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28:私が信じていた幻想

今回長くなりました(-_-;)

こういう文字数調整も出来るようにならないと……反省します。

 ソロになるためにいろいろと準備をしている私は忙しい日々を過ごしていたのだけれど、たまたま今日は予定されていた領主様のご息女の護衛依頼がキャンセルになって時間が空いてしまった。明日家に行く予定だったけれどまだ朝だし、今日行こうかな?


 そうと決まれば早速準備をして。皆に一言言ってから行くとしようかな? 今日の護衛依頼は私だけの仕事だったから他の皆はどこにいるか聞いていないんだよね。きっとギルドの隣の酒場にいると思うんだけれど……。


 あれからランクが上がったことでさらに実入りの良い依頼が受けれるようになってお金に余裕が大分出来たものね。オイゲンとか美味しい食事処探しとかしているみたいだし。


 私が酒場に入ると予想通り、アニーが簡単な食事を食べているところだった。お酒は飲んでいないみたいだね。まぁ、ここはご飯は割と美味しいけれどお酒はそこそこだからね。


「あ、エリシアだー。依頼キャンセルになったんだって?」


「うん、だから今日村に行こうかなって」


「うんうん、それが良いと思うよー。気を付けて村へ行っておいでー。ジェイクさんにいっぱい甘えておいで―、なんてね」


 アニーはそう言いながら肉団子を頬張る。アニーは肉団子とか好きだよね。結構高いものとか好きなくせにこういう食事は割と質素と言うか。


「うん、それじゃあ行ってくるね」


「うん、エリシア。行ってらっしゃい」


 アニーに伝言を頼んで私は荷物を馬に積んでいく。最近護衛の報酬以外に領主様のご息女から貰った物も忘れないように積んでおく。


 よし、準備完了! 行ってきまーす。




 村には昼前には着いたから今日はゆっくり出来そう。もちろん薪割くらいはやるけれどね。


 家に入ってみると鍛冶場から音がするからジェイクは作業中かな? 邪魔しないように注意して声をかけてみると、今は手が離せないらしく後で行くからと返事が返ってきた。


「のど乾いたなぁ……」


 待っている間にお茶でも飲もうかな。そうだ、領主様のご息女から貰ったモノを試してみようかな。いつもはマリーとエリーにやってもらっているけれど、自分でも練習しておかないといけないしね。


 私は部屋で貰った服に着替えてみる。ドレスと言うほどのモノではないけれど、それなりに良い布を使った服なんだよね。あとは化粧道具を取り出して自分でやってみようかな。


 貰ったのは親和の香水と魅了の口紅だったかな? 私は荷物を漁りながら取り出して並べてみた。親和の香水は第一印象が良くなるもので、魅了の口紅は魅力が上がるマジックアイテムらしいんだよね。


 もっとも魅了と名前がついているけれど、そこまで強力なモノじゃないらしいから使えるんだけれどね。領主様のご息女が使っているものらしくて、貴族令嬢は良く使っているんだって。私もこれくらいは使っておくようにって言われて渡されたんだよね。そう言えば次の護衛の時にあのドレスを着る際に使うようにって言われたんだった……私は平民なんだけれどなぁ。


 依頼に行く際のピアスや指輪等を外しておく。以前、うっかり外すのを忘れていたから気を付けないとね。引退する時にこれらをラルフに返そうかなぁ。


 マリーとエリーに教えてもらった通りに化粧をしていく。最後に口紅を塗って完成っと。親和の香水の香りがふわりと香って良い匂いがする。これって好きな匂いで作れるのかな? もしそうならフェレーヌの花の香りに出来ないかなぁ?





 台所に行ってお茶の準備をするんだけれど……どこに何があったか覚えてない……あれ?


 お湯を沸かして茶葉を用意する。カップはどこだったかな?……お茶菓子も出そうと思ったけれど場所が分からない……ここだったかな?


 結局あちこちをひっくり返して準備を済ませた時には台所は散らかってしまっていた。


「……あとで片付けないと」


 最近料理とかしていなかったからもう勘が鈍るとかのレベルじゃないかも……。


 紅茶を淹れると少しだけ爽やかな香りが広がっていく。最近はこの紅茶が好きなんだよね、これには香りを楽しむお菓子は合わないし、すこし独特の渋みがあるから少し甘めのお菓子を。


「……うん、美味しい」


 何とかお茶を淹れることは出来たかな? これならジェイクも美味しいって言ってくれるかも。後ろの台所の惨状は今は見ないふりをしておいて・……後で片付けます、はい。


 ひと段落ついたのかジェイクがやってきて不思議そうな顔をしていた。それにしてもジェイクが一仕事した後の汗のにおい嫌いじゃないんだよね……恥ずかしくて言えないけれど。


「エリシア何か花の匂いがしない?」


 親和の香水のことかな? もしかして嫌な匂いだったのかな? 私は親和の香水の入った瓶を取り出して見せてみた。


「これの匂いだと思うよ。不快な匂い?」


「いや、いい匂いだけれども――香水?」


 私はほんの少しだけ手首につけて擦り付けてみた。さっきよりもハッキリと花の香りが広がるけれどそこまでキツくはないかな?。失敗すると凄い匂いになるから気を付けないとね。


私は親和の香水の効果をジェイクに説明してみた。もっともこれってジェイクには何の効果もないんだよね。あくまで第一印象だからね。


「でも珍しいね。台所がちらかっていたのは」


 ……うう、ごめんなさい。最近やってなかったからね。私がそう伝えるとジェイクは困ったように料理しなくなったんだねと呟いた。


「料理はその仕事をしている人が作るほうが美味しいしね」


 私よりもグンドのおじさんの方が美味しい料理作るから任せちゃうんだよね。


「それはそうだよ。プロには敵わないよ。でも家事はそれとは別だと思うけど」


「ほら、そこはいつもは使用人の仕事だったりするから。人の仕事奪ったらいけないし、それぞれ役割があるんだよ」


 マリーとエリーが言っていた通り仕事を任せることも仕事なんだって最近分かったんだよね。料理はグンドのおじさんに、掃除とかはマリーとエリーにって決まっているしね。


 もちろん、いつか冒険者を辞めたら自分でしないといけないから時間を見つけて練習しないといけないんだけれどね。


「ちょっと時間見つけて練習しておくね」


 私はジェイクにそう言って準備しておいた紅茶を淹れることにした。




 次の日、ジェイクが少しデートをしないかと言ってくれたので私は浮かれてしまっていた。せっかくだから貰った綺麗な服を着て見た目も気にしようかな。


 準備が終わってお昼も用意したから今日は外で食べようね。ジェイクに着いて村を歩く。村の皆の目がなんか少し変な気がする。まるで余所者を見るような……浮かれてこんな格好したからかな? ジェイクに少しでも綺麗な私を見て欲しかったから着てみたんだけれど、マズかったかなぁ?


 私達の秘密の場所で私のお気に入りの場所に着くと、ジェイクは風が気持ち良く吹き抜ける丘に座れるように布を敷いてくれた。私の服が汚れないように気を付けてくれたんだね、こういうのって紳士って言うんだよね。


 風でフェレーヌの花が揺れて吹き抜けた風が音を奏でていく。太陽が少し暑いけれど夏だと自己主張するような青い空が近くに感じた。このまま手を伸ばせば青空を手でかき回せそうな気がして私は手を伸ばしてみる。もっとも空は掴めないし、何も変わらない。そんな私をジェイクは優しい顔で見ていた。


「エリシア、これ貰ってくれるかな?」


 私が伸ばしていた手をおろした時、ジェイクの手にはフェレーヌの花を模した髪飾りが存在していた。


 え?……これってもしかしてジェイクが用意しておいてくれたの?


「これジェイクが選んだの?」


「うん、たまたま見つけたんだ。エリシアに似合うと思って」


 淡い紫の小さな花が陽の光に照らされてまるで輝いているように見える。


「ありがとう~ジェイク~」


 私は嬉しさのあまりジェイクに抱き着いていた。嬉しい! そんなに高いものではないことは見ればわかるけれど。それでも今までジェイクからこういうの貰ったことって結婚指輪以外無かったから凄く嬉しかった。もっともジェイクから貰ったことが無かった理由はあまりお金の余裕が無かったのが理由だから文句は無かったんだけれどね。それにこんなに可愛い髪飾りなんて村に来る行商のおじさんは持ってきてくれないからなかなか買えないしね。


「ごめんね、なかなかプレゼントをあげられなくて」


「ううん、ありがとう。嬉しい」


 でも、もしかして私があんなことを言ったせいなのかな? もし、そうだとしたら凄く申し訳ないんだよね。それを聞くことも出来なくて私は顔に出さないようにしながら素直にお礼を言う。


 マジックアイテムではなくても嬉しかった。ただ、ジェイクがくれたというそれだけで。


 フェレーヌの花の髪飾りを貰った翌日、依頼があるのでケートに戻らないといけないから出発の準備をしていたらジェイクが見送りに来てくれていた。


「それじゃ、行って来るね。今回は三日くらいで終わると思うから、終わり次第来るよ」


 私はそう言ってジェイクに手を振る。今回は商人のパーティーの護衛だったっけ? はぁ、最近冒険に出れていないから結構不満なんだよね。これもソロになるまでの辛抱だと思って我慢しようかな。ソロになれば依頼を断ってもパーティーに迷惑かけないし、ソロでも出来る討伐依頼とかあるだろうしね。





 それから依頼をいつものように終わらせて村へ来た日のことだった。いつもはこのまま家に行くんだけれど、今日は違ったんだよね。


 家に入ろうとした時、後ろから声がかけられた。


「ちょっといい? 姉さん」


 アリアが今まで見たこともないくらい険しい顔で私を見ていた。


「なに、アリア? 今帰ってきたところだから少し休みたいんだけれど」


「家に来てもらえない? お母さんも待っているから」


 私の言葉に被せるようにアリアが言ってきた。何が何でも逃がさないという強い意志を感じた私は仕方なく実家に向かわざるをえなかった。


 久しぶりに訪れる実家はこんな感じだっただろうかと思ってしまった。入りづらい空気にどこか拒絶されているような気がした。


 お父さんが建てた家はくたびれてはいるけれど、しっかりとした造りで安心して住むことが出来る家だったのに……なんで。


「お母さん、連れてきたよ」


 アリアがそう言って先に入っていった。私も仕方なく後に続く形で玄関をくぐった。中ではテーブルにお母さんが怖い顔をして座っていた。うん、正直に言えば魔物より怖いんだけれど……。


「座りなさい、エリシア」


 お母さんが真向いの椅子を指さして言ってきた。アリアは私の横に座るつもりみたい。私は大人しく言われた通りに座ることにする。帰ってからまだ着替えていないから防護のタリスマンが服の中で音を立てた。


「お父さんもいるの?」


「あの人には酷な話だからいない時を狙って呼び出したんだよ」


 お母さんはそう言って腕を組んで溜息をついた。


「それでエリシア、あんたいつ冒険者なんて言う道楽辞めるんだい?」


 お母さん?……道楽? な、何言っているの?


「道楽って、そんないい方しなくても。ちゃんとお金は稼いでいるし……」


「家にいない妻なんか妻じゃないよ! もう一年以上も冒険者やっているじゃないかい! あたしは一年で辞めるっていうから今まで黙っていたんだよ? あんた達夫婦の問題だからって、ところが蓋をあけてみたらどうだい! 遊び呆けていてジェイクの妻としての自覚も失くしちまったのかい!?」


「失くしてなんかいないよ!」


「はん! どうだかね。村にほとんどいないし、顔だってろくに見ちゃいない。あたしはこの状態のままでこれ以上過ごすのは嫌だよ!」


 確かに私のわがままではあるけれど、ジェイクと話し合って決めたことだからいくらお母さんでもそこまで否定されたくない!


「ジェイクとは話し合って許可貰っているよ!」


「どうせあんたがジェイクに甘えたんじゃないのかい? あの子は昔からあんたに甘かったからね。あんたが冒険者なんて言ういい加減な夢を持っていても怒らなかったのがジェイクとオーベルだけだったものね。あたしは今でも後悔しているよ、もっと早く諦めさせるべきだったって」


「……私、これでも認めてもらえるくらい活躍してきたんだよ!」


「だからなんだって言うんだい? こんな田舎ではそんなの関係ないだろうに。あんたが最近着ているあのお貴族みたいな恰好も村の皆から見たら余所者と同じようなもんさ。あんたが活躍出来るくらいだから大した仕事はしていないんだろうに、だったらすぐに辞めてもなんの問題もないはずだよ」


 ……どうして認めてくれないのかな? あんなに恐ろしい魔物も倒したのに、村の皆には何も関係ないんだね。


 ―――冒険者なんかお前がなれるわけないだろう! そういう夢を持つ奴はバカだって父ちゃん言ってたぜ、エリシアはバーカ、バーカ。


 昔、村の子供たちにからかわれた声が聞こえてきた。いないと分かっていても聞こえてくる。


「そろそろバカな夢から覚めて大人しく家に戻ったらどうなんだい? 向こうでもいい加減な生活をしてるんだろう……って、エリシア、あんた結構身綺麗にしているけれど今、どこに住んでいるんだい?」


「お姉ちゃん、宿じゃないの?」


「ちゃんとしたところで生活しているけれど……」


 私がそう答えようとするとお母さんは眉間にしわを寄せて睨みつけてきた。


「まさかあんた! 妾とかになっているんじゃないだろうね!? 冒険者なんていい加減な職業でそこまで綺麗になれるわけないんだから!」


 冗談じゃない!! 間違ってもそんなことなんかしていない! いくら親でも許せないことってある!


「違うよ! パーティーで借りた家で生活しているだけ! 手が足りないから使用人を雇っているけれど、身綺麗なのはその人たちのおかげだから!」


「お姉ちゃん。それって、今のパーティーメンバー?」


「そうだけど……知っているの?」


「お義兄さんから聞いているからね……ねぇ、お姉ちゃん、それって結局妾じゃない!」


 何で!? 冒険者が拠点に家を借りて共同生活することは珍しくないのに! 他のパーティーでも出稼ぎに来ている女性冒険者が共同生活している場合だってあるのに?……そうか、知らないからおかしなことなんだ……こんな田舎じゃそんな話入ってこないもんね。


「なんでそんなことしたんだい!? あんた何考えてんの!?」


「宿代がもったいないからって理由だけでそれ以上のことはないよ!」


 私の答えにお母さんが頭を抱えてしまった。私が何を言ったところで納得しないくせに。知りもしないのに昔から悪くいってばかりだった。私が活躍しても、稼ぎが良くてもそれは恥ずかしい仕事に変わりは無かったんだ……お母さん達から見れば。


「とにかくこれ以上、いい加減な夢なんか見ないで、家で妻としてのまっとうな生活を送りなさい。シェリアみたいに冒険者なんか辞めて今では立派な妻として頑張っている娘もいるんだから。もし、万が一死んじまったらどうするんだい?」


「そうだよ、お姉ちゃん。死んじゃったらもうお義兄さんに会えないんだよ? それともそれでもいいくらい冒険者が好きなの? いくらお姉ちゃんが強くなっても絶対は無いんだよ?」


 そんなことは分かっている! 言われなくても誰よりも私は知っている! 昨日話していた冒険者が次の日にはいなくなっていることもあった。何も知らない二人に言われなくても知っているのに!


「冒険者なんかやってて死んじまったら何の意味もないんだから。あんたの仲間の娘だって死んじまってるんだろう?」


 ……今なんて言ったの? 何の意味もない? 冒険者はそこまで悪く言われなければいけないの? それに……レイラのことを言ったの? レイラはまだ死んでなんかいない! 


 ―――そのことだけは……触れるのは赦せない!


「……訂正して……レイラはまだ死んでない……まだ生きているんだから、治療中なだけで……死んだって言うのは訂正して」


 私の怒りに怯えたのかお母さんが目を見開いてみてきた。


「そんなもんあたしらには違いが分からないよ! ジェイクの妻一つまともにこなせない娘が生言ってんじゃないよ!!」


「だったら軽々しく触れないでよ! 何も冒険者のこと知らないくせに!! それに私はジェイクの妻なんだからそこは否定させない! いくらお母さんでも!!」


 私が思わず立ち上がって叫んだ時、パシンと乾いた音がした、。アリアが目に涙を溜めながら私を睨んでいる……私、アリアに叩かれたの?……え?


「お義兄さんの誕生日も忘れてた人にそんなこと言う資格ないじゃない!! そんなに冒険が大事なの? 家族より大事にする冒険なんておかしいよお姉ちゃん!! もう冒険と結婚したら!?」


「とにかく、エリシア。あんたはもう冒険者なんか辞めるんだよ。さもないとジェイクとの家庭を失っちまうよ」


 何を言っても理解してくれない……それどころか私の話を聞く気もない……


 ねぇ、アリア。私、忘れていたわけじゃないんだよ?


 本当に帰りたかったのに帰れなかったんだよ……それすらも私が悪いの?


 私が冒険者になりたいっていう夢を持ったことが悪いの?


 それを好きな人に応援してもらったことが悪いの?


 ……だったら私は夢なんか見たらいけなかったの?


 ……ジェイクならそんなこと言わないよ?


 ……ジェイク……なら


 私はそのまま実家を飛び出した。あのままあの場所にいたら言ったらいけないことまで言いそうなくらい腹が立ったのと悲しかったから。気が付けば外は雨が降っていて私を濡らしていく。雨が涙を隠してくれるから誰にも気づかれないよね? 


 家族に否定された夢をジェイクは否定しないでくれていた。


 大好きな旦那様に甘えているのは理解している。何度も迷惑をかけてしまったことも理解している。それでもやりたかった夢を……ジェイクだから話せたんだ。


 今はただ、ジェイクに話を聞いて欲しかった。私の夢を笑わないでいてくれたジェイクに会いたかった。


 



 家にたどり着いて急いで玄関を開けるとジェイクが立っていた。


「あれ? ……エリシア?」


 濡れている私を見て驚いたような顔をしていた。そうだよね、普通こんなに濡れないよね。


「帰ってきたんだね、おかえり……エリシア」


 うん、帰ってきたんだよジェイク。私ね、聞きたいことがあるの。


「あのねエリシ」


「ジェイクはどうなの?」


 私はジェイクに抱き着いて大好きな人の胸の中でその熱いくらいの温もりに触れる。雨で冷え切った体にはちょうど良かった。


「な……にが、エリシ……ア?」


「ジェイクも私が冒険者辞めて家に居たほうが良いの?」


 今まで聞けなかった質問、どうしても怖くてその言葉だけは聞くことが出来なかった。もし、万が一、ジェイクに夢を否定されれば私はもう二度と……信じられなくなりそうだったから。


 ジェイクは私に嘘をついたことが無かったから、そんなジェイクは私の夢を幼いころから否定だけはしなかった。応援もしなかったけれど話だけはずっと聞いてくれていたから。だからそんなジェイクの言葉は私にとっては何よりも信じられるものだったから。


 ―――だから、私は信じていたんだよ、ジェイク


「……確かに、エリシアが居たほうが嬉しいよ」


 雨の音が聞こえなくなった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 話に引き込まれますね。 [気になる点] ラルフ「我が策成れり」 アニ-「エリシアから解放されて、漸くやりたいことが出来るようになったねジェイク」な感じですかね。 [一言] 酷い言い方で…
2020/01/22 07:41 通りすがり
[良い点] シュシュ修羅場! たのしいですね [気になる点] もうこの二人は夫婦でいること悲恋じゃないかな? もうすでに、奥さんとしての役割が破綻してるし旦那さんも限界でしょ。ここまで互いに求めてる…
[良い点] 色々妄想が捗る所 マクロ的視点で見ると、エリシアが才能を生かして 英雄となる方が、経済的にも国防的にも平民の 活力向上にも寄与して専業主婦よりも良い。 何らかの方法で、エリシアが物凄い…
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