02 ベッドとバナナ
ジリリリリリリリリリ……
翌朝、聞いた事の無い金属音で目覚める。何事かと音のする方を見ると、拷問係が眠そうにベッドから出てきた。
パジャマのまま白衣を羽織ると、スリッパをペタペタ鳴らしながら椅子に座って引き出しからバナナと牛乳を取り出して食べ始めた。
いや、だから何で引き出しからバナナと突っ込みたかったが、迂闊にしゃべると昨日の二の舞になる可能性大なので静かに眺める事にした。
バナナを牛乳で流し込むと引き出しからもう一本バナナを取り出してこちらに向かって来る。
ペタペタと鳴る足音が怖い、昨日の悪夢が甦り冷や汗が流れる。……きっと俺は今、真っ青な顔をしているだろう。
ペタリと足音が目の前で止まるが何もしてこない。じっと俺を見ているだけだ、少しの沈黙が恐怖のためか長く感じる。
「朝食は抜きだな、昼に期待しとけ」
踵を返すと手に持ったバナナを剥いて食べながら歩き始める。
助かった、正直そう思った。安心したものの昼が来るのは怖かった。
昼前、数人の兵士が俺の傍にベッドを持って来る。安物感たっぷりだが拷問用とは思えない普通の簡易ベッドで上半身側が若干斜めに上がっている。
俺はベッドに寝かされる形で手足を鎖で繋がれたが、寝返りを打つくらいの余裕があり、思いもしなかった待遇改善が嬉しい。
昨日の事なんて無かったかの様に拷問係の少女が天使に見える。
拷問係……そういや名前を聞いてないな、発言の機会があったら聞いてみよう。
兵士達が帰ると少女は引き出しから何やら食材を取り出しフライパンで炒め始めるとソースの香ばしい匂いが部屋に充満する。
なんとも美味そうな匂いに喉が鳴る。料理が出来上がったのか皿に盛るとそれをズルズルと食べ始めた。
見た事の無い料理だが旨いに違いない、それは少女の食べる姿からも伺える。
食べ終わった少女はバナナ・リンゴ・卵・牛乳を取り出すと、大き目のガラスの容器に入れて何やら呪文を唱える。
魔法自体は珍しくもなかったがそんな使い方は初めて見る。刻みながら混ぜてるのか? 変な魔法だな。
数瞬後には容器に入れた食材が混ざった液体となっていた。そして棚から何やら見た事の無い機材と布を取り出して容器と一緒に持って遣って来きた。
希望も絶望も無いそんな無機質な顔をした彼女が俺を見下ろすと。
「最後のチャンスだと思って聞いて欲しい、おまえの持つ情報を話す気は?」
「……なぁ、それより名前はなんて言うんだ?」
「当然、話す気なしか……。名前はそのうち解るだろ、どうせ話せないしな」
そう言って持ってきたものを確認し始める。
その内の一つを持って『これは無理矢理口を開ける道具だけど歯を痛めるんだ、自分で口を開く気はあるかな? それとこれを突っ込む』
手には口を開けるであろう機材と太い紐状の道具で中央が空洞になっている事から管だと解る。
何に使うか解らなかったが無駄な抵抗しても仕方ないので素直に口を開ける。
「潔いいね、少しだけ好感度UPだよ。……じゃ、作業開始」
オェ! いきなり小指程の太さのある管を喉の奥まで入れてきたズルズルと喉を通って胃袋まで届いただろうか、そこで停止すると口一杯に布を押し込める形で管を固定した。
これじゃ喋る事も出来無いだろうが! 俺の訴えるような目に
「話す気ないなら口はいらないよ、息は鼻で出来るしね」
先の広がっている管を持ち上げるとガラス容器の中身を流し込んできた。
少女は中身がカラになるのを確認すると『昼食終了』そう言って帰っていく、俺のお腹はタプンタプンだ。
けれど待遇は悪くないと思えてしまうのが不思議だ。
多少の気持ち悪さが有ったものの久し振りに横になれた事で眠気が襲って来たので眠る事にした。
どれくらい寝ていたのだろうか、突然ゴボゴボと胃に何かが入って来る感覚に目を覚ますと、少女はガラス容器の中身を管に流し込んでいた。
そうか、晩飯なんだな。何時の間にか管の先は天井から伸びた紐によって下げられていた。
「おはよう、寝過ぎると夜が長く感じるよ。
それと、明日はお友達が来るから楽しみにしてて」
それだけ言うと帰って行く。別にそんな趣味は無いのだが何もされないのはそれはそれで物足りない。
色々と質問したいが口には布が詰められていて喋れないし、唸ればケツバナナの刑を食らうだろう。
暫くするとパジャマに着替えた少女は『おやすみ』と明りを消した。
俺はというと目が冴えて眠れん。天井を眺めつつ眠くなるまでの間、色々と思案する事にした。
なぜ彼女はこんな所で寝泊りする必要があるんだろうか?
聞き出すのが仕事だろうに拷問しない所か待遇改善したのは何故か、情報を必要としてないのか?
考えてみても答えは出なかったが次第に眠くなり始める。……まぁいいか。
――わりとマッタリとした一日がこうして終わった。




