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完全″全″欠  作者: ル・ヴァン
王都
36/49

『送魂の集い』直前

 翌日。

 準備された朝食を済ませ、再び主だったメンバーで会談室に集まる。今回は現在の進行度合いと、不都合が起きていないかの確認。そして、それぞれの今日の予定についての報告会であった。


「旦那様の関係者には通達が完了しました。王都から離れて住まわれている方たちからの返事は流石にまだですが、近辺、もしくわ王都に住まわれている方たちからは全員参加の返事を頂きました。現在の参加人数は参加者の家族合わせて41名です。

 返事待ちの方が、あと5家。予想追加参加人数は17名です。合計58名になる予定になっています。」

 ハクラからの報告が上がる。全く何も見ずにスラスラと報告する様は流石と言わいざる終えなないだろう。


「ありがとうハクラ。」

 シオンの労いを聞き、次は俺の番である。

 と言っても特に報告する事はない。シオンと共に行動したことしかないので当たり前だろう。

 が、一応の確認の意味もあるのでしっかりと報告する。


「現在3名の奴隷を昨日購入して、料理の人手として予定しています。また、ギンさんの奥さん。トーニャさんに協力を求めたところ、快く快諾していただいたので、現在俺を含めて5名が料理人となる予定になっています。」


「わかりました。ありがとうございます。ソウ殿。」


 次はシェイラルカ。

「私は屋敷の警備を担当している者たちと警備体制を話し合っているところで、もしかしたら警備の穴が出来そうなのだけれど・・・・母上どうにかならないかな?」


 シェイラルカは相変わらずのハンターモードである。久しくお嬢様モードを見ていない気がする。ドレス姿はこの前見ることが出来たが、結局言葉を発する機会はなかったため、久しく見ていないと思ったのだった。


「そう・・・ねぇ。ハンターを雇うのは少し不安がありますし・・・・」

 ハンターに対しての不安もまた、この世界では当たり前の事である。


 どの異世界冒険憚を見ていてもハンターつまり、冒険者的な立ち位置の者たちは決まっている。


 ズバリ、がさつで横暴。短気なのである。とてもではないがお偉いさんが集まる場での警備などには不適合なのだ。


 勿論一概にそうとも言い切れないが、大方の者たちは当てはまってしまうので仕方がないと言えるだろう。


 勿論方法はある。

 ハンターの性格やランク等を指定する事が出来る。が、この場合は半分指名依頼の意味合いが含まれてしまう事と、受注に条件が付いてしまうため依頼が高額になってしまう。場合によっては奴隷を買った方が安く上がってしまう場合があるのだ。


 なので、中々踏ん切りがつかなかったりしてしまう。

 そんな色々と問題がある中、どうするのだろうと思いシオンの返答を待つ。


「・・・・・・取り合えず。今いる人員だけで警備体制を完全に練ってみて貰えないかしら?そこからまた考えます。」

「わかったわ。」

 と取り合えず現在の体制を維持するようである。


「次は私ですね。『送魂の集い』での催しですが、残念ながらヴィンスは食事以外に好きなものがなくて・・・・少し悩んでいます。

 ただ食事するだけならば簡単なのですが・・・・。そう言うわけにもいきませんしね。少し皆さんの意見をお聞きしたいです。」


 なんとも一途な方である。

 一夫多妻制がが許されているらしいこの世界で、シオンのみを妻として迎えている事からも一途だと思えるが、趣味まで一途とは・・・。


 それはさておき。

 催し物の意見と言われ、考えてみるが・・・


(パッと思い付くのはやっぱり音楽なんだけど・・・。ヴィンスに繋がらないならやる意味がない。・・・・他にヴィンスに繋がるものとなると・・・・。剣?。かといって剣技を見せるのもなんか違う気がする・・・。じゃあ・・・・ヴィンスの武勇伝を話してもらうのはどうだろうか?)


 と、何となくの思い付きを口にしてみる。


「武勇伝・・・・ですか。」

「ええ。残念ながら俺はヴィンス様が強いと言うのは先日の王様の発言で初めて知りましたので、その意外な印象が強かったので思い付いたのですが・・・・。」


「しかし、それは集いの最中に各々の御方たちが自由に思い出しながら話されていることですからね。・・・・些か物足りないかもしれませんね。でしたら、剣技を披露する場の方がよろしいような気がしますが・・・・ヴィンス様の趣味ではない感じも致しますし、・・・・いやはや中々難しいですな。」


 ハクラの意見にやはりそうだろうなと思いつつもまた悩み始める。


「・・・・・でしたら、調理を見せるのはどうでしょう?」

「あら。」

「おぉ。」

「ほう。」

 俺の発言にシオン、シェイラルカ、ハクラが思わずの声をあげる。


「確かに良い案ですが・・・そのような『魅せる』料理などあるのですか?」

 尤もな意見である。

 正にシオンの指摘の通りで、催し物を決めても内容が中々難しい。


 仕方なく

「単なる思い付きでしたので・・・・少し考えてみます。」

「よろしくお願いしますね。他にも良い案がないか考えてみますが・・・自信がありませんので・・・・」

 と申し訳ないように話すシオンに、「頑張ります」と返して次の話へと移っていく。


 次は今日の各々の予定である。

 ハクラは返事が届くまでは特にないので、会場のセッティングを主にやるそうだ。


 シェイラルカはさっき話した警備の体制を考えるとの事。


 俺は奴隷たちに調理の指導。


 シオンは各自を見回り必要なものや足りないものの確認と手配。


 となっていた。


 そうして、各々の仕事に取りかかるべく会談室を後にしたのだった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 俺はこの世界の事をまだなにも知らなかったと言うことを痛いほどに痛感させられた。









「ちっがーーーーーーーーーう!!!!!!!!!何でイローにお湯を入れるんだ!!!!!」

「えぇ!?だってイロー焼きはこうやって作りますよ!?」




「投げ入れるなーーーーーー!!!!!油が跳ねて危ない!!!!!!!」

「こんな大量の油に手を近づけれる方がおかしいんだよ!!!!!!」





「お願い。カトロは水をかけるだけじゃ洗えないから、手を使って?????」

「????・・・・・だって冷たい。」





 お分かりいただけるだろうか?俺の苦労。


 まぁ。お三方の返事の仕方を聞いていたらわかるだろうが、打ち解けるのは早かった。

 話し合いが終わり、早速4人を集めて改めて挨拶をした。


 ガボットは酒場のマスターらしく気さくなおっさんだったし、リリアンは奴隷と言う立場から敬語を使うことを止めなかったが普通に話ができた。フランは少し口数が少なく、あまり感情表現をしない子らしく、しゃべる言葉にも抑揚もあまりない。


 そんな感じのお三方と改めての自己紹介が終わり、今度は事情説明。『送魂の集い』での食事の用意の話、相手は貴族である事を話した。


 そして、奴隷だからと言って酷い扱いをしないことを約束。食事も基本同じものだし、必要なものも与える。金額はまだ決めていないが、給金と言う形で一月に1度お金も持たせる。これは自由に使って良いことを伝えた。

 これらは今後メリットになるだろう事として話した。


 次にデメリット的な事について。

 まず、俺の教える料理や俺の魔法について、ザックリ言うと俺の情報を他人には話さない事。これは俺と深い付き合いのシオンやギンたち以外の者たちに話さないことだ。これは、申し訳ないが『命令』させてもらった。 


 この『命令』のシステムだが、俺が『命令』を使うと『命令』を受けた者(奴隷)は『返事』をすることが求められる。ここで、嘘でも『はい』と答えると心の中でどう思っていたとしても『返事』が優先され、破った場合は強烈な胸の痛みと呼吸困難に苛まされる。


 つまり、『口約束が必ず守られる。』と言うことだ。


 そのあとにいざ教えようと思ったときに何だか昨日との様子が変化していることに気付いた。


 ガボットは暗い雰囲気がそっくりそのまま穏やかな雰囲気に転化していたし、リリアンも表情に力がなかったが今は微笑を浮かべていて安心しているように見受けられた。フランは・・・無表情。昨日も無表情だったが・・・・雰囲気がいくらか和らいだ気がする。


 まぁ。暗いよりかは良いことなので別に良いが、気にはなったので聞いてみることにする。


「皆さん雰囲気が和らぎましたね?どうしたんですか?」


「いやな、正直誰に買われても奴隷なんてもんは変わらないと思ってたんだがな。昨日のあの料理を食べてビックリ仰天でな、しかもご主人と同じものを食べてると聞いてな?なんだかわかんないけど安心できたんだわ。このご主人なら付いていっても大丈夫。ってな。それに、さっきも『酷い扱いはしない』って言ってくれたしな。」


 砕けた口調で話すガボットに眉を潜めながらリリアンが話始めた。


「ガボットさん。気持ちは凄く理解できますが、ご主人様に対しての口調は看過できませんよ?いくらご主人様が優しくてもそれは違うと思います。」

「あぁ。そうだな。ご主人。すいません。以後気を付けます。」

 となんだがリリアンがお袋さん的な立ち位置にいる。


「いえ。流石に周りに示しがつかないような場面では気を付けるべきでしょうが。普段は構いませんよ。」

 と砕けた口調を許したのだが・・・・


「ご主人様がそう言うならば良いですが・・・ですが、ご主人様?何故私達にも丁寧な口調なのですか?その方が示しがつきませんよ?ご主人様は普段から命令口調とは言いませんが、砕けた口調で話すべきだと思います。」


 御尤もな事です。

 なので、丁寧な言葉は避けるように心掛けることにした。


 そして、こちらからもまたひとつ要望を言ってみた。ズバリ、呼称の事である。 


 「あの。『ご主人様』は止めないかな?恥ずかしいんで。」


 「「それは無理だろ(です)。」」


 とお二人のハモりにより撃沈。流石に『命令』を使ってまでやることでもないので、諦めることにした。


「・・・ピト。」

 話が一段落するのを待っていたのか、話が途切れるとテクテクと擬音が聴こえてきそうな足取りで俺のところまで来ると、ご自分で擬音を発して俺の腰に手を回し抱きつくフラン。


 この子は14歳なのだが、いかんせん発育が遅い。欧米の方立ちと同じく中々発育が早いこの世界の人たちだが、そんな中にこの子は正にロリータと言える体型を維持していた。


 まるで、小学生の姪っ子の様な感じを受ける。


 そんな子がガボットやリリアンと同じ様に打ち解けたらしく、俺に擬音付きでくっついて来たのだった。


「どうした?」

「お兄。良い人。」






 だからくっついたの?



 そこからは料理場へと移動になったのだが、フランが離れたがらず、仕方ないのでおんぶをして移動することになった。


 そうして移動して、離れないフランを説得して、いざ料理となったのだが・・・・・


 先程の惨状と相成ったわけである。


 正直ここまで、料理の『技術』が無いとは予想していなかった。唯一トーニャだけが言うことをきっちり守り怪しい手つきながら料理していた。が、見ていて冷や冷やものであった。


 そこにタイミング良くシオンが様子見としてやって来たので、聞いてみた。


「恐らくこの世界には技能があるので、あまり手順などに拘らなくてもそれなりのものが出来てしまうので・・・・と言うことじゃないでしょうか?」


 なるほどである。

 確かに俺も初めてこの世界で料理をしたときも、途中で味見していたにも関わらず、完成した途端味が急激に良くなっていたことを思い出した。


 納得して、深々とため息を漏らし皆の所へと指導するべく近付いていった。


「中々大変そうだな・・・・こりゃ。」

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