現状、「ヒストリカル」はどう使われているか
●私がまず調べたのは、なろう作家がどのように「ヒストリカル」を使っているかということです。
もしなろう作家・なろうユーザーの間で「ヒストリカル」がなんらかの一定の意味に解釈され、一定の使い方がされているなら、仮にそれが historical 本来の意味から離れたものであったとしても特に問題はないかと思われます。フィルターとしてちゃんと機能しているのだから。
けれども私が感じたように、本当に「ヒストリカル」がバラバラな意味に解釈され自由に使われているのならば、この「ヒストリカル」というキーワードはうまく機能していないことになる。
●では実際どのように使われているか。簡単にデータを取ってみました。
[ジャンル]:[「ヒストリカル」つきの作品数]/[同ジャンルの作品総数]/[「ヒストリカル」付き作品がジャンル全体に締める割合(%)]
異世界:623/16463/3.8%
現実世界:106/27975/0.4%
ハイファンタジー:592/45432/1.3%
ローファンタジー:270/20616/1.3%
純文学:36/8107/0.4%
ヒューマンドラマ:156/22085/0.7%
歴史:263/3075/8.6%
推理:31/3167/0.1%
ホラー:23/9872/0.2%
アクション:115/6932/1.7%
コメディー:44/12800/0.3%
VR:9/2502/0.4%
宇宙:13/1394/0.9%
空想科学:57/6028/0.9%
パニック:15/1417/1.1%
童話:30/5698/0.5%
詩:24/13218/0.2%
エッセイ:38/9037/0.4%
リプレイ:1/187/0.5%
その他:76/16257/0.5%
ノンジャンル:13/275407/0.005%(例外)
総数:2532/507662/0.5%
※データは2017年9月11日20時25分ごろ~45分ごろのもの。数が合わないのは調べた時間にタイムラグがあるせいです。
※割合(%)は小数点以下二桁目を四捨五入。統計のことはよくわからんので適当に決めました。結果、ノンジャンルだけ処理の仕方が違うことに……。ごめんなさい。
以上のような結果になりました。
「ヒストリカル」を設定している作品の割合が圧倒的に高いのは歴史ジャンル、8.6%。当然ですね。歴史ジャンルと「ヒストリカル」、相性がいいというかそのまんまだし。むしろ歴史ジャンルの小説なら全部ヒストリカルである、historical本来の意味では。
次点で高いのが異世界ジャンル、3.8%。これは「ヒストリカル」が異世界ジャンルのおすすめキーワードだからかと思われます。
三番目は意外なことにアクションジャンル、1.7%。時代劇なんかを想定するとこのジャンルと「ヒストリカル」の相性も良さそうですね。関ヶ原の戦いで剣を振るう主人公とか。
●さて、次。各ジャンルごとに、「ヒストリカル」付き作品を総合評価の高い順からいくつかざーっと眺めてみました。本当に大雑把に、です。
その結果、「ヒストリカル」の使い方についてわかったこと。
当初私が感じていた通り、「ヒストリカル」付き作品の傾向は特に絞れないということがわかりました。やはりみなさん「ヒストリカル」の意味を様々に解釈し、自由に設定して使っている。
以下、いくつか具体的にジャンルをあげて感想を述べます。
・異世界ジャンル。「ヒストリカル」作品とそれ以外に特に違いがない。
・現実世界ジャンル。「ヒストリカル」作品には19世紀イギリスなど歴史に沿った世界観が多い。ただし、特別に何か具体的な歴史的事件を扱っているというわけではなさそう?
・ハイファンタジージャンル。こちらも異世界ジャンルと同じく、「ヒストリカル」作品とそれ以外に大きな違いはない。ただし、「ヒストリカル」作品は戦記ものが多めであるように思った。 また、上位に一作だけ例外があって、その作品は本能寺の変を扱っていました。
・ローファンタジージャンル。こちらの上位作品は歴史上の国や出来事をネタに扱っているようだ。
・ヒューマンドラマジャンル。異世界・ハイファンタジージャンルに雰囲気が近く、「ヒストリカル」作品でも特別に現実の歴史を扱った作品とは限らない。
・歴史ジャンル。ジャンルの性質上当たり前だがとても史実に近い。
・アクションジャンル。時代小説っぽいものから架空世界ものまで様々で特段の傾向はないような気がする。パリ万博だとか明治維新だとか、具体的な歴史的事実を扱ったものあり。
という感じでした。
なろうの「ヒストリカル」をめぐる現状については以上です。




