薔薇
薔薇よ、枯れないでくれ
その緋を失わないでくれ
輝き続けてくれ
少し傾いていても構わない
だが枯れることだけはやめてくれ
枯れぬならば冥府へと続く道も
果ての見えぬ荒野も喜んで歩き抜こう
人魚が奏でる音色には耳を塞ぎ
夢魔の手は振り払おう否、望むのであれば
切り落としてもいい
陽炎に必至に縋りつこうとしている惨めな様を見てお前は黒い眼で俺を見ている
その眼は節穴だ
単にお前は見ようとしなかっただけだ
炎は確かにそこにあるのだ。尽きぬ炎が
嫌、俺がおかしいのかもしれない
激情で足をつり、息継ぎができぬまま
溺死することになるかもしれない
その時は俺を笑ってくれ
蔑み、嘲笑ってくれ
無駄死にした馬鹿だと
その時ばらけていた感情が
一つになるのだ
最早何も分からなくなってしまいそうだ
雫ばかりが落ちていく
日に日に零落しているのは分かる
自分が自分で無くなるようだ
唯一信じられていたものですら
直に絶えてしまうのだろうか
だからもう一度言わなければならない
薔薇よ、枯れないでくれ
今は欲は言わぬ、咲き続けていてくれ