第4話 雪ちゃん
雪ちゃん、個人的に好き…。
「え…雪…ちゃん…何の話…?」
雪ちゃんは、寝ている私を見て言う。
「本当に鈍感だね、きなちゃんは…」
そういうと、雪ちゃんは、
私のほっぺにキスをした。
「え?…ちょっと…雪…ちゃ…ゲホッ…」
やめて…!私、舜斗にファーストキスをしてほしい…!
やだ…!
舜斗が、いいの―
雪ちゃんは、いたずらをして見つかった子供のようにニヤリと笑った。
「して欲しくないの?」
「…」
雪ちゃんは、私のおでこをそっとなでた。
あぁ、こうして見ると雪ちゃんは、可愛いな。
私と同じ茶色の髪に、黒の瞳。
男の子としては、可愛いと思う。
これなら、幼稚園のときもてていたのが分かる。
でも、やっぱり舜斗のことが―
「やっぱり、舜斗にしてほしいんだね」
何で、そのことを知ってるの…?
私は、小さくうなずく。
「可愛いよね、きなちゃんは。好きな人に会うと、赤くなるのも可愛いよ」
「え?」
雪ちゃんは、びっくりした顔で言った。
「気づいてないの?」
「な…なんの…こと?」
何のこと?
私、好きな人なんか…いない!
「好きなんでしょ?舜斗のこと」
舜斗のこと…?
あ、そうか。
好きだったんだ。
舜斗に会うと、ドキドキするのも、全部そのせいなんだ…。
苦しくなるのも
顔が赤くなるのも
全部、舜斗が好きだったんからなんだ―
涙が出てくる。
「え?ちょっと、どうしたの。きなちゃん!?」
雪ちゃんが、私の涙をふいてくれる。
「あ…ありがとう…私、舜斗のこと好きだったんだ…!」
涙が、あとから、あとから、出てくる。
「きなちゃん…」
雪ちゃんが、また複雑な顔をする。
ありがとう、ありがとう。
私の、気持ちを気づかしてくれて。
「ありがとうー」
雪ちゃんは、私の髪をなでる。
「何、言ってんの?僕、きなちゃんのこと好きなんだよ?」
え?
「何で…?」
「幼稚園のころ、約束したじゃん。」
幼稚園のころ…?
私は、記憶の中を探ってみる。
あ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『きなちゃん、ぼくのこと好き?』
『うん、大好き』
『じゃあ、これからもずっと一緒にいようね』
『うん!』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「で、でも、あんなの、昔のことだし…」
雪ちゃんは、またニヤリと笑う。
「約束は、や・く・そ・く♪」
雪ちゃん…。
「困った顔もかーわいい♪」
雪ちゃんが、私の顔に手を近づける。
やだ…!
私は、雪ちゃんの手をはらう。
「分かってる。無理やり、きなちゃんを、連れ出したりしない」
〈ガチャッ〉
舜斗…!
雪ちゃんは、立つ。
雪ちゃんの髪の毛がサラッとなびく。
「ただいま〜…って何してんだ?蓮」
雪ちゃんは、舜斗に耳打ちする。
でも、しっかり聞こえた。
「勝負だ…!舜斗!」
何のこと…?