19 原発と放射能
原動機すなわちエンジンってスゲーなーっていつも思います。考えた奴は天才だな。
逆に我々はその既にあるものによって車を動かしたりしているだけで、生み出す奴の足元にも及ばんと思うのです。
そのエンジンの始祖ともいえますのが、外燃機関である蒸気機関。産業革命ですな。
それをちょっとばかり高級にして強力にしたものが原発、すなわち原子力発電設備と言えます。
原発力とはそもそも放射性物質のミクロのエネルギー特性を利用して、それを熱に換えて電力や動力や破壊波に利用しているんですな。
東北の震災時に騒がれていた放射性ヨウ素131、セシウム137だとかいうのは原子力施設からしか出来ない放射性物質でして、いわゆる放射能漏れの問題はここから始まっております。
そもそも放射能ってなんじゃい?ってのは、皆さんお思いの方もおるでしょう。
放射性物質を略せず示すと、「放射線放射能力を持つ物質」であって放射能という得体の知れない波動的な何かが漂っているわけではないということです。
ただ、花粉なんかよりも極々小さいものですから(当然目に見えません)果たして市販のマスクなんぞで内部被曝が避けられるのかははなはだ疑問です。
無論、距離が離れれば、放射線を放射する能力も落ちてゆきますから、原発から離れることで安全は得られます。
ただし、放射性物質は当時のように空気中に一定量チリなどに付着したり混じったり、排出され風に乗り、雨に流されると各地に拡散してしまう問題が出てきます。
と、いうのが東電、保安院ならびに政府の公式見解でして、まあ事故ですから「適当な対処」をすれば防げるものですと言っておりました。
が、
わたし、思うんですがね。
過去にも何度となく原発事故ってあったんですけど、その時々で「放射能は漏れていない」とアナウンスしてきてはいたんですよね。でもそれは、「漏れていたけど、漏れなかったことにしよう」ってしてきただけじゃないのかなぁって思うんす。
今回は派手に原発そのものが爆発なんてしちゃったものだから、世間に言い訳できなくてガイガーカウンター持ち出さなきゃいけなくなっただけで、これまでも、実質通常稼動時にも放射能って普通に吐き出されていたんじゃないのかねぇ、と。
ここのところ少し予備知識として覚えておいていただきたいので書いておきます。
広島はウランを使っていました。長崎ではプルトニウム爆弾でした。
当時の放射線の測定記録などはありませんが、いずれも上空の高い位置での猛烈な爆発であったことから、広い範囲に放射性物質を飛散させております。
しかしながら、物質の量的に発電所より少ない(搭載された物質が全て反応したわけではない、らしい)ことから、その地に雨となって降り注いだ経緯もあれど大量に戦後から現在までもとどまっているということではないようです。
ちなみにプルトニウムやウランは殆どがアルファ線という放射線を出しますが、これは紙程度でも防げます。なので土やコンクリで埋めてしまうと殆ど放射線が出てこなくなります。
汚染された土砂を撤去し、撤去した後の場所に別の場所から持ってきた土砂で埋めたので広島・長崎は安全なレベルだそうです。
尚、原発の副産物であるヨウ素・セシウムの同位体はベータ線が主な放射線。
アルファ線より透過力に優れるが、なかなかエネルギーが減らないのでこちらは厄介で、防護服と呼ばれるものもこれらの放射線を防ぐ役目はまったくありません。(ですから20キロとか30キロ圏内で防護服を着て避難勧告を行っている人々は解って着ているのか、避難しない住民へのパフォーマンスなのか、物々しい雰囲気を出すには充分な効力を持っていますが)
ちなみにベータ線はアルミの服なら防護できます。ガンマ線は鉛の鎧が必要です。どちらも着て動くことはできませんが。
つまり一般人の個人装備では限りなく被曝回避不能です。ですから、原発内の作業員は「被曝しながら作業」しているということです。防護服は個人の中身を防護するためのものではなく、汚染された原発作業員から外の世界を防護する間接的な役目があるだけです。(汚染物質を服に付着させてそのまま廃棄するため、圏外への持ち出し、再使用は原則ありえません)
で、先にも述べましたが改めて説明しますと、放射性物質は、放射線を発生する物質そのものを指しまして、基本的には目には見えないほど小さいです。ただ被爆地の空気中では何らかのチリや粉塵、あるいは液体などと結びついてセットで飛んでますから、目に見えるといえば見えるといえます。(広島の黒い雨などが典型的な例)
もう一度言いますと、放射能は放射線を出す能力で、放射線はエネルギーです。
その放射線と似ているものでいうと、磁力みたいな感じに捉えればわかりやすいと思います。
磁性体物質(磁石)=磁力を発生させる物質、磁力線=磁力のエネルギー。鉄に磁石くっつけておくと磁石となり、ほうっておけば弱くなってしまうのと近いです。
放射性物質は放射線を出しきると違う物質になり、最終的には放射線が出なくなります。この放射線を出さなくなるまでの期間が半減期といわれるものです。ですから半減期が8日のヨウ素131は初期から新たに発生しない限りこの先検出されることはありません。ないはずです。
それでも、農作物や水産物に対してなんら影響がないかといえばそうともいえません。人間でも内部被曝をすれば何らかの疾病を抱えるリスクがあるのですから、それよりも構造が単純な動植物らが、ある程度の期間後に汚染物質を排出するにしても遺伝子に傷がつくということは大いにありえます。
チェルノブイリなどでは未だに奇形の動植物が現出しているそうですから、根の深い問題になることはこの先目に見えています。
というあたりまでが基本的な「放射能」の基礎知識。
周辺住民もちょっと体調悪いくらいなら即それが原発のせいだとは思わないでしょうし、世間の同意も得られにくいでしょう。ま、原発建ってからの環境や健康被害に関しては枚挙に暇がありません、というのが事実ながら黙殺されている現実があるとかないとか(このあたりの証言は慎重に精査しなければなりません)
ともあれ原発で働く人間が被曝でがんにかかり死亡するケースも後を絶たないそうで、そういうの、大きな問題にならないのは、実際東電やメーカーの人間が作業しているわけではないからなんです。
当時事故原発の外の対処をしているのは自衛隊と消防局で、中の事やっているのは素性も明かせない「関係協力企業社員」でありまして、なんかその立ち位置が真っ黒ですごい謎。
被曝した作業員は、多分あんまり状況知らされないで作業させられてたんじゃないかなぁ、なんて邪推もするんですけど。本人たちとしてはさっさと作業を済ましちまおうぜ、といったノリだったのではないでしょうか。
もう諦めてはいますが、現在日本には稼動中の原発が70基あまりあります。これらは築20や30年といったものも含めてありますが、先にも言ったように、人間の作ったものに永久や絶対はないわけで、いずれ老朽化、つまり経年劣化による破損が、いずれは起こりえます。
もちろん壊れると、今回のように爆発したり、放射能がだだ漏れになります。
じゃあ、古くなったら壊れる前に炉を止めてしまえばいいじゃないか、ということになりますが、原発とはそうそうとめる事が出来ない施設でして、スイッチ切ってハイおしまいというわけにはいかないんです。
現在各地の原発が運転停止はしていますが、止まっているわけではありません。
ひとつは余熱を完全にとるため、ひとつは施設そのものを朽ちさせないため、もうひとつは放射能漏れを防ぐため、の三点です。いずれも重複する項目では有るのですが、熱を帯びたまま冷却施設を停止すると、つまり福島第一のように炉心が露出してメルトダウンにつながるわけです。
さらに施設の老朽を防ぐというのは、自動車の水冷エンジンなんかによくあることですが、しばらくメンテしていなかった車は冷却液が錆びてまっ茶になっていることがあるんですが、あれは、いわばシリンダーブロックやら配管やらが内側から錆びている証拠なんですね。
原発も水冷ですから、内圧と循環がなくなってしまえばそのような現象がおきてしまうわけです。当然いずれ配管がつまるなり穴があくなりして、そこから漏れます、放射能を含む水が。
さらに、放射性物質により半減期というのが決まっておりますが、長いものですと何十万年なんてのもありますから、生まれたが最後ほぼ永久に放射線を出し続けるという厄介なものもあります。
いまのところ人類史上、核廃棄物と呼ばれる使用済みの核燃料の完全処理が出来た例はありません。そういうものが日々蓄積されている現実というものが、実は私たちの豊かな生活の根底に転がっているわけです。
ですから、たとえ原発を止めて廃炉の手順を踏んだとしても、あまりの強力な放射線のため炉心に触れることすら出来ず、解体もままならない、無論解体出来たとしてもその時に多量の放射能を帯びた廃棄物が出てしまいます。
そんなわけで、原発とは泳ぎ続けなければ死んでしまうマグロのような体をなしているわけです。
原子力はもはや人間の技術の域を越えたシロモノであるということがこれだけでもお解かりではないかと思います。
ま、しゃあないです。
出来てしまったものは。このまま一蓮托生、行くとこまで行くしかありません。技術の成熟を待つか我々が放射能に汚染され国土を失って原子力難民となるか、まで。
宮崎駿がゆうてました。
「土地がなければ緑は育たない、緑がなければ人間は生きられない。」
ですから、土壌(海も含む)を汚染した時、人類に復興はもはやないと知るべきだと、思います。




