銀の風が吹くとき
ここセントラルシティは、この大国オリエンタルの首都だ この街に最近やってきた青年がいた 「起きてくださいよ!もう起床時間はとっくに過ぎてますよ」 「まだ眠いよハリス…なんでまたこんなに早いんだよ」 「まさか今日の予定をお忘れですか」 「今日?…あっ!」 「思い出しましたか?」 「もちろんだハリス今日は僕の母校オリエントの校長先生が依頼を持ってくださるのだ」 「おわかりになったのなら早く朝食を召し上がってくださいクォリエンス様」 「わかったよハリス僕も腹ぺこだから」 この街で魔術を使って人助けをしているのがこの青年クォリエンス・ウォルト・エウドラン 彼は3ヵ月前にこのセントラルシティにやって来た 「はぁ〜おいしかった!ハリスの作る朝食は最高だ」 「そんなことありません」 「そんなに照れる必要はないのに、僕は嘘は言わないよ」 クォリエンスは長い銀髪を整えながら言った 「そうですね、あなたは昔からそうですから」 ハリスは頬を赤くして言った クォリエンスは銀色の瞳をハリスの金色の瞳をじっと見た 「どうなさいましたか?」 「いや、お前の髪も大分伸びたなと思った」 「そうですね、あなたの世話役としてはみっともないですね」 ハリスは自分の茶色髪を見ながら言った それから数時間後… 一人の老人がクォリエンスのところにやって来た 「アルドレット先生よくこのセントラルシティまできてくださりありがとうございます」 「いやいや君こそ元気そうでなによりだエウドラン君にボールド君卒業以来だ」 「先生こそお元気そうでなによりですね」 「アルドレット様どうぞこちらにおかけになってください」 ハリスはアルドレットを一人がけ用のソファーに座らせた 「ただいまお茶をご用意します」ハリスはキッチンに向かうため階段を下った 「君も物好きだね、魔術なんて」
「生まれつきの力なので」 「君も大変だね」 「そうですね、最初はこの力が恐ろしくてたまりませんでしたが今ではこの力があることを誇りに思います」 「そうか君が満足しているならよかったよ」 しばらくするとハリスがトレイにカップを載せて戻ってきた 「お待たせしました」 「ありがとうボールド君」 「すまないなハリス」 「いえいえあなたの世話役の仕事をしたまでですよクォリエンス様」 「では先生話の内容を…」 「そうだったね」 アルドレットは手を組んでさっきに比べて低い声で話し出した 「最近我が校で不審な噂が流れているのだ」 「噂?一体どの様な」 「私もあまり詳しく知らないが学校の第二書庫で不審な人を見たと言うのだ」 「書庫で?一体」 「それにその人物を見た生徒の数名がその人に傷を負わせられたのだ」 「なんと!!」 「なんとかして解決したいのだが…」 アルドレットはクォリエンスの目を見つめた 「わかりました」 「では、解決してくださるのかね」 「ええ、僕の母校を救いたいですから」 「ありがたい、明日のお昼頃に来てもらえないか?」 「わかりました」 「では、明日の午後に」 そう言うとアルドレットは席を立った 「ハリス先生を駅まで見送ってくれ」 「わかりました」 ハリスはアルドレットと一緒に駅に向かった 後日クォリエンスとハリスはクォリエンスの母校オリエントに向かった 「さぁ着いたぞ」 クォリエンスは学校を見渡した 「変わってないな」 「そうですね」 するとアルドレットがやって来た
「よく来てくれた」 「先生こんにちは」 「では君達はアドリアーノ寮に泊まってくれそれに何かあったらこの子に聞いてくれ」 アルドレットに紹介された生徒がクォリエンスの前にきた 「こんにちはクォリエンス先輩ぼくはアドリアーノ寮3年のミシュランです」 ミシュランは深々とおじぎした 「よろしくミシュラン」 「また後でクォリエンス君」 「はい」 アルドレットは去っていった 「クォリエンス様アドリアーノ寮に向かいましょうか」 「そうだな」 「先輩案内します」 そしてミシュランが先頭に立った
「こちらです先輩」 クォリエンス達はミシュランの後に付いていった 「こちらです」 ミシュランは扉を開けた 「ありがとう」 「じゃあぼくは戻ります」 「授業に遅れないでね」 「はい!」 ミシュランの元気な返事が返ってきた 「元気な人でしたね」 ハリスは荷物を整理しながら言った 「表向きはな」 「クォリエンス様また心の中をご覧になったのですか」 「自然と見てしまう」 「まったく…ミシュラン様はどのような考えを?」 「正直面倒臭いみたいだ」 「そうですか…」 ハリスは下を見た 「そんなにしょげることないさハリス人間なんてそんな者さ」 「クォリエンス様…」 ハリスは少し複雑な感じになった その日の夕食時にオリエント全校生徒の壮大な夕食会になった 「みなさん我が校の卒業生クォリエンス・ウォルト・エウドランです」 「みなさん僕はこの学校に起きている奇怪な事件を解決するために来た。
何かささいな情報を知っている者がいたら僕のところに来てくれ僕はアドリアーノ寮に居る以上だ」クォリエンスの言葉が終わると生徒達から拍手が起こった 「彼は2年前に卒業したナリタブライアン寮で最優秀生だった」 アルドレットの説明にまた拍手が起こった 夕食会が終わるとクォリエンスは謎の人物に怪我を負わされた生徒に聞き込みをした 「これで聞き込みが終わったなハリス」 「ええ」 「第一発見者のカイルは深夜換えし忘れた本を戻したさいに負傷したそうだ」 「第二発見者のエドガー様は友人達と一緒に宿題の調べをするために行ったとこ負傷されてます」
「情報はこれだけか…」 「まだかかりそうですね」 「今日はもう収穫がなさそうだしそろそろ寝るか」 「そうなさってください明日も早く捜査にでる予定ですので」 「わかったハリスも早く寝るんだぞ」 「わかりました」 「おやすみハリス」 「おやすみなさい」 ハリスは部屋を出た 「はぁ、今日は忙しかったなぁ」クォリエンスは天井を見ながら言った 「なんだか懐かしいなこの部屋…そうか先輩の部屋に似てるんだ」クォリエンスはそう思った後静かに目を閉じてねむった 翌朝クォリエンスは事件のあった第二書庫へいった 「んー別に変わったことはないみたいだな」 「こちらも何もありませんでした」 「そうか…んっ!誰かいるのか」クォリエンスが大声をだすと一人の少年が出てきた 「ごめんなさい、お、おれナリタブライアン寮4年のアルト・クリスタル」 「君はなんでここにいるのかい?今授業中じゃないか」 アルトは下を向いた 「そうなんだけどさ…」 「いじめかな」 「うっ!」 アルトは図星されたのでためらってしまった 「図星かい?」 「そうだよ、何でおれだけ」 アルトは黒い瞳に涙を浮かべながら言った 「君の心は泣いてるみたいだ」 クォリエンスはさらっと言った 「当たり前だ!」 アルトはクォリエンスを睨んだ しかしクォリエンスは付け足した
「だけど本当は笑いたいみたいだ」 アルトは次々に思っていることをあてられてしまうのでおどろいた
「クォリエンス先輩何でおれの思ってることがわかる」 するとハリスが急いで言った 「これ以上は話せません申し訳ありません」 ハリスは深々と誤った 「ごめんなさい」 アルトも誤った 「おれ先輩に伝えたいことがあって」 「なんだい?」 クォリエンスは興味津々に聞いた
「事件になってる人物はこの世にいない魔物だと思うんだ」 「魔物…か」 「でも実際に見てみないと」 「そうだな、アルト君も手伝ってくれ」 クォリエンスはアルトに手を出した 「わかった」 そして夜がやってきた クォリエンスは扉の近くにハリスは本棚の近くにアルトはクォリエンスの近くに待機した 「先輩今夜くる気がします!」 「僕もそんな気がするよ」 するよスッと物影が現れた 「あいつだ!」 アルトは現れた影を指した 「あれは…文献で見たことあるな」 「先輩知ってるんですか」 「ああ、あれは人間の善心を吸う魔物だ」 アルトは黙ってしまった 「クォリエンス様準備は出来てますか?」 「ああ、僕も久しぶりで嬉しいよ」 「気を付けてください」 「わかってるよ」 クォリエンスは魔物の方へ歩いていった 「先輩危ないですよ」 「アルト様大丈夫ですよ、クォリエンス様は魔物を退治するのが本業ですから」 アルトはクォリエンスのことをじっと見た 「まさかお前の仕業だったなんて見当つかなかったよ」 魔物はクォリエンスの方に近づいた
「お前…エウドラン家の奴か」 魔物は低い声で言った 「そうだ、僕はクォリエンス・ウォルト・エウドランだ」 「銀髪、銀色の瞳のエウドランの人間は許さない!」 すると魔物は霧状の物になった 「なっ!」 クォリエンスは驚いてしまった その隙に魔物はクォリエンスにものすごい速さで向かってきた 「隙だらけだ」 「しまった!」 魔物はクォリエンスの左目に入り込んだ 「うっ!」 クォリエンスは左目を押さえ込んでその場に座り込んだ 驚いたハリスとアルトはクォリエンスのところに急いで行った 「クォリエンス様大丈夫ですか!!」 「先輩!!」 「だ、大丈夫だ」 クォリエンスはゆっくりと体制を立て直した 「さっきの魔物は?」 「霧状になって消えた」 「そうですか」 しかしクォリエンスは付け足した
「消えたがもう大丈夫だ」 「では戻りましょうか」 クォリエンス達は部屋に戻った アルトは自室にクォリエンスとハリスは寮長室に戻った 「ハリス」 「どうしましたか?」 「単刀直入に言うがいいか?」 「何を言われようが驚きませんよ」 「そうか…さっきの魔物についてだが」 「もう大丈夫では無いのですか?」 「実のところ大丈夫だがこれを見ろ」 クォリエンスは隠れていた左目をハリスに見せた 「!!」 ハリスは目が丸くなった 「魔物が僕の左目に吸収された」クォリエンスに見せられた左目は右目のような銀色の輝きはなく、黒く暗黒な雰囲気がしていた 「まあ大したことはないようだ」
「安心しました」 ハリスはホッと一息した 「明日の事件解決した報告は眼帯をするよ」 「かしこまりました」 クォリエンスが奇怪な事件を解決した報告は翌日の昼食会に聞かされた 「皆さんこの学校で起きていた奇怪な事件は無事解決した」 盛大な拍手が湧き上がった 「これで安心してくれ」 クォリエンスは着席した すると隣に座っていたアルドレットがクォリエンスに尋ねた 「エウドラン君その眼帯はどうしたのかね?」 「ちょっとした事故で書棚の本が落ちてきてしまいまして」 「そうか…無理せんようにな」 「はい」 そしてクォリエンス達が学校を去る時間になった 「クォリエンス様そろそろお時間です」 「そうだな」 クォリエンスが馬車に乗ろうとした時アルトが全力ではしってきた 「ちょっと待って!!」 「アルト!」 「アルト様!」 2人は同時に呼んだ 「おれも連れてって」 2人は目を丸くした 「おれクォリエンス先輩の役にたちたい」 クォリエンスは悩んだあげく 「いいよ一緒に行こう」 「クォリエンス様!」 ハリスは驚いてクォリエンスの方を見た 「いいだろハリス、アルトの気持ちは必死の一言だ」 「わかりました」 「やったー!!」 「ただし僕の言うことは守ってくれよ」 「うん」 その時のアルトは今までにないくらい明るい笑顔だった 翌日事務所に戻ったクォリエンス達はいつもと同じではなかった 「おいっ!…おいっ!」 「んーまだ眠いって」 クォリエンスは目をゆっくりと声のした方を見た 「やっと起きたか」 「お前は!!」 クォリエンスは目の前にいた見た目は狐のようだがうさぎくらいの大きさで銀色の毛並みをもち金色の瞳が輝いていた生き物に驚いた
「な、なんでこんなところに」 「お前が連れてきたんだろ」 「?」 クォリエンスは生き物の言っていることが理解できなかった 「お前の左目が赤く輝いているだろ」 クォリエンスは鏡を見た 「本当に…まさか」 「私はお前の左目に宿った風の魔物だ」 「そうだったのか…お前の名は?」 「名は無い」 「そうか…ならクレメンスならどうだ?」 「クレメンス?」 「銀色の風という意味だ」 「悪くないな」 「良かった」 するとハリスがやってきた 「朝から賑やかですね」 「おはようハリス、僕に宿った魔物だ」 「そうですか」 「名前はクレメンス僕が付けた名だ」 「風の魔物という意味ですか」 「そうだ」 「ふぁー…朝から騒がしいですよ先輩」 アルトが大きな欠伸をしながら部屋に入ってきた 「やあ、おはようアルト」 「おはようございますアルト様」
「なにあれ」 アルトはクレメンスを指した 「あれは風の魔物でクレメンスだ、これから一緒に生活する仲間だ」 「そうかよろしく、おれアルト」
「私はクォリエンス様の世話役のハリスです」 「ふむ」 「では、そろそろ仕事を始めよう」 そしてクォリエンスの長い1日が始まった。 next story