一時の平和
買い物が終わって観光をする二人。
しかし門番が騙されたことは既に騎士団には伝わっていた
「うは~、すげえなぁ」
感嘆するラスタ。目の前には銅像が立っている。
「この街を造り上げた、言わば創設者の銅像か」
「そうみたいだな、それにしてもでけえな」
全長5m程の銅像なんて今まで見たことがない。
「この街って王国から結構離れてるんだけどな。それなのによくこんなに発展するなぁ」
「だからこそこの街を造ったこいつの像がこんなにデカいんだろうよ」
「なあ、2時間って短くねえか?」
ラスタが言う。それについては俺も感じていたから
「そうだな・・・。あっという間だった」
と同調した。
「もう少し見ていきてえけどなぁ。まあお前の言う通りこれ以上いると門番騙した件もあるしやばいかもな」
「なんだ、やけに素直だな」
少し驚いたように見せる。
「それは俺を馬鹿にしてるのか?」
やや不満気味のラスタだが、いつものことだ。すぐ元に戻るだろう。
「おい!そこのお前たち!」
「ん?」
「え?」
何者かに呼び止められた。まさか不審に思われたのか?
咄嗟にラスタが演技をする。
「何でしょうか?それにあなたは誰ですか?」
「俺は騎士団に所属している者だ。今朝門番が「観光」目的の商人に言いくるめられて通してしまったと聞いてな。この街にいる商人全員に通行証を2枚見させてもらっている。取引用と観光用だ」
マズイ。とうとうバレてしまう。俺はラスタに小声で言った。
「おい、今からこいつに商人のカードを見せろ。それに気を取られてる内に奴の後ろに回る」
「分かった。失敗すんじゃねえぞ・・・」
咄嗟に思いついた策だが、巧くいくかどうか・・・
「おい!何を話している!」
「いや~、他愛のない話ですよ。今日の晩飯を話し合ってたんです」
「そうか、そんなことよりも通行証を見せるんだな」
「これでいいですか?」
取引用の通行証を出すラスタ。
「もう片方を見せろ」
「はい・・・あれぇ?ポケットに入れといたはずなんだけどなぁ」
わざとらしく言うラスタ。それに対して兵士は
「通行証はバッグに入れるのが決められているが?芝居してないでさっさと出せ!」
と怒りながら言う
「いやぁ、すいませぇん」
「もしかして・・・お前らが不法侵入したやつグッ!?」
突然苦しそうにもがく兵士。彼が後ろに回りこんで首を絞め落とした。
「グッ!、アガッ!ガ・・・アッ・・・」
徐々に声が小さくなり、目が充血し、払おうと後ろに手をやるも、力が入らずに徐々に意識が薄れていく。
そしてついに何も言わなくなった。
人を殺した。
常人はそれだけで罪に苛まれ、葛藤するだろう。
しかし彼らにとっては何ら変わったことはない。
いつもの事だ。