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完全″全″欠  作者: ル・ヴァン
降り立った世界
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異界を知る(4)

「さて、記憶が無いのに一人にさせてしまって悪かったね。」

「いえ。助けていただいただけでも有り難いですし、それにソウルを色々確認していたので一人でも大丈夫でしたから。

あっ。それと腕の治療もしてくれたんですよね?お礼が遅くてすいません。ありがとうございました。この恩は必ず返します。」

 そうして、頭を下げる。

 お礼は必ずするが、こんな大きな恩はどうすれば返せるのだろうかと頭に過る。

「なに、気にしないでいい。当然の事をしたまでだ。

それより良く一人でソウルを確認できたな?」

 そう言いながら彼女は扉を閉めて、部屋に入ってくる。

「なんとなく触ったりしてたら色々見れました。それで、聞きたいんですが、腕力や精神とかの能力はランク?って言えばいいんですかね?」

 こちらの世界と向こうの世界では言葉は一緒でも表現方法が違うかもしれない。と思い確認のために聞いてみる。

返答はyesだった。


「それでですね。ランクの横に括弧が付いててもうひとつランクが付いてるようなんですが・・・」


 そう言ってソウルを取り出す。

 皮鎧を脱ぎ終わりベッドに腰を下ろそうとした彼女に見せようとすると、


「待て待て。ソウルを簡単に他人に見せるな。ソウルとはその人の全ての情報と言って良い。

特に技能。種類にもよるがこの世の中にはその技能を利用しようとする奴等が居る。

だから他人に見せるな。何処からソウの情報が漏れるか判らないぞ。」


「でも、シェイラルカさんはそんな人達とは違うでしょ?

そんな悪いことをしてやろうって考えてる人は誰かを助けたりはしないのでは?」


 「それは判らないぞ」っと言ってニヤリとしたあとベッドへ腰を下ろし、足を組む。

 動作が凄く艶かしい。野性的な艶とでも言えば良いのだろうか?思わず体に力が入ってしまうが、彼女に気づかれないよう力を抜く。


「その悪いことをするための先行投資かもしれないからな。

 ま~そう言うことだから他人には見せないようにしな。

もっとも、本人が見せようと思わない限り他人には見えないがね。

 それで、もうひとつランクがある。と言うことだったな。

 それは先に書かれているのが戦闘に関する能力。あとについて居るのは普段の生活能力とでも言えば良いかな?まっ、そんな感じだ。

 因みに、括弧が付いていないのは、何時でもその能力が出せる。と言うことだ。」


 つまり、俺の場合は知能と精神が戦闘に関することではS。それ以外の事、例えば悩みを解決するなどで必要になる知能はC、色々と我慢するなどに必要な精神がDとなる。

 因みに最低ランクはFでそこからAまで上がっていく。

Aの上がS、そしてSSとなる。

 (頭は普通くらいかな?そうすると精神は弱い・・・。まぁ、わからなくもないかな。

 やっぱり何かを殺す覚悟はしっかりしておこう。

もう『バーサク』は無いんだし・・・。)


 「さて、色々とソウルを確認したみたいだが、私から説明もしておこう。

 まず、名前、年齢、性別は説明せずとも大丈夫だろう。

 その次、レベル。そいつの強さを計るのにはレベルが一番わかりやすい。

レベルを上げるには経験をすることだ。

料理や洗濯、農作業。あと読書。とにかく何かを経験すること。

その経験を積み重ねるとレベルが上がる。

一番手っ取り早いのは、戦闘だ。

 次に称号。これは行動や他人からの呼び名が広まったりすると付いたりする。

色々な効果があるからもし、称号があるなら確認した方がいい。

 そして、職業。まぁ読んで字のごとくだな。剣士や格闘家、魔術師や商人なんかがここに表示される。職業にも称号と同じで効果があるから、なりたい職業目指す奴もいるな。

職業はソウルを触れば今なれる職業が表示されるから、なりたい職業を触ればそれで職業に就くことが出来る。

 腕力や脚力等のことは総じて能力と言う。

能力はランク分けされているが、これは一生変わることはない。」


 言い切りました。絶対ないそうです。

 でも、変わらないのならレベルが上がっても強くはならないのでは?と思い質問する。

「能力ランクは変わらないが、レベルが上がれば強くなる。

何故、と言えば、能力ランクは今のレベルのとき強さを評価したランクだ。

 ここで腕力を例にしよう。腕力のランクがSの二人がいるとする。レベルは1と2。同じランクだがレベルが1違えば単純に腕力に1・5倍~2倍の差が出る。

 つまり、レベルが高い相手には絶対手を出すな。と言うことだな。」

 目を細めながら指を一本だけ立ててから注意してきた。

 因みに、腕力は腕の力。脚力は足の力。俊敏は体全体の素早さ(足の早さは脚力)。知能は戦術や戦闘判断力と頭の良さ。魔力は魔力の多さ。体力はスタミナと生命力。精神は心の強さと魔術の威力。となる。


能力の話が終わり次の項目に移る。

 「習得技能は腕力や脚力などの能力とは別の特殊能力だな。

剣術や格闘術、魔法が使えたらここに表示される。

技能の名前の横にある数字はその技能のレベルだ。

 そして、戦技。これは剣術や格闘術を使える人のみが習得出来る、言うなれば必殺技だ。

同じように魔術も必殺技だ。私は魔法は使えないから詳しく説明できないがな。もし魔法が使えたり、使いたいなど考えていたら、誰か魔法を使える奴に会えた時に聞くといい。

さて、以上だ。」

 長々と説明してもらい感謝を述べた。


 「話は変わるが、あの腕の傷はゴブリンに負わされたのか?」

 色々頭の中で整理していると次の話題をふってきた。

「ゴブリン?それってどんな姿をしてるんですか?」

「あぁ。そうだったな。悪い。

ゴブリンと言うのは魔物と呼ばれる生物の一種だ。

姿は、暗い緑色の肌で目がなく、頭の上から角のように耳がある奴だ。

因みに、魔物と言うのは全生物に危害を加える生き物だな。」


(おぉう。何てこったい。ゴブリンと言えば異世界の登竜門じゃないか。

そんな奴に殺されそうになるなんて・・・ショックです。)


「どうした?」

「いっいえ、なんでもないです。

そうですね。多分そのゴブリンって奴だと思います。いきなり飛び掛かられて咄嗟に腕で庇ったら噛みつかれちゃって・・・」

「そのゴブリンから逃げていたのか・・・なるほどな。」

 

 なんか勝手に納得してるようなので、違うと言おうかどうしようかと悩んでいると、シェイラルカさんが再び問い掛けてくる。

「これからどうする?」

「ん~。正直どうしたら良いのかわかりません。生活する上で仕事はしないといけないでしょう?でも、その仕事をどうやって探そうかと・・・

あっ。でも旅はしたいと思います。

わからないことばかりなので、この目で色々見てみたいなって。」


 本当は姉探しと帰還方法の模索だが、記憶が無いはずの俺が姉を探すなんて言えるわけもなく、異世界へ帰る方法を探すとも言えない。

結果、旅がしたいって言うことにした。


「ふむ。ならば《ハンター》になるのが良いだろう。

さっき能力ランクの序列は教えただろう?

さらに言うと、一般人はCが最高だ。

戦闘が出来るものは最低ひとつはBがないと厳しい。

それを踏まえて判断して欲しいのだが、戦闘は大丈夫だろう?」


「そこは多分大丈夫でしょうけど・・・何故戦闘できるのを知ってるみたいに聞くんですか?」

「あぁ。能力を見せるな。と言っておきながら悪いのだが、さっき括弧が付いていると言っていただろう?

括弧が付くのはB以上の能力にしか付かないからな。それでだ。」

「なるほど。すいません。話を中断してしまって。」


「まぁ、気にするな。色々質問してくれた方が私も、何を教えたら良いのか判らないから助かるよ。

さて、ハンターについてだか、これは文字道理だな。魔物を殺してきたり、一般人ではなかなか手に入れられないような物を代わりに取りに行ったり。

そうして金を稼ぐ奴等を《ハンター》って言うんだ。

そして、私もハンターだ。」


 まぁ、予想は出来ていた。

 現代で有名な冒険者たちの事だ。

ハンターは《ハンターズギルド》と言う組織の一員である。


 この世界には3つの国があるらしい。

ギルドは三国全土に支部があり、国、あるいは国民からの依頼をハンターたちに達成してもらう。

 ハンターたちは依頼を達成して依頼内容にみあった報酬を得る。そうしてハンターたちは報酬で生活をして、尚且つハンターとしての活動資金を捻出している。

と言うわけだ。

 さて、そんな異世界の定番、ギルドは国々から独立を許された完全中立組織。領土戦争などそれなりの頻度で起きているらしいが、知らんぷりしてるそうだ。

もちろんギルド員となるハンターも中立を徹底される。

もしハンターが一国に肩入れした場合、そのハンターはギルドにより粛正が行われる。

その肩入れされた国は徹底的に調べられ、ハンター独自の判断ではなく国からの要請、または関与があったと判断されると、その国からの完全撤退をする。

 また、この事だけではなく国がギルドに対して不利益な行いをして、それが余りにも度を越してしまえば完全撤退である。

国とギルドはこれらの事を条約で結ばれている。


 国は関与や介入をしないように約束し、ギルドは魔物の駆除と、魔材や希材を安全な状態で流通させることを約束した。

 安全な状態と言うのは後で説明しよう。


 そんなギルドの撤退は国としては何としても起こしたくない。

それは自国の滅亡とイコールなのだから当然だろう。

 何故滅亡に直結するかは条約にある魔物の駆除と数多の素材、そして最も重要なのが独占技術である。

 これらの詳細が次の通り。

被害を出した魔物の駆除や魔物の間引き、そして魔物の素材(魔材と言うらしい)や魔物の巣窟の様な危険な場所でしか取れない物(総称で希材と言うらしい)など、これらの事を行っていて、それぞれの事を6割以上ギルドが貢献している。

つまり、ギルドが撤退してしまうと魔物の駆除と魔材、希材の流通がそれぞれを6割以上自分たちでどうにかしなければならなくなるのだ。

 そして独占技術だが、これも魔材や希材に関することで、その魔材や一部の希材はそのままでは人間、と言うか魔物以外の生物は使えない。

理由としては、そのままの魔材や一部の希材たちは魔気を帯びていて、その魔気を除去出来る方法をギルドが独占している。

魔気は魔物以外の生物にとっては猛毒となる。

その魔気さえ除去出来れば色々なことに利用できるのだ。


 国々が大人しくしているのはその方法を失うからである。

 勿論、当初そんなことを国々が素直に独占を許すはずもない。それぞれが自国で研究したり、ギルドに開示を求めたりと言った行動を起こした。

 因みにこの時三国とは別にもう一国あったのだか、武力にものを言わせて開示させようとした。

が、普段から魔物の相手をしているハンターたちを相手に武力で簡単に制圧出来るわけがない。

ジリジリと時間だけが経過しているうちにギルドは有言実行。

その国から完全撤退をした。

結果今三国しかない。と言えばその国がどうなったかはわかるだろう。


 それを端から見ていた三国は自国を無くさないため、渋々独占を許すことになったのだ。


「まぁ、国とのいざこざなんて今となっては起きないだろう。

そこで、ソウが注目するのは国境越えの事だ。

ハンターに国境は存在しない。軽い手続きは必要だが、そんなものはソウルを見せて終わりだからな。

そして、仕事も行った先でやることが出来るから、路銀に関しても心配はあまりないだろう。

 さて、ハンターやギルドについての基本知識はこんなものだろう。で、どうする?旅をするには都合が良いと思うぞ?

国に仕えたくなったらハンターを辞めれば済む話だしな。」

「確かに都合が良さそうですね・・・。

因みにハンターを辞めるときや辞めたあとに何か不都合な事態になったりとかは無いんですか?」


国に仕えたくなったら辞めて良いのならばそもそも粛正なんて必要ないだろう。と思っての疑問だった。

「無いな。ギルドに加入している状態で国に仕えるのが駄目なだけだ。

そもそも何故ハンターとして国に仕えるのが駄目なのかはギルドの体面だけだからな。

ギルドとしては中立を吟っているからな、ギルドに加入している間は禁止しているに過ぎない。」

(体裁って・・・まぁ、組織や国としては重要なことだろうけど。

一個人として見れば体裁で殺されるのは納得できないな~。)

半分無理やりに納得したところで懸念事項がなくなり、ハンターになろうと思いを固める。

「だったらハンターになろうと思います。」

「そうか。だったら今日登録だけでも済ませておこう。

ほら、行くぞ!」

 そう言うや否や立ち上がり、剣だけを腰に帯びて扉へと向かう。

余りの行動の早さに唖然とする、

(まだ、俺返事すらしてないんですけど・・・)

 再び彼女を慌てて追いかけるはめになった。



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