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47 9999回のラブコール

テレアポ業務というのがある。

テレフォンアポイントメントというカッコいい横文字仕事です。


世の中には電話をするだけの仕事、というものがあります。訪問販売の営業方法のひとつです。

電話をして、アポイントメントをとって、営業につなげる仕事。


しかしながら善良な市民は、しばしばこのテレフォンアポインターによる実生活に妨害工作を受けます。自営業ならばなおさら、仕事を中断させられて、この電話に対応させられます。

電話帳から、もしくは謎の「名簿リスト」というものにうちの電話番号が登録されていることがあるためです。お店をやってる人は、お客さんからの電話かもしれないから取らないわけにもいきませんよね。


まず、この名簿リスト。

一度訊いたことがあります。「オタクはどうやってうちに電話かけてきているんですか?」って。

そうするとテレアポの姉ちゃん(推定35歳主婦パート)はこう言う。

「正規の名簿業者から買ったリストにより、お電話させていただいています」と。

「それにウチの番号が載ってるわけね?」

「さようでございます」

「じゃあさあ、その正規の名簿業者ってなんなの?」と私。

「いえ、私ではわかりかねます」と姉ちゃん。

「名簿業者の業者名教えてよ」

「複数にわたりますので、私からは何とも……」

「えっ、いいやん。別に名前くらい教えてよ」

「私ではわかりかねます」

「あなたの会社と取引してる業者さんでしょ? 把握してないの? 正規なのに?」


ま、私が何をやりたかったかっていうと、その名簿業者とやらに電話をして、うちの情報載せんなボケェ! と言いたかったのもあるのですが(もちろんそんなことはできないのだけど)、そもそも彼らが持ってる情報が「私がねつ造した情報」だったからなんですよね。つまり間違った情報。


「個人情報ねつ造」と言うと印象悪いですが、実際に公的なものをどう探しても、彼らが持ってる情報は出てこないはずなんです。これは私がプライベートで使うものなので。(要するに名前と住所が一致していない)


という事はどういうことかと言うと、プライバシー侵害確定なわけです。情報が漏出してるんですよ。どこからかはわかりませんが。


だから、正規の名簿業者ってなんだ? と問いたいの。

結局上の人間まで出させたけど、答えは得られず「お答えできません」という歯切れの悪い結末で締めくくられました。


ま、当然ですわな。


他にもテレアポにはローラー作戦ってのがありまして(実際にそう呼んでるかどうかは知りませんが)これは書いて字の如く、電話帳の上から全部かけてゆくという手法です。古典的な方法ですが、何百人か何千人かのうち一人くらいは話を聞いてくれる人がいる、かもしれないという望みで延々と電話を掛けます。


しかしながら昨今では、電話帳もなくなりましたから、この方法は使われなくなりつつあります。

それでも、不審な電話がかかって来る。

「ご主人様でしょうか?」と。

「奥様居らっしゃいますでしょうか」と。

個人宅に掛けたつもりでいる。


この場合、うちは店舗なので~、と返すのがまともな対応ですが、私がまともな対応するわけありません。


「どうやってこの電話かけてるんですか?」と興味があったので聞いてみますと。

「電話番号下四桁0001から順番に掛けさせてもらってます」という驚愕の事実を教えられた。


まじか。


つまりこのテレアポのおばちゃん(推定55歳主婦ベテランパート、旦那とは別居中)は一人じゃないとしても、一つの営業に対して最低でも9999回受話器を手にして、10ケタのプッシュ番号を9999回押して、同じ言葉を9999回繰り返しているわけです。繰り返すんですよ。


何時間かかるんでしょう。

単純にガチャ切りされたとしても、一回につき五秒、コールの時間も含めれば30秒くらい普通にかかるでしょう。中には使われていない番号もありますが、私のように無駄な話をする場合もあります。

30秒×9999回=299970秒=83.325時間かかります。平均労働時間が6時間ほどだったとしても(電話を掛ける時間帯が限られるため)14日弱かかります。


これだけやっても成果は0かもしれません。


そもそも、「いずれの誰かもわからない相手にあんたは掛けてるのか?」と、問うと。

「そうでございます、訪問販売でも個人様のお宅に伺ってですね云々・・・・・・」

「失礼な話だな」

「ええ、ごもっともでございます」


失礼を承知で、月の半分という時間を延々と電話するおばちゃん。

なんか、もっといい生き方ないのだろうか。

仕事だから、飯の食いだねだから仕方ないのかもしれないけど、この、誰からも歓迎されず、誰からも感謝されず、自分自身を認めることもできないような作業に日々あまんじているおばちゃん。


マジで、もったいない。


お前に言われたかねーよ、と言われるかもしれないが、あえて言おう。


カスである、と。



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