夏の一日
あの日の逃亡から何か月か後、あまりの暑さに彼らはバテそうになっていた。
「あ”っつ”~」
「あ”ぁ・・・。このまま干からびそうだ・・・」
真夏日の昼に俺たちは耐え難い暑さに顔を歪めていた。
「なぁ・・・」
「なんだ・・・」
「近くの川に行って水浴びしようぜ・・・そうじゃねえとこのまま焼け死んじまう・・・」
「ああ・・・そうだな・・・そうしよう・・・」
衰弱しきった弱弱しい声で会話し合う。
「あ~、冷たくて涼しいぜ・・・」
「そうだな・・・ずっと浸かってられそうだ・・・」
気力も何もかも消え去った。このまま水と同化してしまいたいとふと思う。
「しっかしなんでこうも暑いんだ・・・。こんなんじゃ街の方とかは何人かぶっ倒れてそうだな」
「そうだな・・・」
「おい、大丈夫か?」
「ああ・・・。なんかもう、どうでもよくなってきたんだ」
気のない返事を返す。それにラスタは呆れたように
「おいおい・・・。確かにそうしたくなるのは分かるがこのまま衰弱死はごめんだね」
と返す。
「おい、これ見てみろよ」
ラスタが俺を呼ぶ。奴が指をさしたほうを見ると、見事なハンモックが作られていた。
「どうだ?俺が前々から準備して作ってたんだ。これなら少しは楽に・・・って、お前・・・俺を先にそこで寝させるのが道理ってもんじゃないのか?」
また呆れたように言うラスタ。何故なら俺はいまハンモックに乗って寝てるからだ。
「道理なんてものは俺達には必要ねえよ」
「そう言って誤魔化さないでさっさとどけろ。自分の為に作ったんだよこれは」
「じゃあなんで俺に見せたんだよ・・・。寝ろって言ってるようなもんだろ・・・」
「お前、今日はやけにダルそうだな。夏バテとはらしくないな」
俺は比較的健康体だから風邪をひくことも滅多にない。だが暑さには人一倍弱い。
「こんな暑い日に元気でいるお前の方がおかしいな・・・」
「俺はいつでも元気だからな。お前とは違うさ」
と自慢げに言うラスタ。少し調子に乗ってると思いながら俺は眠ろうとする。
「って、おい!早くどけて俺に寝させろよ!」
何か言ってるが気にしないことにした。
自分が最優先なのは無法者ならではの考え。