第12話 慌しい朝
「紀奈紅様。おはようございます」
へ?
私のまわりを数十人の男の子がかこんでいる。
「お…おはよう…」
何でこんなにいるの??
「きなちゃんのファンかなぁ?」
私のファン?
私そんなに可愛くないとおもうんだけど…。
「紀奈紅様、お荷物お持ちいたします」
「あ…ありがとう」
なんか、変な気分…。
「ねぇ…」
私は、荷物を持ってくれた眼鏡をかけている男の子に話しかける。
「なんでございましょうか?」
「何で、こんなに私の周りに人が集まってるの?」
男の子の顔が「そんなこともわかんねぇのかよ」みたいな顔になる。
わかんないのだめかな…。
「紀奈紅様がとっても可愛いからですよ」
え?
「私が!?」
そんなわけないよ…。
よく言われるけど…。
生まれてからこの顔だからわかんない…。
「あ!もう、ここでいいよ」
私は、男の子からカバンを受け取る。
そして、笑顔で言う。
「ありがとう」
すると、みるみる男の子たちの顔が赤くなる。
「ど…どどどど…」
どどどど?
「どういたしましてっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そういうと、男の子達は走っていった。
変なの。
「きなちゃんは鈍感だねぇ」
「鈍感?」
雪ちゃんは、笑う。
「舜斗と一緒で」
舜斗と―?
一緒…
どんな理由でも一緒っていうのはうれしいな
何で雪ちゃんは私の恋の応援をすることのほうが多いんだろう
わかんないや…
「ゼェゼェ…蓮…紀奈紅…」
舜斗!!
「どうしたの?」
舜斗、何でここにいるの?
紗紀といっしょじゃ…。
「逃げてきた…。何かしつこかったから」
え?しつこい…?
もしかして紗紀、舜斗のこと…。
「質問攻めだぜ。兄弟のこととか、動物の話とか」
あ、そっちのしつこいね。
びっくりした…。
紗紀が舜斗のことスキなんてありえないもの―
「紀奈紅…ハァ…」
「な…何!?」
舜斗はまだ苦しいみたい…。
「荷物…持って…ちょっとの間」
「いいよ」
私は舜斗から荷物を受け取る。
ずっしり重い荷物―
「紀奈紅!蓮!舜斗!ここにいましたか」
竜牙!!!!
「探しましたよ」
竜牙は困った顔をする。
「杏実は?」
「2組でわかれた」
杏実、2組だもんね。
「舜斗…」
「何だよ。竜牙」
「今日、陸上じゃありません?…」
「あーーーーー!!!!!!!!!!!」
舜斗は、私が持っている荷物のことも忘れてどこかに走っていってしまった。
「舜斗…荷物…」
「ま、いいんじゃない?」
雪ちゃんが私が持っている舜斗の荷物をとる。
「雪ちゃん!」
「僕が持ってる♪」
私が持ちたかったんだけど…。
いつでも、持てるしいいか。
「よろしくね。雪ちゃん」
「はいよ♪」
雪ちゃんは、スキップで教室の中に入っていった。
「ふふ。雪ちゃんは、元気だね」
「そうですね」
はっ!!
今竜牙と二人っきり…?
なら、あのこと聞けばいいんじゃ…。
「ねぇ…竜牙…」