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完全″全″欠  作者: ル・ヴァン
魔神と神
44/49

システム・・・・そして・・・

「レベルはね。魂・・・『ソウル』を数値化したものよ。」

「?『強さ』を表したものじゃないの?」

 俺は最初にシェイラルカからそう説明されたのを覚えている。「実にゲームっぽい」と思ったりもした。


「それは結果がそうであるだけで、強さを表している訳じゃないよ。あくまで、『ソウル』を表したもの。正確にはソウルの質、大きさ濃度を数値化したもの。が正しいかな?」

 いったい誰が、どうやってやっているのか?なんて無体な話は脇に置いておく。取り合えずはそう言う物として受け止め、話の続きに耳を傾ける。


「先ずは基礎知識としてソウル(イコール)魂って言うのと、本来の魂は『核』だけって事。それを頭に入れて話を続けるね。

 そもそも、なんでレベルが上がるのか?

 一つは『自身の成長』ね。

 日常生活で培う経験。トレーニングで得る経験。それらが、(ソウル)を成長させるの。これは、『核』が成長する訳じゃなくて、『核』を中心に、こう、粘土がくっ付いていくみたいに成長するの。


 そして、もう一つ。『魔物の討伐』ね。

 魔物にも(ソウル)があるんだけど、魔物が死ぬときその(ソウル)が元の『核』だけになって輪廻の準備に入る。輪廻の話や、準備については私も知らないし、必要もないでしょうから訊かないでね。

 んで、話を戻すけど、その死んだ魔物が今までに蓄えた『核』以外の(ソウル)を拡散させる。その、拡散した物を取り込む事で自分の(ソウル)が強化されるの。それで、ある程度成長、強化が進むとレベルが上がる。そのレベルが上がった原因が(ソウル)の成長、強化だから、その人の力も結果として強くなる。と言う訳。

 因みに、(ソウル)が成長したからといってなんで強くなるのかは私には分かりません。神様に聞いてね。


 もう一つ言うとね。人が人を殺しても(ソウル)は強化されません。そして、魔物が魔物を殺しても同じ様に強化されません。


 あっ・・・・と、もう一つ。

『技能』や『性質』も(ソウル)の成長、強化に含まれるよ。

 わかったかな?」


 色々と解った。なので、素直に頷いておく。


 が、質問が産まれた事もまた事実だ。


「質問。」

「はい。どうぞ。」

「魔物が誕生?するのは現在のこの世界では解明されてない。って聞いたけど、そこんとこどうなの?」


 もっと気になる事は他にあるが、取り合えず後回し。

『美味しいもの、好きなものは最後に』だ!


「まぁ。仮説は色々あるね。今一番有力なのは、『空気中に漂う『魔素』の濃度が一定以上になったとき。魔物は発生する。』ね。」

「そうなの?」

「違うけどね。」

 違うんかい。「じゃぁ何故言った?」とも思ったが、話が進まなくなりそうなのでスルーしよう。


「今のはこの世界の人たちが立てた仮説で一番信じられているもの。本当のところは、普通の生物と一緒なの。」

「ってこと、交配してるってこと?」

「そっ。とはいっても、そのあとが全然違うけどね。

 魔物たちは、交配すると、約3日で出産、もしくわ、孵化するの。そして、約1日~2日で成体と同等にまで成長する。栄養は基本は魔素。そして、ごく少量の食物で良いみたい。この栄養に関してのみ同類でも大丈夫みたいだけど、詳しくはわかんない。

 因みに、人を襲うのは本能的に襲う物とある程度知恵をもった魔物は自身の成長、強化と食事として襲う奴等がいるの。」


 なるほど。かなり特殊な生物と言う事なのだろう。

「んじゃ、次の質問。(ソウル)の成長、強化に限度はある?」

「そりゃあ勿論ありますよ。

 魔物はどうか知らないけど、人種は(・ ・ ・ )上限値50ね。」


「人種?は?」

「やっぱりまだ出会ってないんだね。」

「?」


「蒼ちゃん。ここは異世界です。

 だったら、色々居ても可笑しくないでしょ?」

「言わんとすることは判るけど・・・エルフやドワーフって事でしょ?」


 今までは出会っていないが、姉の言う通りここは異世界。だったら、空想上、または伝説上の生物が居ても可笑しくない。何しろ、ドラゴンやらユニコーンが居るのだから。


「そう言うこと。この世界には人と区別されるものが、5種類居るの。

 先ずは人種。

 最も人口が多く、能力は平均的。レベルの上限値も50で一番低い。

 強みとしては、人口の多さと良くも悪くも『欲求』かな?


 次!

 牙獣種。

 細分化すると、数多に種類が居るけど基本的に牙や爪が特徴にある獣がこの種族に分類される。容姿は動物を人間の大きさにして、そのまま二足歩行させた感じ。犬や猫、狼とか虎とか色々ね。

 それと、地球で良く獣人として描かれている耳と尻尾だけ付いた人って言うのは、人種と牙獣種のハーフとして存在するよ。


 更に翼人種。

 牙獣種の鳥類版ね。姿も二足歩行する鳥って感じ。人種とのハーフになれば、翼だけを有した人種の容姿になるよ。


 この二つの特徴は良く似ていて、レベル上限値は100。能力的には魔法系統のものが使えない他は、総じて高い。

 それから、ハーフはレベルの上限値は一緒だけど、能力は純血の牙獣種や翼人種には劣る感じになる様です。


 想像できるだろうけど、強みは戦闘。

 兎に角速いし、力も強い。魔術が使えない事なんて、何のハンデにもなりません!って感じ。


 次に小人種。これが、ドワーフね。

 だけど、地球で描かれるドワーフとはちょっと違うの。

 人種の子供と同じくらいの背丈しかない。って言うのはおんなじなんだけど、髭もモジャモジャじゃないのよ。


 普通に子供みたいで、エルフよりは短いけど耳も少しだけ尖った様に長くなってるわ。


 レベルの上限値は80。能力は牙獣種や翼人種には劣るけど力寄り、そして、魔法系統も人種よりは上って感じ。人種のパワーアップ版?って感じに近いかな?


 そして強みはやはり物作り。

 鍛冶に錬金、調薬とか建築とか、兎に角『物を作る』事に関してはこの種族が、ナンバーワンだね。

 でも、逆に戦闘はダメ。

 足は遅いし、物を作る時以外は基本やる気無し。っていうか、基本物作ること以外興味がない感じかな?あっ、でも、想像通りお酒だけは別。本当に、ホントに、マジで、蟒蛇(うわばみ)。飲んでも飲んでも潰れないどころか酔わない。飲み比べなんてしちゃダメよ?


 そんなこんなで、上限値80まで到達しているドワーフは基本的にいないのよ。私が出会った中で最高レベルのドワーフは45だったかな?そのあとちょっとはあげたかもしれないけど、結構なお年だったしどうかな?そもそも、物を作るだけでは中々レベルは上がらないからね。


 最後は妖精種。通称エルフ。

 耳が尖った様に長く、色白で細い体つき、超絶美形の緑髪の種族。

 基本森に住み、自然を大切にする穏やかな人たちだけど、逆に自然を大切に出来ない者や壊す者には容赦ない。

 森に住んではいるけど、別に排他的でもなく、普通に森から出てくるし、他の種族とも繋がりを持つよ。因みにドワーフと仲が悪かったりはしない。


 レベルの上限値は100。能力としては、魔法系統の能力が強い。逆に力が弱い。人種より少し劣るくらいかな?


 因みに寿命は皆一緒。種族によって数年とかは違いがあるけど大体80歳位が寿命。

 でもでも、エルフだけなんだけど、見た目があんまり変わらないんだ。人で言うところの40歳位の見た目で80歳位の年齢なんだよ。」


 っとこんな感じ。と説明を終える姉。

「今の説明で気になる所は、一つ。

 ・・・・姉ちゃん異常すぎない?」


 人種のレベル上限値が50。人全体で見ても最大100なのに、姉はそれらを軽~く越えたレベル1000だ。


「ま~これでも神から喚ばれた存在だからね。

 種族で言うならば『元人種の神の使徒』。天使族ってとこかな?

 でも、私もこれ以上は上がらない。

 50年の間に研究の鬱憤ばらしに魔物狩りをちょくちょくやってたけど、全く変化しないしね。『技能』と『性質』は覚えたんだけどね~。」


「ま~。いいや、じゃあ最後の質問。

 なんで人同士、魔物同士で殺してもレベルアップに繋がらないのか?」


 姉の説明で最も気になった事だ。

 姉の説明通りの現象でレベルが上がるのならば、人同士、魔物同士でも問題なくレベルアップに繋がるはずだ。でも、そうならない。

 この事から思い浮かべるのは、『人VS魔物の構図が強制的に出来ている。』と言うことだ。

 普通ならば、互いに害になるから争う。と言うのが自然の摂理だろう。だが、この場合は違う。

『自然の摂理に争うことが決まっている。』となる。


 自然に争う関係ではなく。争う事こそが自然。それが、人と魔物の関係。これを『何かが』もしくは、『誰かが』決めたのだろう。


「その通り!

 流石は私の蒼ちゃんだね。ヨシヨシ。」

「この歳になってまで頭を撫でられる趣味はないよ?」

 顔をしかめつつ姉に抗議してみるが、当然「歳なんて関係ないよ~。」とニマニマとして、撫でる手を止めることはなかった。


「人と区分される私たちは、この世界で言う『光の神』と言う神様の勢力。魔物たちは『魔神』の勢力なの。


 元々『光の神』。正確には『太陽神』は昼と光を司っていて、『魔神』正確には『月の神』は夜と闇を司っていたの。

 この世界は、この二柱の神によって創造、繁栄された世界だった。

 昔々は、二柱の神を恭しく崇めていたけど、その内『太陽神』を『光の神』つまり、正義や清いと言うイメージが謳われるようになって定着。逆に『月の神』、は『魔神』として、悪と言うイメージが定着したの。


 その出来事に勿論二柱は対応した。けど、人々のイメージは一時期は良くなるものの、時間がたてばまた同じ様に変わってしまい定着する。って言うのを繰り返すことになった。


 それに、我慢できなくなった『月の神』は、本当に魔神として君臨し始めてしまった。言ってしまえばキレちゃったのね。それで、当時魔物と呼ばれる存在は居なかったのだけど、『月の神』が、人の敵として創造してしまったの。

 それに、慌てた『太陽神』が人たちの対抗する術として、魔物を倒すことによって強くなる『レベル』を世界のシステムに組み込んだ。

 それに、対抗して『月の神』は逆に人を倒すことで魔物が強くなるようにした。

 これが、レベルアップのシステム。今でも変わっていないわ。


 そうしてこれが激化していって人の滅亡が見えたときに私が呼ばれたって事に繋がるわけ。

 まぁ。言っちゃえば人たちが招いた自業自得の事態なんだけど・・・ね。同じ人としては助けたかったし、『月の神』にも何とか元に戻ってくれたらな~。とかも思ったりもして、助けちゃったんだよね。」


「どこの、世界の人も変わらんね・・・・・・・自惚れ、疑心、欲求、自己都合。それらで、世界が善くなることは滅多にない。基本は悪くなる。それが人間の性・・・・なんてね。」


「それでも、基本的には人は『善』と思いたかったし、今も思いたいと思ってる。・・・・蒼ちゃんがそうみないにね!」


 俺が善人かどうかは判らないけど、確かに俺も人が基本的には『善』だと信じたい。


 かなり話が脱線している気がしないでもないが、一応この世界についての勉強会は終了で良いだろう。

「助かったよ。色々教えてくれてありがと。」

「いえいえ。どういたしまして!」


 ・・・・・・・・・・・・・はぁ。

「・・・・・・・・・そろそろ頭撫でるの止めない?」

「・・・・・・・・・・癖になりそう。」

「・・・止めて?」

「・・・・・・ぁぃ」

 消え入りそうで、未練タラタラの声と共に俺の頭から手を離した。


「コーヒーでも淹れるよ。」 

「ありがとー」


 流石に100年この世界に居た姉はこの世界について色々と知っていた。有意義な時間であったっと思いつつ、その事に感謝の念を抱きながらコーヒーを淹れた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「・・・・・ふぅ」

「あぁ。美味し。」

 コーヒーを飲み、喉の乾きを潤しつつ、特に会話もなくのんびりとした時間を過ごしていた。


 時刻は日付が変わる位になる真夜中。

 そろそろ寝なければ明日に支障をきたす。


「姉ちゃんそろそろ俺寝たいんだけど?」

「了解。」


 椅子から立ち上がり、ドアへと向かう。

「『剥離』」

「・・・・何してんの?」

「この部屋の空間を少しずらしたの。」


 何のために・・・・まさか敵でも来たのか!?

 そう考え、身構える。


「?何を構えてるの?」

「え?敵でも来たのかとおもったんだけど?」

「敵って誰?」


 はて?誰であろう?

「魔物?」

「こんな城の中まで魔物が入ってきてたら、こんなにのんびりとはしてらへなかったと思うけど?」


 肯定しか出来ない。

 この城は、この、王都のほぼ中心だ。であるならば、ここに魔物が居ると自然と街で騒ぎがあって当然だろう。 

 その騒ぎが起こっていないと言うことは、魔物ではないと言う予想がたつ。


 では、他の敵か?と考えてみるが、わからない。

 結局姉に直接訊いてみるのが一番手っ取り早く、そして、確実だ。 


「そもそも、何でそんなことを?」

「・・・・・邪魔が入らないように?」

「何故疑問系?」

「・・・・・・」


 そこで、会話が途絶えた。

 徐に近づいてくる姉。真剣そのものの顔は今にも壊れそうに儚いもののように見える。


 俺の目の前まで来ると・・・・。

「さて、私はもう我慢ができません。

 蒼ちゃん。私を好きでいてくれなくても良い。

 ・・・・・・・・・一度でも良いから・・・・」


 抱いて・・・・

 言葉と同時に抱きついてくる姉。


 俺は、言われていることを上手く理解出来ずに居た。

 警戒するべき事が起きているのか?と連想される突然の姉の行動から一転。いきなりの大胆発言。


 先程まで世界について勉強していた真面目な雰囲気はなく。

 何処までも静かで、甘い。しかし、異様な重圧が有るような雰囲気の中で自分の早鐘の様な鼓動だけが聴こえていた。


「・・・・ダメかな?」

 何の返事を返すことも出来ない俺に再び声をかけてくる。


 ダメ?

 何が?

 姉弟で体を合わすことが。

 もう、姉弟ではない。

 じゃあ、ダメじゃない?


 そもそも、俺は姉をどう思っている?

 好きだ。

 姉として?

 女として?


「・・・・お、俺は姉ちゃんが姉ちゃんじゃないと言う事が・・・・まだ、割り切れていない・・・・・と思う。」

「・・・・私には魅力がないかな?」


 そんな、ことは無い。と思う。

 その証拠に体と本能は密着した姉の体の柔らかさに反応してしまっている。少し理性の手綱を緩めればどうなるか・・・・


 俺はまた、半端な気持ちで居る。

 この世界では姉弟ではない。ならば、例え一夜だけの関係になったとしても論理的には問題はないと言える。倫理的には問題ありありな気がするが。


「・・・・・姉ちゃんは魅力的だと思う。弟から見ても、男として見ても・・・・・」

「・・・・・そっか、よかった。

 ・・・・・蒼ちゃんには酷だろうけど、ハッキリ言うね。もう、元の場所には帰れない。これは、神様のお墨付き。『例えこの世界に生きて召喚出来たとしても、元の世界に戻ることは出来ない』って言ってた。」

「だから、『姉弟』なんて気にする必要はない。と言いたいの?」

「そうだね。私はね。蒼ちゃんから嫌われるかもしれない覚悟をもって召喚の研究してた。結果的には私は関係なく何故か蒼ちゃんはこの世界に来た。だから、都合良く考えた。

『嫌われていないなら、嫌われても良いから一度抱かれたい』って。これが、今の私の願い。」


 重い。

 例え自分がどうなろうとどう思われようと、想い人が存在する事を重視した。

 結果的には何も犠牲にならず、何の因縁も出来ることなく願いが叶った。だったら、もっと先を望みたい。


 重い。でも、どうしようもなく『人』である姉。

『人種の強みは良くも悪くも欲求』。


 正に姉は『人種』だろう。


 この重い想いの願い。

 これに、俺はどうしようもなく応えたく思った。


 大事な人()の願いを叶えれる。

 麗の肩を掴み僅かに離れさせる。


 拒絶されたと思った麗は、蒼白の顔色で瞳を揺らしていた。

「さっき、この世界で生きる覚悟を決めたんだ。だったら、他の事に対しても半端ではいたくない。

 でも、正直まだ、姉は姉と言う固定概念がある。でも、変わりたいと思う。今はそれだけじゃダメかな?・・・・れ、麗。」


 揺れる瞳を尚更揺らし、蒼白だった顔はみるみる紅くなっていく。かくいう俺も赤面していること間違いなしだ。


「・・・・めっちゃ嬉しい。・・・・でも・・・・言ったでしょ?」


『我慢できない』









 ここから先は、色々と不味い。

 回想しただけでも、死ねるくらい不味い。


 ただ、一言だけ話せるとしたら。


『凄かった』とだけ言わせてもらう。

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