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7 坂の向こう側

先々週は花粉症について書いた。


花粉症とはアレルギー性鼻炎の通称、あるいは俗称といってもまあいいほどメジャーになりましたが、ではそもそもアレルギーとはなんなのか、という話をしたいと思います。


もともとは人間の持つ免疫反応が抗原アレルゲンに対して過剰反応をすることを言いまして、単に免疫反応が起きることを指すものではありません。あくまで免疫反応によって人体に有害な影響が出る状態を指します。


アレルギーが起きる原因はとんと解明されていないのが現状だそうですが、生活環境や、過剰なアレルゲンに対する曝露(つまりアレルゲンに触れすぎる、ということね)あとは遺伝と言われています。


が、その前に前回の補足にもなりますが、ヨーグルトが花粉症に効くという話。私は首をひねると書いたのですがもう少し突っ込んだ話を見つけたので紹介しておきます。


人間の持つ免疫細胞 Th1、Th2 という二つは均衡が保たれているものなのですが、何らかの結果Th2が増えるとIgEという抗体が過剰に生成されアレルギー反応を起こすということが分かっているそうです。


そこでヨーグルトに含まれる乳酸菌、ビフィズス菌、ラクトバチルス菌といったものが、この乳酸菌がTh2を抑え、抗体生成を抑える効果がある、すなわちアレルギーを抑える可能性があると言われておりますので、当然ですがあながち根拠のない話でもないということです。またアレルギー症状のある子供は腸内の乳酸菌が少ないという報告もあります。


で、それはそれで体の中のメカニズムの話でありまして、原因的にははっきり分からないことには変わりがありません。


ここのところ、過去にドイツの医学チームが研究したのですが、環境衛生が大きく関わっているのではないかという結論。といいますのも、乳幼児期に衛生的であればあるほどアレルギー体質になりやすい、という結果が示されたからです。これを簡単に書けば、幼児期に公園の砂場で遊んだかどうか、といったところでしょうか。


近年ではとりわけ除菌殺菌滅菌ととにかく菌と付くものはすべて排除しなければならないとでもいった風潮で、正しく無菌状態で育った子供が増えているのはご存知のとおり。


むかしむかしは「無菌室で育った」という言葉は侮蔑の意味を含んでいたものですが(箱入り、世間知らず、軟弱、虚弱などを指す)もはやテレビでも「軟弱者!」なんて言葉は、もはやセイラさんを最後に絶滅してしまったのかもしれません。



幼少期のことを今更言ったとて仕方がないのですが、現在の老人が妙に長生きだというのも関係しているのではないかとは思えます。衛生面、環境面、精神面においては現在から考えれば最悪の状況だったでしょうから、世の中がどれほど悪く傾いても「あのときに比べれば」と心身ともに耐えることもできるのではないのでしょうか。


ひょっとすると彼らを頂点として我々やそれより下の世代は逆に寿命が縮む可能性もあります。


あとは、薬というものがかなり身近になったということも関係はしているでしょう。


風邪をひいたら薬を飲む。まっとうなことではあるのですが、この薬も曲者で、薬というのは代行業者さんみたいなものであり、本来自分でやらなければいけない部分をお金を出して代わりにやってもらっているわけです。


そうなると、代行してもらったぶん自身はお金を消費するだけで済みますが、また同じケースに出会った場合もまた、代行してもらわねば解決ができないという連鎖に陥ります。それだけならばいいのですが、これがクセになると「代行業者さんにしてもらうべきこと」と定義付けられ、自分でやるという頭をなくしてしまいます。


疾病に罹患して薬を投与するという行動はこれと全く同じことです。

薬を飲み続ければやがて効きにくくなります。これは体が薬を「異物」と認識して肝臓が分解しようとするからで、二度目、三度目と続くと体は効率よく薬を分解してしまうようになります。


このサイクルが薬が薬としての効果を発揮する前に行われるため、薬が効かなくなるのです。特に市販薬は効きが悪いと売れませんからかなりインパクトが強く作られており、体への負担も大きいため常用するとすぐに効かなくなります。


いわゆるシャブも酒もタバコも常用すると量が増えていくというのも理屈は同じです。


人間にはもともと恒常性を保つという機能がありますから、実のところ風邪くらいで薬は飲まないほうが今後を考えてもリスクを回避できます。要するに自分で治したという機能を体に覚えさせると対応も早くなるということです。


怪我も同じくですが、刀傷が絶えない戦国時代の武士などはやはり異常に傷の治りが早かったそうです。


無論切れたものが戻らないという場合は往々にしてあったでしょうけども、衛生状態も良くない、満足な医療もない中で、止血したらとりあえず治療は終わり、みたいな環境だったにも関わらず、深刻な感染症にもかからないのは、そもそもの衛生環境が低位にあったからではないかと思われますし、薬のたぐいが極端になく、ほとんどが消毒程度の効能しかなかったため、自身の回復力だけが頼みの綱という背水の陣だったせいではあるかなと思います。


昨今では内疾患系なり外傷系なり体を動かして活性化させるほうが治りは早くなるというのが常識で、寝たきりになるのは精神衛生上においても逆に回復が遅くなるそうです。もちろん激しい運動はNGですが。


ま、そんなことをつらつら書いていると、打ちのめされて強くなる、みたいな話にしか聞こえんわけですが、現実の人生はチートなどないわけですから、やはり従来型の努力と根性と挫折と失恋で人は強くなってゆくしかないのだなと。


ここで一つ格言を。


「坂を登った先に見える景色――今はストリートビューで見れるよ」


ハイ、台無し。



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