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悪役令嬢の国外逃亡計画~「見捨てないでよ」と彼女は言った 編~

掲載日:2016/01/03

私は、婚約者であるアデラール・ゲヴュルツトラミネール第一王子様と他数名の男性を侍らせているリリア・ルシヨン様をイジメています。

ぶっちゃけ、気に入らないからです。

そして、リリア様と階段ですれ違った時にリリア様の近くにいたアデラール様は私の腕を掴んで階段から突き落としました。

「きゃ―――――!ブリュエット様―――――!」

私が意識を失う直前に聞こえてきた声は、リリア様の泣き叫ぶ声でした。


はじめまして。

つい先ほど、前世の記憶を思い出したブリュエット・リムーラングドック公爵令嬢です。

ここは、乙女ゲーム『恋が紡ぐのは、君への思い』の世界。

テンプレで説明不要ですが、魔力の高いヒロインは学園に拒否権なしの強制入学。

庶民なヒロインとそこで出会う身分の高い攻略対象ヒーローたちが、恋して恋愛を成就するというものです。

そんなことよりも、どうしましょう。

公爵令嬢として、人として、リリア様に酷いことをしていました。

穴があったら、今すぐその穴に入りたい!

今まで全く感じなかった罪悪感が、刺激されます。

私は、なんてことを!

私が保健室のベッドの上で唸り苦悩している最中に、

「大丈夫ですか、ブリュエット様!」

勢いよくドアを開けて、リリア様は保健室の中に入ってきました。

そして、私に抱きつきものすごく泣き始めました。

さすが、乙女ゲームヒロイン。

無自覚に罪悪感を刺激するのですね。

ヒロイン、恐ろしい子。


例え罪悪感があろうが、私はリリア様へのイジメを止めません。

それは、感情の自制を全くしないアデラール様を見限ったからです。

もしも、私以外の方を階段のあの高さから突き落としたなら確実に死んでいましたから。

確かに私のリリア様へのイジメは悪質でしょう。

だからといって、あの行為は許されることではありません。

私が罪悪感と戦いながらリリア様へのイジメをしていたある日のこと。

よく見る女子生徒に、リリア様は階段の一番上から突き落とされていました。

私はリリア様が階段の踊り場にぶつかる前に風魔法を展開させ、落下による衝撃を防ぎました。

リリア様の様子を見るとどこもぶつけたところがなく、ショックで気絶しているだけのようです。

一瞬、保健室に運ぶことも考えたのですが私の目的のためにはそれができません。

私はすぐに転移魔方陣を出現させ、寮の自室へと転移しました。

寮の自室に着くとメイドはすぐに察し、リリア様を寝かせるためのベッドを整えました。


「ちょっと待ってウソでしょ―――!」

リリア様が、目を覚ましたようです。

「おはようございます。ヒロインさん」

「あれっ!?ブリュエット様って、ひょっとして転生者!?」

「えっ?」

「だって、私のことを『ヒロイン』って言ったでしょ」

「あら...」

私は、つい視線を泳がせてしまいました。

「でも、ブリュエット様は前世を思い出したのに、どうして私をイジメていたの?」

「それは____」

私は、この世界が乙女ゲームだと思いだしたこと、アデラール様が次期王であるにもかかわらずヒロインに夢中になり私を冤罪で嵌めようとしていること、ゲーム内ならともかく現実に庶民に夢中になり仕事を放棄してることから『この国、将来ヤバくね?』と思ったことを話しました。

私の話を聞いているうちに、リリア様の顔色はどんどん悪くなり、

「イヤァ――!私ってば、詰んでる、詰んでる、詰んでる――――!」

現実を理解してしまったリリア様は現在の状況が、いろんな意味で詰んでいることに気付いてしまって混乱しているようです。

なんて、不幸なことでしょう。

リリア様は無自覚に、逆ハーレムルートを突っ走っていたのです。

リリア様が、転生ヒロインなら『ざまぁ』と笑っていられたのに。

「あっ。ひょっとして、ブリュエット様は私を見捨てようとしてる?ダメよ!見捨てないでよ!」

「前世の同郷として見捨てはしませんが、私は親友からこのゲームをさせられていたので、詳しくありませんよ」

「それなら、大丈夫よ!私は、前世で『乙女ゲームオタク』だったもの。全ルート詳しく言えるわ」

「なら、大丈夫ですね。新たな生贄ヒロインを仕立て上げればいいですから。『真実の愛(笑)』に目覚めた彼らは、チョロイン級のチョロさですよ。それなりに礼儀知らずでずけずけものを言う可愛らしい女の子が現れたらきっと、物珍しさも手伝ってそちらにすぐ堕ちると思います」

「うぅ~ん。否定したいけど、否定できないぃ~」

リリア様と相談し、こちらに都合のいい可愛らしい女の子を『生贄ヒロイン』に仕立て上げました。

そしたら、驚くことに彼らはリリア様の取巻きと化したことを忘れて、あっという間に生贄ヒロインに堕ちていきました。

私とリリア様は、非常にビミョーな気持ちになったことは言うまでもありません。


そして、きたる『私とリリア様への断罪(笑)の日』。

アデラール様とその仲間たちが、私とリリア様がやったという捏造した悪事を有頂天になりながら得意顔で告げていく。

そのことに対して、悉く否定していく王様。

それに続く王妃様を始めとした国の重鎮たち。

本日は、冬季休校のための終業式。

なぜ、そんな場で国の重要人物たちが集っているかというと、アデラール様の妹君である病弱な第一王女トリッシュ様の我儘を叶えるためです。

トリッシュ様と王妃様が、最近とある小説にハマっているのです。

そう、『ざまぁ系小説』です。

内容はいたってシンプルで、イケメン王子とその仲間たちに冤罪で嵌められた令嬢がいろんなシチュエーションでざまぁするシリーズもの。

その小説で重要なのは、王子がイケメンであること。

トリッシュ様は、小説のイケメン王子に兄であるアデラール様を当てはめて読んでいらっしゃるのです。

アデラール様は、トリッシュ様が病弱ということでかなりの意地悪と侮蔑を彼女にしています。

そのことで悔しい思いをされているトリッシュ様に気晴らしになればと城に勤めるメイドがその小説を進めたのが、この茶番のきっかけです。

ちなみに、アデラール様と違ってトリッシュ様は城に勤めている者たちに愛されています。

そんな理由で、リアルざまぁができるということでアデラール様と仲間たちの暴挙が見逃されたのです。

「というわけで、アデラール。貴様の非道な行いにより、ブリュエット嬢との婚約は破棄する。そしてその結果、貴様の次期王としての資格は剥奪する。貴様は王族としてはしていけないことをしすぎた。だが、お前はこのことで周りに逆恨みをするだろう。それゆえチャンスをやろう」

「父上、やはり私を信じてくれるのですね...!」

感動的に言っているアデラール様ですが、これは新たに高い所から突き落とすための王様の試みですね。

『人の話くらい聞けよ』と素敵な笑顔を浮かべる王妃様を見なかったことにしました。

なお、この状況はトリッシュ様の自室に魔法道具を介して生中継です。


私とリリア様は、トリッシュ様に勉強を教えるのと引換えに『隣国への移住権』を手に入れました。

私たち二人は、学業面で学園始まって以来の天才と言われているのですよ。

その間に、トリッシュ様は体力の回復を努力しました。

実は、トリッシュ様が病弱だったのはアデラール様がトリッシュ様に死に至る程度ではない毒を盛っていたためです。

私とリリア様がそのことを見抜き、トリッシュ様とアデラール様に出される食事のお皿を誰にも見破られることのないよう注意して交換しました。

結果、...楽しみですね!


トリッシュ様が時期女王として、文句のつけどころがなくなった時に私とリリア様は隣国に移住しました。

引き留める声もあったのですが、前の舞台の役者はここから去らないとですしね。


私とリリア様は、地味魔法で隣国スグレモ国で始めた商売を成功させました。

派手な魔法より、地味な魔法の方が凡汎性が高いのですよ。

始めた商売がお客様に信用され優良だと判断された頃、リリア様はスグレモ国の王様に見初められました。

実はその王様、乙女ゲームの隠しキャラであるキット王子様なのです。

今は、王様ですが。



とりあえず、リリア様とキット王子様の恋の行方の結果だけ言っておきましょう。

『ヒロインは、乙女ゲームの世界から逃げ出せなかった』っと。

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