窮地
アダルの手は電気に包まれている。
バチバチっと休み間も無く音がする。
アダルはにやりと笑った。
「ぶっちゃけイジャは殺してくれても構わないけどね。」
何言ってんだこいつ。皆は思った。ボルグ、イジャもはぁ!?と突っ込んだ。
犯人はアダルを見る。
「ならどいてよ。邪魔だからさ。」
しっしと手振りしながらアダルをどかそうとする。
が、アダルはどかなかった。
「あ、一つ言い忘れたよ。」
アダルは笑う。短い灰色の髪が風によって揺れる。
「遺言か?」
前によった、犯人。犯人は背が高く、アダルを見下ろした。
「いいや」
首を横に振る。じゃあなんだと聞き返す犯人。
するとアダルは笑顔でこう告げた。
「殺す権限は僕にある。何故ならば僕はイジャのライバルであり、良き友だからね。無関係に、無差別に殺されるなんて可哀想じゃん?」
ついに今まで冷静だった犯人の顔が赤くなる。怒りに震えているのだろう。
「やれっ!ナヴァローカぁ!」
ついに切れた。大きな声が校庭に響く。
ナヴァローカの砲台が光り出す。流石に危険だと警察が動き出す。
しかし止めに入ったのはまさかの国王だった。国王は皆と同様、最初は絶望したが高校生が大人に立ち向かう姿に感動してしまったのだ。
「何故です!?危ないでしょう!?」
警察は疑問しかない。しかし国王は言う。
「大丈夫だ。絶対に!絶対に...」
祈るしかなかった。今できることが祈るしかないのだ。
「ヴィバ・セントレーナ!」
超絶な闇の波動が発射された。大人でも対処できたら凄いくらいに。
「さぁ、どうする!?アヴァンク!」
なんと犯人の手についている紋章が光り出し、技の威力まで上げてしまった。
もうかわせない。目の前まで来てしまった。が、アダルは
「は!だからなんだよ!イジャを超えるぐらいならやってやらぁ!」
電気が最大限に増幅。
「アディオレーネ!」
魔方陣が何重にも重なり技を防ぐ。ただ、体力の消費がエグい程に削れていく。次第に魔方陣も破れていく。
「ぐ...お.!」
ついに魔方陣一枚にまでになった。が何とか防いでいる。
「はぁはぁ....負けやんぞ俺は...」
負けず嫌いのアダルはそう呟いた。
「馬鹿め。すぐに死んでしまう!あっはっはっはっは!」
大きく笑う犯人。しかしアダルも負けなかった。
「負けねぇっつんでんだよーがよー!!」
ついに叫ぶ。と同時に電気も光り出す。電気がアダルの体を包む。
爆発してしまった。技を粉砕することはできた。
しかも、アダルは倒れている。もう戦えない状態にある。
「アダル!!」
憑依から戻ったイジャとボルグはアダルに駆け寄る。
するとアダルについている紋章が光り出す。
そこからマペットが現れた。バンダナをつけており、外見からは、目は見えない。刀を持っており、上半身半分は肌がである。しかし両腕には鎧がついている。
「主の願いはよく聞いた。我が倒そう。」
そう呟いた。
「あらら。あんたが出てきましたか。『雷桜丸』さんよ」
アダルのマペットの名は雷桜丸。いわば、サムライだ。
「やっちゃいますかぁ...」
ボルグは雷桜丸とイジャの肩をたたいた。
校庭の土は風に吹き荒れ、舞い上がった。ボルグの気持ちを表したのかもしれない。