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完全″全″欠  作者: ル・ヴァン
王都
37/49

『送魂の集い』直前(2)

ちょっと短めです。

 あの料理指導の初日。

 その時点で全員に全品を覚えてもらうのは不可能判断。調理技術と料理の技能は必ずしも比例するものではない。と言うことがわかり、それぞれに分担を決め、それを集中的に指導していく事にした。


 因みにあれからシオンとの相談で集いに出す料理と、催しとして調理するものは決まっている。


 メニューは

『おにぎり(カトロ)』

『テンプラ』

『ステーキ』

『フライドポテト』

『サンドイッチ』

『ピザ』


 デザートとして

『ケーキ』を5ホール


 に決まり、『魅せる』料理として、『ステーキ』を目の前で調理することになった。


 メニューを決めた基準は、俺の独断と偏見で立ったままでも食べれる物を上げさせてもらった。


 他にもいくつか候補を上げたのだが、シオンにどんな料理かを説明して候補から外れたり、人手が今のままでは足りないと判断し渋々外した物などがあったりする。だが、このままだと種類としては少ないだろうと思ったのだが、シオン曰く「見たことのない物しかない」との事なので、珍しさを全面に押し、種類が少なくても大丈夫と判断することになった。


 更に参加人数が最終的に62名に増えた事からも種類を絞った要因でもある。一品を70名分用意する事になり、今の人数ではかなりの重労働である。


 はっきりいって地球であれば『無理』だ。が、この世界では『可能』になる。・・・・ギリギリだが。


 理由は簡単。魔法を使えば良いのだ。

 新たに作っておいた身体強化の魔法を料理担当の全員に掛け、無理やりやってやるぜ!って感じ。


 さて、そんな感じで決まったメニューを各自に割り振り、残り4日間の指導を実施した。


 結果的には全員が、各々の作業をこなせるだけの技量が備わった。


 そんな割り振りはこんな感じだ。


 ピザと同時進行でサンドイッチ用のパン(イロー焼き)と一応似た物と判断し、ケーキのスポンジをリリアン。


 ご飯とテンプラ、フライドポテトをガボット。


 ご飯をおにぎりとして握る事と、サンドイッチの具を挟む事をフラン。(幼いイメージが強かった為、比較的危なくない作業を任せた)


 トーニャにはリリアンとガボットのフォローをお願いし、ケーキの重要材料、生クリームの作成をお願いした。


 そうして俺はと言うと、ケーキの仕上げを担当し、更に会場で直接ステーキを調理することにした。


 そんなこんなで『送魂の集い』の前日。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「うん。この分なら大丈夫そうだな。」

 俺は今一切口出しも、手伝いもせずに料理場で尋常じゃない早さで動く4人を見ながら頷いた。


 順当に焼き上がるパン(イロー焼き)とピザ、更にスポンジ。次々と揚げ上がるテンプラとフライドポテト。瞬く間に積み上がるおにぎりと、綺麗に並べられるサンドイッチ。


 今日は最終確認として、屋敷の使用人やシオンたちを含めた全員分の食事を用意させてみた。


 因みにケーキのスポンジは昨日の内に焼き上げており、あとは仕上げるだけである。今焼き上げているのは明日分で、今から冷ましておく必要があるため用意させてもらっている。


 なので、リリアンとトーニャは明日は幾分か楽になり、トーニャが楽になる分ガボットの負担も減る。残念ながらフランには何の影響もでないが、元々がそれほど負担になることは無いようなので、問題ないようである。


 時間がたち、完成。

 食堂で待っている皆の所へと運んでいく。

 因みに、運ぶのはメイドさんたちにも手伝ってもらっている。相変わらず料理場には入れないが、料理場の外まで運べば次々とメイドさんたちが運んでくれるのである。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「皆さんお待たせしました。」

「これで、全部ですね。・・・・・ソウ殿。お見事です。この分であれば明日も心配せずとも良さそうですね。」

 シオンからの労いについつい頬が緩む。いけないいけないと思いつつも、緩むのを止められず変な表情をしているであろう。


 シオンの呼び掛けにより各々が嬉々として料理に手を伸ばしていく。

 今日は無礼講。皆明日のために英気を養ってもらおうと、シオンによって使用人たちも料理を食べていた。


 彼方此方で笑顔の花が咲き、場を暖かい雰囲気が支配していった。


 彼方では「美味しい」と声高らかに声をあげて、うっとりと目を閉じている。此方では驚きに目を開き、固まっている者までいる。皆それぞれの反応を示し、俺、ガボットやリリアン、フランとトーニャもまだ料理を食べずに微笑みを浮かべながら場の様子を見ていた。





 皆が一通り料理を食べたのを確認し、メインとなる。明日の予行練習の為、俺も腕を振るう時間である。


「シオン様。そろそろメインを調理しようと思いますが。いかがでしょう?」

 シオンに確認を取り、了承の返事をもらって用意をする。手伝ってくれるのはメイドさんたち。


 この調理。ステーキなのだが、俺が作ろうとしているのは良く日本のテレビで見掛けるものだ。鉄板の上で炎がブオッと燃えるあの調理方法である。


 これの調理方法の流出にはもう諦めている。何故かと言うと、今回のステーキは下拵えが重要で、そこの部分は見せないようにしている。そのため、目の前で調理する部分だけなら見せても良いかと言う事になったのだ。


「では、調理開始します。」

 これに必要な調理器具や鉄板などは勿論シオンが調達したものである。

 保々日本で見掛ける鉄板だが、性能が違いすぎる。


 どちらが性能が上か?


 勿論、異世界産の鉄板である。

 この鉄板は鉄板自体に発熱機構が備わっており、温度も自由自在。鉄板が暖まるのにも時間は全然かからず、発熱し始めて数秒で適温になる。


 全て魔法で出来ているらしい。魔法様様である。


 そんな鉄板でステーキを焼き上げる。


 下拵えは肉を丁寧に叩き、玉ねぎ(この世界でも全く変わらず存在していた。)の微塵切りで覆い、暫く寝かす。これにより、肉を焼いた後も柔らかい肉質へと変化するのだ。


 下拵えの完了した肉を片面づつ焼き、肉の焼ける香ばしく、いっそ暴力的な程の濃厚な食欲を掻き立てる匂いが辺りを覆い尽くす。


 最後の仕上げ。


「皆さん。少し危ないので離れて下さい。」


 皆が名残惜しそうに一歩二歩と離れて行く。十分に離れたのを見計らって酒精の高いワインを撒き散らす。


 酒精によりワインは燃え、狼狽えるであろう圧倒的な炎が現れる。


 だが、その炎は暴力的なものであるにも関わらず、神秘的な力も備えていた。皆が驚くのは一瞬。あとに来るのは魅力の感情であった。


 しかし、それも一瞬。酒精が熱により空気に拡散すると同時に肉の『美味い』匂いも運ばれていく。

 ワインの誇る芳醇な香りと、肉の荒々しく濃厚な匂いが合わさり、再び皆の食欲を掻き立てた。


 全てが一瞬出来事。


 俺はワインの芳醇な香りを僅かに肉に閉じ込めるため蓋を被せる。


 そうして、焼き上げた肉を蓋を開けて姿を顕にし、火が通りすぎないように素早く一口大にカット。素早く皿に乗せ、少~しの塩をパラリ。


 これで、完成である。勿論、焼け具合はミディアムレアである。


 周りの人は我を忘れたように惚け、ゴクリと喉をならしていた。




「シオン様。まずはあなた様に一口。」

「・・・え、えぇ。そうね。いただきます。」


 シオンでさえ魅いられていたようで、声を掛けても少しの間返事を貰うことが出来なかった。

 現代では当たり前の調理方法。この世界でも『焼く』と言うありふれた方法にも関わらずこの場の全員を呑み込む事が出来た様であった。


 少し・・・・いやかなり意外であった。多少は驚いてもらえるかな?と思い、提案した事だったのだが・・・・良い意味で期待を裏切られた気分だった。


 何かを躊躇ったのか、一切れを持ち上げ口の前で一時停止するシオン。

 意を決して口の中へとゆっくりと入れていった。

 口許とフォークを持つ手も僅かに震えている。目には力がなく、潤んでさえいた。


 抑えきれない食欲のためか、上気していて頬がほんのりと紅くなっていて、分泌する唾液が多い為か唇は絶大な艶を放っていた。


「・・・・・はふぅ。」


(な、なんだか聴いてはいけない声が聴こえる・・・・・・・・・・)


「・・・・・・・っ!コホン。大変美味しいですね。皆さんもどうぞ。・・・・ソウ・・・殿。・・・・今焼いた分だけでは足りないようです。追加を・・・・・」


 かなり恥ずかしかったのだろう。顔が真っ赤である。そんな恥ずかしさを感じながらもまだ食べたいと思っているらしく、『皆のためにも』追加を頼んできた。



「はい。すぐに用意いたします。

 ・・・・皆さんもすぐに用意するので、少しお待ちください!」


 1枚のサーロインステーキ程度の大きさは瞬く間になくなり、食べた者は至福の表情を、食べれなかった者は飢えた獣の顔をしていた。


 冷や汗がたらりと背中を伝う。


 いそいそと鉄板の前に戻り、追加の肉を焼いていくのだった。






 暫く焼き続ける。同時に2枚、3枚と焼いていくにも関わらず、すぐになくなるステーキたち。


 鉄板の前に陣取っているため汗が滴るのを気にする暇もなく、必死に焼き続けていると、皆さんやっと満足したらしく波が収まった。


 一息つき、俺も自分の分を焼き一口パクリ。


(うん!良い感じだな。)


 試作を作ったときに味見したのと変わらぬ美味しさ。試作を作る前はソースも考えていたのだが、上質な肉の暴力的とも言えるよう濃厚な味わいとワインの僅かな優しい香りと味。それらが合わさり濃厚な、いっそしつこく感じる美味しさを塩の酸味と甘味がさらりと流してくれる。


 ソースなど不要の美味しさであった。



 さて、皆の食欲が落ち着き、いよいよデザート。ケーキの登場である。


 ケーキにはやはりイチゴであろう。

 形も色も違ったが、イチゴ(この世界ではチープ)を使ったケーキである。


 見た目的にケーキの上に乗せるのはないと判断し、スポンジの間に挟んでいるだけである。なので、このケーキは見た目は真っ白で生クリームで装飾しているだけである。


 関係のない笑い話だが、生クリームを用意したトーニャの話を少し思い出してしまい、思わず笑みが溢れる。


 一番最初トーニャに作って貰ったときはかなりの不満顔で、疲労の色が強かった。

 が、完成した生クリームを味見。完璧とは言い難いが、十分生クリームと言えるものが出来上がり、トーニャにも味見させたのだった。


 食べたあとのトーニャが面白かった。

 口に含んだ瞬間背筋がピンッと延び、すぐにふにゃふにゃと崩れ落ちたのだった。


 その後、練習を催促(・ ・)するようになってしまった。この世界でも甘味は女性を捕らえて離さないようである。


 そんな事を思い出し、ふと現実に戻ると、皆がトーニャと同じ反応をしていて思わず声を出して笑ってしまった。


「こ、これは・・・・・抗えません!!!」

 男性陣も美味しそうに食べ、嬉々としていたが、女性陣はそんなものじゃなかった。


 我先にと自分の皿を空にすると、野獣の如くお代わりを『狩り』に行っていた。

 それを他の男性陣と一緒になって頬を引き吊りながら眺めていた。



 印象的なのがその中にシオンが混ざっていたのが、強烈だった。









 無事、予行練習は成功。


 明日はいよいよ本番である。気合いを入れる。



 そんな俺に群がる女性陣(狩人たち)

(ひぃっ!!!!)


「「「お代わり無いの!?!?!?」」」



味の表現や、調理の情景など頑張って書いたのですが、中々難しいですね(泣)


調理の方法も完全な作者の知識で書いていますので、実際のものとは違ったりしてるかもですので、その辺はスルーしてほしいかもです(汗)



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