ですよ、あなたが原始人なだけでしょう!」
「なんだと~!」
言い合いになった所で、解散となった。
・・・
そしてセージが宿に戻ると、
「すか~~~…」
リーゼはまだ寝ていた。
「このやろ」




