22 雨は滴る
ハイ七月ですね。 六月は雨真っ盛りで終わった感があります。私的には今年は梅雨らしい梅雨だったなぁという感想なのですが、関東は水不足だったようで様々な感想があるかと思います。
梅雨とはいわゆる雨季のことで、語源としては非常に曖昧で、梅の生る時期だから、というもっともな感じの物からカビが発生しやすいゆえに「黴雨」という言葉が転じて「梅雨」になったと、もっともらしいものまであります。
ちなみに中国で梅雨は「梅雨」と書くそうです。台湾では「芒種雨」とも。ですのでそのあたりの影響を受けている沖縄地方では同じく「芒種雨(ボース―アミ)」と呼んだりします。
こういった地方性気象現象の呼び名一つで、文化や民族がどう動いたのかがよくわかるのは面白いところです。
で、私もずっと勘違いしていたというか、信じていたんですが、「五月雨」ってのは実は梅雨のことを指します、と。
と申しますのも、古語で五月、すなわちサツキは旧暦で新暦の六月ごろに該当するためで、現代表現で風流に五月に降る雨を五月雨と呼んでしまいたくなりますが、用法として間違っていることになります。
ちなみに梅雨の雨のように長くだらだら続く状態を、(雨に限らず)「五月雨式」ともいいます。なるほど、合点がゆきますね。
そんな水っぽい季節。少し水にまつわる話をしますと。
「水も滴るいい男」とよく申しますが、現代ではあまり使われなくなってきている言葉の一つであります。
これの語源と申しましょうか、どういう意味かといいますと。
単にみずみずしくて、いきがいい、という感じの意味になります。ジメッとしているんではありません、しっとりつやつやしているんです。まあ色男って感じですかね。水はじき度80パーセントくらいの。
ただ、男女ともに使える麗句であったそうですが、どうも男の方しか残らなかったみたいで、その経緯はおそらく私が推察するところ、言葉的に水とは違っても男が汗を流して働いている姿に「胸キュン」する女性は昔から少なからずおられたからではないかと。
仕事をしていて、振り向いた瞬間額から零れ落ちる汗がキラリ……
スポーツドリンクのCMなどによく使われる演出ですが、まあ幻想でしょう。
汗は頑張っているように見えることから、同じだけの仕事量をしていても体質的に発汗量の多い人は何かと得なんじゃないだろうかと思ったりしますが、日本橋(にっぽんばし:いわゆる大阪の秋葉原みたいなとこ)界隈をハアハアいって汗をだらだら流して練り歩くオタは美しくも何ともありません。
高校大学とスポーツで汗を流していたさわやかな御仁も社会人になってスーツを着だすと、梅雨だろうが夏だろうが仕事環境は適温が保たれており、そうそうだらだらと汗をかくようなこともなくなり、胸キュンされる機会はあまりなくなったかと思います。
さらに、さわやかに仕事ができる人などそう多くはなく、ノーストレスというわけにはまいりませんで、大半は冷や汗と脂汗を混じらせながらジットリとスーツの中で流しているのが本来の仕事人の汗であるだろうなと。
もはや胸キュンされるというより、自分の胸がキュンキュン傷んでいますので心身ともによくない汗ですが、現実というのはそんなものであるということで。




